イカダ釣りなんてしないのにもかかわらず竿をビルドしてみたり、バス釣り用のベイトリールをイカダ用に改造してしまう挙動不審な管理人だけど、これには管理人の身近に存在する、酔っぱらいの某チヌ師が影響を及ぼしているのだ。今回のリールチューンもそんな非生産的なお話しだったりする・・・
「Gamちゃん、最近な、『メタロイヤル』のパチもん売ってるねんで」
「それ、『メタロイヤル』ってスピニングじゃなくってチヌリールの話しやんね?」
「えっ、『メタロイヤル』ってスピニングもあるんや?」
「そうやで、『メタロイヤル』って名前はリョービのフラッグシップ、意味的には『ステラ』みたいなもんやねんで」
「へー、知らんかったわ、それ」
「それでやな、その『メタロイヤル』のパチもんってなんぼするのん?」
「1万円せーへんわ、イカダリールとしたら安いと思うで」
「お兄さんは買わへんのん?」
「いや、オレはシマノの『セイハコウ60SP』買ったもん・・・」
「ちゅーか、あれ、最新版やん、・・・ええなぁ、チヌ師、最新鋭リール買えるし・・・」
「何言うてんねん、それ、絶対Gamちゃんに言われたないって」
「ははは、それもそう、この部屋ってリール腐るほどあるもんなぁ」
「ちゅうか、放置プレイで腐ってるのと違うん?」
「それ言うなって、・・・まぁええ、そしたら買いに行こか?」
「何買うねん?」
「何って『メタロイヤル』のパチもん、『劣化メタロイヤル』に決まってるやん」
「マジ?」
「そんなんウチにネタ振ったんお兄さんやねんで、振られたら買うに決まってるやんけ」
「・・・」
・・・・・・
そして次の日、釣具屋さんで・・・
「Gamちゃん、これやわ、『プロマリン』の『テクニスト黒鯛』、マジで『メタロイヤル』そっくりやもんな」
「これか、『劣化メタロイヤル』って・・・、スプール回してみよ・・・」
シュルシュル・・・
「お兄さん、これ、回転悪いんちゃう?」
「やっぱり劣化やなぁ」
「・・・そしたらフルセラ突っ込もか?」
「フルセラって・・・」
「PMA35SLに突っ込んだフルセラミックベアリングな」
「それ、絶対リールより高そう・・・」
「ええねん、ウチがイカダリールに無限の回転性能を提供するんやんけ」
「・・・」
・・・・・・
それでは今回のお題、ウワサの劣化メタロイヤルを見てもらうことにする。
イカダリールって、めっちゃ写しにくいぞ・・・
実のところ管理人は元祖メタロイヤルを見たことがないのでどんなリールなのかは知らない。今は亡きリョービのフラッグシップを冠した名称から想像するに、リョービ渾身の一撃になるはずだったのだろうか?そうじゃなかったらメタロイヤルじゃなくってザウバーでもアプローズでも何でも良かったと管理人は考えている・・・
そして無限の回転性能と言えば当然のことながら完全ドライのフルセラミックベアリング。潤滑油の粘性抵抗すら省いてしまうことにより、既存のベアリングを超える回転性能が得られる・・・
これ、どこかで見たことのある画像・・・
えーっと、この画像はPMA35SL編の使い回し、写真撮るのがめんどくさい、のじゃなくって、
PMA35SLと同じサイズでラッキー!
ファントム系ベイトリールと同じサイズの内径5ミリ、外径9ミリで幅3ミリのベアリングだからPMA35SLと使い回しが可能になる。さすがに高価なフルセラミックベアリングをまとめ買いする様な金銭的余裕はないのは当然のことだよね。
次、技術論になるけど、フルセラミックベアリングはPMA35SL編でベイトリールで使うにあたって留意すべき点を述べており、
値段を考慮しなければ以上の2点が気になるところだ。だが、イカダリールを含めた片軸受けリールの場合はベイトリールとはちょっと事情が異なっており、
このようにフルセラミックベアリングを採用するに当たっての懸案事項を見事にクリアしてくれるぞ。そう、
片軸受けリールはフルセラミックベアリングの性能を存分に発揮できるのだ!!
フツーのボールベアリングのグリスを抜いてみたり、玉だけがセラミックのハイブリッドベアリングに交換してみたり、高級リールオイルを使ってみたりと方法として色々あるのはベイトリールもイカダリールも変わらない。が、技術的には完全ドライで運用できるフルセラミックベアリングに交換するのがスプール回転性能向上目的としては最高のソリューションだろう。そしてイカダリールはフルセラミックベアリングの懸案事項をクリアしてくれるのだから、これにフルセラを突っ込まんと何をどうしろと言うのだ??
それじゃあ、あとは簡単、スプール周辺の余計なグリスを脱脂してからボールベアリングを交換すればいい。脱脂しないとグリスがベアリングに回り込んでしまって意味がなくなるから。
左が表で右が裏から見てるんだよ
ただ、スプールシャフトにはうっすらと給油しておくのがいいんじゃないかと思う。ベアリングは完全ドライで問題ないけどセラミックのベアリング内輪とシャフトにはすきまが存在するから、ここでのスリップが完全ドライ運用だとシャフトの異常摩耗に繋がってくるように思える。一方の外輪とスプールについては接触面積が広いから内輪ほどスリップしないんじゃないかな?なので、今回は給油しないでで組んでいるよ。
そして交換が完了したらスプールを指で弾いて回転させてみよう・・・
おい、全然無限と違うやんけ・・・
何かが接触でもしているのだろうか、そんなに回ってくれないのだ。丸ABUのシャフトレススプールに似た外輪回転構造のスプールで、かつ、レベルワインダーなんて存在しないからフツーに考えればベアリング以外にフリクションなんて存在しないはず。なので、もう一度バラして色々検討してみる。すると・・・
ベアリングカラーの形状に問題あり!!
スプールに組み込まれた2個のベアリングの間にカラーを挟んでいるけど、そのカラーの形状に問題があってスプール回転を阻害しているのだ。具体的には・・・
カラー改造しようとしたら壊してしまってん・・・
ヘタなイラストで申し訳ないが、斜線の部分がカラーで、その両側がベアリング、外側にスプールがあるって解釈してほしい。外輪回転するスプールベアリングに対してカラー内側がシャフトに接触、そしてカラー外周がスプールに接触しており、さらにカラーの端面がベアリング内輪にも接触するような形状なのだ。それだとフリクションを増加させてしまうのは間違いない。なので、このカラーを外周だけ接触するような形状に作り替えてしまえばいい。
言わんでもわかると思うけど右がチタン合金製ベアリングカラーやからな・・・
なんの変哲もないカラーだけど、実はこれ、チタン合金製なのだ。海で使うのだから耐食性を考慮する必要があり、管理人の手持ちの材料で適当なサイズの丸棒だとチタン合金しかなかったのが正直なところだね。そんなに負荷がかかるワケじゃないし、重量も考慮すると樹脂で作るのが正解かな?
そして再度組み立て、もう一度スプールを回してみると・・・
うん、これでOK、無限の回転性能だね!
実際の回転性能はアンタレスARのチヌマチックブレーキみたく動画で公開すれば明確に理解してもらえるのだけど今回はやんない。めんどくさいもん。それより何よりこのベアリングカラー、元祖メタロイヤルのカラー形状を知らないから何とも言いようがないけど、カラーまでわざわざ劣化させることって考えられるだろうか?それじゃぁ元祖も元々こんなの??などといった疑問も頭に浮かぶ。
そしたら「劣化メタロイヤル無限チューン??」を某チヌ師に見せびらかして意見を伺おうではないか・・・
・・・・・・
「Gamちゃん、これか?」
「そうやぞ、『劣化メタロイヤル無限チューン??』な、ちょっとスプール回してみてくれる?」
「そうやな・・・」
シャリシャリシャリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「これ、確かにめっちゃ回ってるけど・・・」
「あかんか?」
「やり過ぎのような気がするぞ・・・」
「・・・そしたらなんや、お兄さんの師匠のリールにこっそりフルセラ突っ込まへんか?『リールのメンテはオレがやります!』とか言うて」
「はは、また悪いこと考えてるし」
「そらそうや、ウチ、悪知恵だけは働くもん」
・・・・・・
回りすぎるくらいの回転性能、ってことだね。それとも、「過ぎたるは尚及ばざるが如し』ってウワサもあるのかな?そしてあとは糸を巻いて実戦投入すればいいのだけど、その前に追加ちょっとでやってみたかったリールチューン?の新ネタがあったので・・・
工業的には「グリース」って表記するけど会話では「グリス」って言ってるから
これはグリスのチューブだよ。要はグリスも入れ替えるのだけど、ただ、これってフツーにリールで使うようなグリスなんかじゃなくってもっともっと特殊なグリスだ。モノ自体は工業用のフッ素グリスで、一部では「ふっ素グリースK」なんて呼称もあるようだ。(これ、管理人が冗談や面白半分で言ってるんじゃなくってちゃんとした世界的な大企業がそんなコメントを残しているのだから管理人には罪がない、ちゅーか、比較広告みたいなものだけど・・・)
みんなに身近な釣り具関連だと、ガンマニアのDRESS(ライラクス)から販売されているVeilってグリスがフッ素グリスだね。Veilって10グラムで2100円もする高級なグリスだけど、フッ素グリスの用途については本来はリールじゃなくって、
読んだだけで過酷な環境で用いられるのを感じてもらえるんじゃないかな。この「ふっ素グリースK」の詳細は別の機会に触れようと思ってる。まぁ、なんしか今回はリールに使うにはハイパフォーマンス過ぎるグリスを採用するけど、実際には自己満足以外に何のメリットもなかったりする・・・
そしたらギヤ周りに「ふっ素グリースK」を塗布するのだ。もちろん異種グリスの混用が禁忌なのは言うまでもない、元のグリスは完全に脱脂洗浄するんやぞ。
本当にセコくしか塗布していない・・・
こんな具合でごく僅かで充分だと思う。多量のグリス塗布は流れ出してしまってベアリングにも回り込んでしまうからそれは避けないとダメだし、そもそも、
こんなクソ高いグリスをドバドバと湯水のように使えるわけないやろ!!!
ってのはもちろんのことだよね。
それじゃぁ完成品、
例によって最初の画像と変わってない・・・
パッと見は完全に無改造だよね。だから元祖メタロイヤルや黒鯛工房のリールを使ってる人が見ると指さしてパチもん扱いされることが充分に期待できるぞ。でも、中身はフルセラミックベアリングと「ふっ素グリースK」で武装された、その手のリールでは望むべくもない無限の回転性能と、そして過酷な環境にも耐え得る驚異の潤滑性能(笑)を保有している・・・
次回は某チヌ師の支援による試験飛行編?それとも、TD変態グリッピングレフトもチヌドラグにしてしまえ??(2011/6/12更新)