さて、本当に久しぶりのファイナルダムン本編、管理人の身辺に色々あって放置していたのだけど、これも色々あって冬眠から目覚めることにする。で、記念すべき復帰第一作目のお題は「旧ABUシャフトレス」。5001Cしか存在しない左ハンドルの旧ABUを6000番にワイドコンバージョン、なおかつ現行丸ABUのシャフトレススプールに換装する「ギャラクティカ計画」の一環として改造を始めたのがちょうど4年前になる。ジャンク品の旧ABU5001C BigAをベースに本当に色々と手を加えており、詳しいことはこれを読み返してね、とお願いしても誰もそんなことしないだろうから現時点での改造点、Webにアップしたのやら、してないのをまとめてを紹介すると、

説明するのがめんどくさくなるレベルまで手を加えている。ただ、気がついたかも知れないが、ABUリールの代表的改造とも言えるBBコグホイールやBBクロスギヤ、スプールベアリング等のスプール回転性能向上アイテムは一切取り付けておらず、回転性能的にはほぼ素の'05・6501Cに準ずるだろう。そう、これでもまだ発展途上なのだ。まぁ、手を加えりゃええ、って問題でもないけど。

今の状態
見た目はサーペントバイトとストライパーを組んだ旧ABUにしか思えんけど、中身は全然別物やからね

そしてテスト釣行を繰り返して問題点を洗い出していたのだけど、

  1. ギヤの噛み合いがおかしい
  2. スプールとフレームが接触している
  3. 6001Cシールが剥がれてしまった

現時点では上記の問題で本格運用できない状態でいる。それはそうだろう、シールはともかく何も考えずに思いつくまま適当に組んだだけなのだから。そこで今回は一番問題視している、ギヤの噛み合いを解決すべくさらに手を加えてみる。


組み立て時点では「ABU純正ハイギヤ加工流用だから全然気にならない」なんて評価だったのに、今、何が起きているのか?ってことだけど、これを見てもらいたい。

問題点
画像荒いのは気にすんなって

ピニオンギヤとシャフトのすきまが結構大きく、これはシャフトでピニオンを受けるのではなくストッパー部で受ける、ってことでそのまま組んだのだけど、

昔のシャフト
これ、昔の画像ね

この画像の状態だとちゃんと受けているように見える。が、実際に組んだ状態ではここまでしっかりとピニオンとストッパーがはまっておらず、無負荷状態では特に何も感じなかったのだが、負荷が掛かるとすきまの分だけピニオンが首を振ってしまって噛み合いがおかしくなっていた。これじゃぁ使い物にならないのだ。そして、この問題に対するアプローチは管理人のアタマの中では二通り存在している。まず、

6600Cスプール
'77・6600Cのスプールだね

旧ABU6000番のハイギヤスプールを組めば、

ハイギヤスプール組んだ
すきま、狭いやんね

この様にすきまが狭くなっているのがわかるだろう。ただ、これをやると、

旧ABUシャフトレスと違う!それは旧ABU6501Cやんけ!!

ハイギヤキットじゃなくってハイギヤスプールを組んだ左ハンドルの旧ABUも通常ではあり得ないよね。だからそれはそれで笑えていいのだけど、当初の趣旨からは大幅に逸脱してしまうので今回は却下だ。なので、もう一つの手段を採用することになるのだけど、その手段とは・・・

旧ウルトラマグ
久しぶりのあの娘、フローティング殺しだね

ここは旧ウルトラマグを登場させよう。ウルトラマグXLのフリッピングは4000番やから違うやんけ、なんて言わないでね。今回はこの娘の心臓部、ピニオンギヤとメインギヤを流用するぞ。だからこの娘にはムリを言って現役引退してもらう。実のところ、この娘も変態的改造をしたのだけど、その当時の趣旨は通常の改造とはちょっと違って管理人が自分で使うための改造じゃないから。まぁ、何かあったらもう一台あるし、XLTLHもあるからどちらかのギヤを流用して現役復帰させるってことでいいだろう。旧ウルトラマグよ、以て瞑すべし。その存在は旧ABUシャフトレスに引き続き存在するのだから。(旧ウルトラマグの改造はこっちね

では、早速旧ウルトラマグを分解、ギヤを外そう。

並べてみる
左から旧5001C、6001C、旧ウルトラマグの順だ

ピニオンギヤを比較すると背の高さが全然違うよね。これが当時6001Cギヤを採用した理由で、旧ウルトラマグのピニオンだと長すぎて組めないのだ。でも、正常に動作しないからには意味がないのでこっちにする。で、実際に組んでみると、

旧ウルトラマグのピニオン
すきまに見えるのは面取りだからね

こんな具合でハイギヤスプールを組んだ状態と同様、6001Cギヤに比べてすきまが大幅に改善されているのがわかるだろう。そして肝心な長さの問題は例によってオモチャ旋盤で削ることにする。ギヤって結構微妙な部品だから本来は削りたくはなかったのだけど、これも致し方なし、ってところだろうね。

そして旧ウルトラマグのピニオンにはもう一つ、

ピニオン裏面
これも左が6001Cで右が旧ウルトラマグ

見ての通りでシャフトの穴もそうだけどストッパーの穴も違っており、旧ウルトラマグは径が小さいのだ。これはシャフト側をオモチャ旋盤で削ればいいだけで、そんなに大きい問題じゃないと思う。

次はメインギヤだけど、旧ウルトラマグのメインギヤは6001Cと違って加工する必要はない。でも、これはこれでちょっとだけ・・・

ベークライトワッシャー
これは左が旧ウルトラマグで右は5001Cだ
厚みは旧ウルトラマグが0.5ミリで5001Cは1ミリだ

メインギヤの下に組むベークライトのワッシャーだけど、盛り上がりのない旧ABUのカップだと5001C純正ワッシャーと旧ウルトラマグのメインギヤの組み合わせの場合はクリアランスに余裕がなく、ここは厚みのない旧ウルトラマグ用を使うことになる。ただ、この薄いワッシャーだと、正逆ストッパーを挟んでいる板バネとメインギヤの干渉が起こり得る?ちょっと気になるところではあるのだけど、それを言っても始まらんから無視するわ。

以上、旧ウルトラマグのギヤに組み替える場合の作業は、

作業としてはハイギヤスプールに組み替えた「旧ABU6501C」の方が簡単でいいのだけど、さっきも言ったように「旧ABUシャフトレス」じゃなくなるのと、もう一つ、現時点ではどこかが干渉してるのか、スプールの回転が重いのだ。詳しく検証する気にならなかったけど、この件は気が向いたらね。(ということはやらない、ってこと?)

それでは例によってオモチャ旋盤で加工しよう。

ギヤ加工 シャフト
ギヤの加工は7.9ミリなのを5ミリに、シャフトは5.8ミリを5ミリに削るのだ

基本的にはどちらも黄銅の切削だからチタン合金やステンレスに比べると全然楽なのだけど、注意点はやはりギヤだ。切削加工後には必ずバリが残っており、これをそのまま組むと意味がなくなるから、必ずギヤの山一つ一つに対して面取りをしておく必要がある。一方のシャフトはどうでもいい、寸法さえ間違えなければ。で、完成したら組み立てよう。

組み立て
ピニオン端面がきれいになってるよね

あとは全組み立てして動作チェックだ。もちろんドラグはフルロックでスプールに負荷を掛けた状態での挙動を確認する必要があるのは言うまでもない。前回はこれがいい加減だったからね。

・・・

ドラグフルロックでスプールを押さえつつハンドルを回して動作を確認する管理人、

「噛み合い・・・、うるさくないやん、6001Cと同じレベルやからいけるんちゃう?」

噛み合いもOKだし、懸案だった正逆ストッパーの板バネも問題ないようだ。そしてドラグをちょっと緩めたり、ハンドルを逆転させてみるが・・・

ガキんっ!

「なんやこの音、語尾が『っ』やんけ、音符・・・」

繰り返し確認するが・・・

「ハンドルは止まるからストッパーじゃない、噛み合いはうるさくないからギヤ飛びじゃないし、そしたら・・・」

・・・

どうやら現状だとスプールとピニオンの連結に問題があるようだ。ハンドルを回していると問題ないのだけど、負荷を抜いたりすると何かの拍子に連結が外れることがあるみたい。なので、もう一度分解してみよう・・・

旧ウルトラマグのピニオン 6001Cピニオン
左が旧ウルトラマグで右が6001C

こんな具合で0.5ミリ程度長さが違っている。ギヤ側は6001Cの長さに合わせて削ったから、その下のスプール連結部分の長さが旧ウルトラマグだと0.5ミリ短く、それによって連結が外れることがあるのだろう。まぁ、

そんなもん最初から測っとけばそれで済む!

ごもっともで・・・

それはともかくとして、連結部の対応をしないとダメなのだけど、

浮いてる
ここやねんなぁ

赤丸で囲った部分、これがプッシュボタンを押されると上に上がってスプールとピニオンの連結を解除するのだけど、この部分が曲げられて浮いているのが見えるだろう。これは元々がそうなっており、ここを平らにすれば連結は確保できそう?

バイスでつかむ
とりあえずバイスで挟んで・・・

変わってない
でも、あんまり変わってないし・・・

見た目、バイスだと効果がないのである。それになにやらメッキが剥離したようにも見受けられる。ただ・・・

「クロムメッキと違う?なんで??そしたら手曲げやなぁ・・・」

そして、

バキっ!

「また『っ』やんけ!音符!!」

破断
粉々・・・

「これ、鉄やん・・・」

黄銅のプレス品だと思ったけどこの部品の正体は鋼だ。それも熱処理してるん?って感じで、曲げたらいきなり折れてしまった。そしてメッキは耐食性と摺動性の確保が目的だろうか。なんしか、これじゃぁ作業は中断どころか打ち止めなのである。

そして、慌ててジャンクBOXを漁る管理人が拾い上げたもの、それは・・・

'86・5001C
ウチにはまだまだ手ェあるねんって

ジャンクと化した'86・5001Cの2号機を引っ張り出してきた。見た目はきれいだけど、って言うか、これよりボロっちいのでもヤフオクあたりだと平気で高値で売買されてそう?でも、部品取りにしかならない、かわいそうなあの娘。破断した部品はこの娘から拝借するとして、連結対策は・・・

しゃーない、ピニオン削ろう・・・

今度はピニオンの溝を拡大するのだ。それもギヤ側を削ることによってピニオンは下方向にずれるから連結は確保できそうだ。でも、溝を拡げるのだからピニオンを受ける樹脂とのガタが大きくなり、それはそれで美味しくない。斜めに歯切りされた「はすば歯車」だから、理論的にはギヤが回転すると下方向の力が発生してピニオンはスプール側に押しつけられるけど、負荷が抜けると状況によっては連結が不安定になるだろう。なので、

ピニオン再加工
加工済みピニオンだ
左が6001Cで右が旧ウルトラマグ


ピニオン受け
もう一個ピニオン受けを準備して厚み0.5ミリまで削ってしまう

あとは削ったピニオン受けと元々のピニオン受けを接着してしまえばいい。ただ、このピニオン受けって恐らくポリアセタールだと思うけど、この手の樹脂って接着剤を選ぶ、みたいなところがあって、

PPX
セメンダイン!

2液性のエポキシでもいいのだけど、確実性を求めるのなら専用の接着剤を使おう。今回の選択はセメンダイン、じゃなくって「セメダインPPX」だ。瞬間接着剤の系統だから作業が早いし、一般売りだとその手の樹脂ならこれが最強かな?ちなみにポリアセタールってポリプロピレンやポリエチレンほどは接着性は悪くないけどね。では、作業の続きだ。

ピニオン受け改
下側に接着したけど、わかる?

 

ピニオンとピニオン受け改
ピニオンに組むとこうなる

これだとピニオンと受けにガタもなく、意図した状態で動作するだろう。それでは、再組み立てと動作確認だ。

・・・・・・

「まずはフルロックから・・・、まぁ、これは問題ないわ」

それは当たり前、さっきも問題なかったのだから。

「次は負荷を抜いてやってみよ、うーん・・・」

グルグルとハンドルを回す管理人、逆転させたりドラグを緩めてみたりと色々な状況を想定、そして・・・

「OK、これやと問題ないと思う・・・」

ようやくOKが出たみたいだね。ただ、ピニオンを追加で削ってしまったことによりちょっと気になるのが、

歯幅が0.5ミリ短くなったのはギヤの噛み合いには良くない方向・・・

旧ABU5001Cに比べて高速ギヤになった旧ウルトラマグや6001C、ハイギヤの旧ABUもそうだけど、5001Cの標準ギヤに比べてギヤの山そのものの大きさが小さく、この山の大きさを専門用語では「モジュール」と言うのだけど、モジュールが小さいギヤだと必然的に強度も小さくなる。そこで高速ギヤは歯幅を長くすることにより負荷を分散させて強度を確保しているのだが、その歯幅を短くしてしまったので強度的な問題が想定されるのだ。この0.5ミリの歯幅短縮がどのような影響を及ぼすのか、それはこれからのテスト釣行で明らかになるだろうし、まったく問題がないことも考えられる。ただ、悪い方向に向かってしまった、それだけは断言できる。

さて、一応これでなんとか作業も完了したのだけど、ちょっとだけ追加がある。

6000Cのカップ
クリッカーの時も使った6000C BigAの右カップを準備しよう

サムノブを裏から
5001Cカップと6000Cカップの両方ともサムノブを裏からラジペンでちょっとだけ潰して外そう

サムノブ
外した6000Cのサムノブを今度はラジペンの凹みで修正しよう

貫通ドライバー
プラスの貫通ドライバーを準備しよう

5001Cカップ
5001Cのカップに6000Cのサムノブを組んで裏から貫通ドライバーをあてがい、ハンマーでしばいて抜けなくしよう

こんなの
上手くいけばこんな具合で抜けなくなる

要は6000Cの大型サムノブに組み替えたワケだ。管理人はマイナスドライバーじゃなくって手締めでサムノブを締めているけど、今まで釣り場でサムノブが緩むような状況に陥ったことはない。だけど、大型サムノブだから手締め状態での信頼性も向上するだろうし、もちろんBigAだから見た目の問題、ってのもある。それでは完成品の公開だね。

完成品
内部構造見直しだから・・・

これだと最初の画像とは光線の加減だけ違う?とも言える。交換したサムノブも意識しないとわからないだろうし。まぁ、内部構造見直しだから仕方がない。それよりも寧ろこっちだろう・・・

犠牲者
あぁ、ジャンクが増える・・・

今回の犠牲者、かわいそうなあの娘たち。でも、彼女たちの意志は旧ABUシャフトレスに受け継がれているから、きっと、きっと上手くいくよね!


以上で復活のファイナルダムン本編第一作目、「旧ABUシャフトレス」の内部構造見直し編を終わりにする。でも、なんやかんや言うてもいつもみたいに適当作業なのが進歩がなくって笑えて仕方がないよね。それはともかく本編って結局のところ2年近く放置していたワケだけど、これから先どうなるのか、それは管理人自身も知らん。ただ、今回のタイトルで「遂にヤツが帰ってきた!」なんて見出しを打ってるけど、これ、もちろん管理人のことだから。悪魔の繊細さと天使の大胆さを併せ持つ、変幻自在の管理人が目覚めたからにはもう、どうなってもマジで知らんからな。

次はやっぱりフレームかな?ほんまは赤ベロにしたいねんけど(2011/3/22更新)

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おまけ

現状で組んでいるサーペントバイトハンドルと、スネイクバイトハンドルは'81・5001Cに組んでいたことがあるけど、ウィップラッシュのパワハンって旧ABUに組む場合、 追加工してあげないと具合が悪いのだ。恐らくそのあたりって想定されてないと思う。

ザグリ
チタンでもこの程度ならエンドミルで楽々だよ

ハンドル材の厚みがあるので無加工で組むとナットのかかりが浅く、最悪はナットが吹っ飛んでしまう。なので、旧ABUのハンドルと同じようにザグリを施してあげよう。あと、サーペントバイトはノブがちょっと大きい気がする。管理人的にはもう少し小さいノブがほしいなぁ。