今回、「ミリオネアの逆襲!Season3・ゼロという名の悪魔・・・」なんてタイトルで本編を進めるのだが、まず、「ゼロ」とはいったい何か?それを見てもらおう。

PMA35SL
Procaster Magforce AutocastでPMA!

「おまえ、それはミリオネアと違う!」などといったご指摘を頂戴するのは国産オールドベイトリールに詳しいヒトで、「それはファントムやんけ!」と言うのだろうね。でもその認識はちょっと甘い。今回のかわいいあの娘はPMA35SL、ダイワ精工初の左ハンドルベイトPMA33SLのワイドスプールバージョンなのだけど、豪華版右ハンドルのファントムトーナメントEX-20の系統だから「それはファントムやんけ!」との意見は理解できる。だが、PMA33/35シリーズはスプール径が39ミリでこれはミリオネアVに由来するスプールサイズだ。そしてファントムの名を冠したモデルで39ミリ径スプールは初代のファントムSM(SM-10とかSM-15じゃなくってSM-2ね)とトーナメントEX-20のみ、さらにこのサイズの20番や25番のベイトリールはミリオネアマグサーボSS-20ACや25ACとして販売されていたこともあり、管理人はPMA33/35シリーズやPT33シリーズをミリオネアと称するのに躊躇しない、っちゅーか、こじつけでも何でもいいからそう言わんと「ミリオネアの逆襲!」で紹介できんからね。まぁ、輸出仕様みたくこの手のリールを全部ひっくるめてプロキャスターと言ってくれれば何も言い訳せずに済む、ホントにごく最近までは管理人も「PMAをを改造してギャラクティカ・ファントム!」って言ってた・・・

それではPMA35SLがどんなリールなのか、本編ではこんな具合でほとんど触れていなかったから改めて紹介するけど、

管理人は「永遠の左ハンドルベイト使い」だからどちらも制覇しているけど、ネタになるのは日本語取説つき新品未使用のPMA35SLだろうね。

箱付取説付 これも箱付取説付
左の日本語取説や保証書と、右のコンベンショナルなレベルワインドに注目してほしい

次はこのリールの特徴などなど・・・

カーボンベアリングのマグブレーキだから当時のダイワのラインナップからすると廉価版のGSシリーズに相当するのだろうね。特にPMA35SL-Aは、見た目、ミリオネアマグサーボSS-25ACの廉価版左ハンドルに見えて仕方がない。で、やはりこのリールで語るべきは今回のお題にもあるようにゼロフリクションレベルワインドだろう。ABUのウルトラマグシリーズに搭載されたフローティングレベルワインドを超えるダイワの野心作、それが「ゼロという名の悪魔」である。

クローズ状態 オープン状態 ウルトラマグ
説明せんでもわかるやんね?

システム作動状態でラインガイドが宙ぶらりんになったウルトラマグと違い、こちらは完全無欠のフルオープンだ。レベルワインド放出抵抗を極限までに削減する理想の元で作り込まれたこのシステムなのだけど、やはり「開かない」だとか「閉じない」みたいなトラブルが多かったのだろうか、存在しないことになってしまったダイワ精工の黒歴史でもある。ちなみにゼロレベルワインドが搭載されたリールで国内仕様だと、

管理人が知ってるのはこれだけ。もしかすると意外と多かったりするのかな?そして、先に述べたPMA33/35SL-Aだったりファントムゼロの輸出仕様PR10/15Gみたくフツーのレベルワインドにすげ替えられてしまったモデルもあるくらいだ。さしずめ今の時代なら「レベルワインドの整流効果!」なんてコトバを得意げに語るのかも知れないね。でも、相手は悪魔なのだからその認識もちょっと違っており、

太PEの放出抵抗はそんな甘っちょろいのんと違うぞ!!

やっぱこれ、「漢は黙ってカムルチィ!」やわ。フジのローライダーガイド・LCSGもそうだけど、そういった理屈は全て細糸での出来事でしかなく、ライギャーが常用する太PEだとそんな理論はお話にならなかったりする。なんしか整流もクソもない、事実上、古典的なシンクロレベルワインドしか通用しない世界なのだ。そこでシンクロレベルワインドを超えるべく、いや、PE6号クラス最強との誉れ高き初代アンタレスを超えるべく、本気でゼロレベルワインドを復活させようと思った。ミリオネアCV-Z253Lで果たせなかった「打倒アンタレス!」の夢は遙か昔に遡る「ゼロという名の悪魔」が代わって果たすのだ。いや、

そんなん返り討ちに決まってるやんけ!

たぶんそれが正解やと思う。さすがに管理人もそこまでは要求しないぞ・・・

さて、色々能書きたれたけど実作業編、今回はめっちゃ簡単な作業しかやんない。実のところ「ゼロという名の悪魔」はPMA35SLじゃなくってこいつかも知れん・・・

フルセラミックベアリング
SiCじゃなくってジルコニアセラミックだよ

遂に登場、リールチューン最終兵器とも言えるフルセラミックのボールベアリングだ。近頃は玉だけがセラミックのベアリングはZPI"を含めてよく見かけるが、これはそんな生易しいものじゃなくって内輪と外輪もセラミックなのだ。フルセラミックにすることによるメリット、軽いのもそうだけど、

完全無給油運用が可能だ!

管理人的にはこう考えている。いくら低粘度の潤滑油でもその粘性抵抗を完全には排除できず、巷ではチューニングオイルなんて得体の知れない潤滑油が高値で売っているのだが、完全無給油で運用できるフルセラミックベアリングならそんな詳細不明なのは一切必要がない、ワケのわからん能書きにつきあうヒマなんか存在しないのだ。

ところでこのベアリング、真っ白だよね。ZPI"のSiCBBの玉ってガイドリング同様に黒だし。これは材質によるもので、一般的にはジルコニアセラミックと呼ばれており、組成としては二酸化ジルコニウムのベアリングなのだ。セラミックの代表的特性として挙げられるかたさについてはSiC、いわゆる炭化珪素より見劣りするけど、何よりも常温での強度に優れており、これについては、

特性表
例によって京セラの資料だけど・・・

左からビッカースかたさ、曲げ強さ、高温強さの順で、赤で囲ったのがジルコニアで黒が炭化珪素だ。これを見れば一目瞭然で強度についてのジルコニアの優位性が理解できるだろう。あと、ここでは面倒だからピックアップしなかったけど、縦弾性係数は炭化珪素の方が高くて、回転時の微少変形による転がり抵抗、という視点からは炭化珪素の方がいいと思う。ちなみにジルコニアは高温強度に問題があるから、そういった環境では通常だと窒化珪素がベアリング材として採用されるらしくて、炭化珪素ってベアリング材としては少ないみたいなのも付け加えておく。釣り具として見た場合はフジのガイドリングに代表されるとおりだけど。

そんなこんなでベアリング編の補足みたいになってしまったけど、そそくさと作業を進めるのだ。

比較
左がフルセラミック、右が純正のカーボンベアリングだね

ベアリングのサイズは内径5ミリ、外径9ミリの厚みが3ミリで、ダイワならファントムトーナメントSSやPT33シリーズ(ジウジアーロのTDベイトは覚えてない・・・)、シマノだと遠心バンタムやマグキャストなら使えるのだ。そしたら・・・

カーボン フルセラミック
光の加減は無視してくれ、見ての通りで白飛びするねん・・・

まぁ、ベアリング交換だし、そんなに特記する事項もないだろう。そして駆け足で完成品の公開・・・

完成品
ちなみにこれは日本語取説つき新品未使用の1号機じゃなくって中古の2号機だ

見た目はカムルチィ対策としてスネイクバイトハンドルを移植しただけだ。PMAに使える、旧ABU用ストライパーに相当するドラグノブを管理人は知らないからライギャーリールとしてはちょっと寂しい。ただ、やはりこの時代のダイワ製ベイトってハンドルが返りやすいような気がするから、もう少し軽いハンドルの方がいいかもしれないね。そして肝心なスプール回転性能の向上は、まだシーズンじゃないし、「飛ばせ、鉄拳!」もやってないから指でスプールを弾いただけの状態で言うけど、実は・・・

ほんまマジで気ィ狂ったみたいで悪魔の如き回転性能!!!

気ィ狂ってるのはおまえの方やんけ!ってのはお約束だけど、本当にこの時代のリール???みたいな感じで回ってくれるのだ。管理人はベアリング交換だけでここまで激変した経験がなかったのでちょっとしたカルチャーショックでもある。もしかすると「打倒アンタレス!」が可能になるかも?ただ、

回転音はベアリングが逝んでるって思うくらいめっちゃうるさい!

このフルセラミックベアリングだけど、内部すきまがかなり大きくて、クラッチを切った状態でスプールを軸方向じゃなくって前後に動かしても遊びを感じるくらいガタガタなのだ。通常だとこのガタつきは悪い方向、なんか無理矢理回してる、って感じがして精神衛生上あまり気持ちのいいものではない。あと、色々調べてみるとこの手のボールベアリングって許容回転数が通常のステンレス製ボールベアリングよりも低いみたいなのだ。このあたり、購入時点ではデータとして明確な数値がなかったので不明だけど、本当は注油しないとダメとか寿命が短いとかそんなのかも知れないね。なので、

内部すきまと許容回転数には充分留意してね!

とコメントしておこう。でも、そんな理論さえ吹き飛ばすような回転性能は「ゼロという名の悪魔」が降臨した、そう感じずにはいられないのだが・・・

次は「ミリオネアの逆襲!Season4・悪魔のフルキャストサウンドを聞け!」で行こうか?(2011/4/3更新)

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おまけ

その1、フルセラミックベアリングを組んだだけでPMA35SLが気ィ狂った回転性能やったら今のベイトリールに組んだら狂い死にしそう?なんて思うヒトもいるかも知れない。ただ、これも注意してほしいのが内部すきまで、今のベイトリールって昔よりもクリアランスを詰めてるだろうから、下手するとスプールとフレームが干渉するかも知れないぞ。PMAみたいな昔のリールならクリアランスもそうだし性能向上の余地も、ってことだと思う。ちなみに管理人のフルセラミックベアリングはここで注文した。例によって海外直輸入、ってヤツ。でも、内部すきまやら許容回転数、精度等級みたいなスペックが気になるヒトはこっちで注文するのがいいかも。こちらはある程度表示してくれるからね。でも、値段見たら発狂するかも・・・

その2、管理人がたびたびコトバにする「ギャラクティカ計画」とか「ギャラクティカ・ファントム」やら「ギャラクティカ・マグナム」だけど、ファントム系?ベイトリールを題材にしたのが「ギャラクティカ・ファントム」で、

ギャラクティカ・ファントム
PMA35SLにCV-Z253Lスプールだよ

一方の「ギャラクティカ・マグナム」とはバンタムマグナムライトやらブラックマグナム、果ては今のマグナムライトスプールを題材にしているのだ?

ギャラクティカ・マグナム
マグナムライト2001GTプラスに夢屋カルカッタ200スプールだよ

要するに昔のリールを今の軽量化されたスプールに換装するのを「ギャラクティカ計画」って言ってるんだよ。ただ、高い工作精度が要求されるから今の管理人では手が出せない状態、作業が進んでいるのは「旧ABUシャフトレス」かな。この中で「ギャラクティカ・マグナム」の方は大昔からつい最近まで元ネタになるリールの選定に色々と紆余曲折があったのだけど、やっぱ、「ドラグロック機構搭載のマグナムライト2001GTプラスででカムルチィ!」なんてのが管理人らしくていいと思う。妄想のお話しだけど・・・