「さて、ほんなら最後やぞ、『リール構造編』や」

「今度は何するのかなっ?」

「何のために今まで色々と見てきた?全ての能書きはリールのため、もっと遠くまでブン投げるためやからな、やから、今までの話しを踏まえて、実際のリールのフレームやらスプール周りを検証する」

「そうなんだっ」

「ウチが保有してるリールがいっぱいあるやんか、各メーカーごとに検証するわ、そしたら、ベイトリールの原点、旧ABUから見ていこう」

「それじゃぁ、リールはもちろんっ!」

「5001C改!、 で、旧ABUってどう考えても高精度ベアリングには向いてないと判断せざるを得んのやわ」

「どうしてなのかなっ?」

「もう一回、『ADR』のベアリングを見てくれるか」

もう一回
もう一度ADRのベアリングに登場願おう

「あの外輪が丸いベアリングだよねっ」

「そう、平らじゃなくて丸みを帯びてるやんか、世間では『樽型』とか言われてるけど、『自動調芯形状』って表現するのが正しいと思う、旧ABUって、組み立て式のフレームがあって、ハンドル側にブレーキプレートがあって、さらにベアリングを受ける左右のカップをネジ止めしてるけど、これだけ部品が多くて、さらにプレス加工とカシメやから今の削り出しのリールよりも精度は期待できん、加工精度の問題と、取り付けのバラツキ、要するに組立精度っていうのがどうしても発生する」

「ふ〜んっ」

「左右のベアリングが一直線上に位置できない、芯がずれるってコトがあり得るワケやねんけど、そこでこの『自動調芯形状』の外輪やけど、これは多少芯がずれて斜めになったとしても、外輪が丸みを帯びてるから、ここで位置が自在に動いて芯のずれを吸収できる構造やねん

真っ直ぐ
わかりやすくするために大きい画像にしてみた

上の画像は左右のカップが真っ直ぐになってると考えてほしい、赤い線がスプールシャフトの中心線、青がベアリング外輪、黄色がカップのベアリングを受ける部分な、で、問題は下やねんけど、わかりやすくするため極端に5度ほど中心線を傾けてみた、こんな状態でもベアリング外輪が球面やから、ここで傾きが吸収されてるやん、通常はここまでずれることはありえんけどな」

ずれてる場合
ここまで傾いたらおかしくなるぞ・・・

「そうだよね〜っ、ちゃんと意味があるんだねっ」

「ありすぎるぐらいにな、芯がずれるっていう前提で『自動調芯形状』の外輪を採用するワケやから、ここに普通の形のベアリングを使うとどうなる?芯のずれを吸収できんからベアリングに負担をかける事も考えられるよね、とくに幅の狭い4000番やと影響は大きいなぁ、直角三角形を考えたらわかると思うけど、同じ高さで、底辺の長さが違う場合は、角度ってどうなるやろ?」

「う〜んっ、底辺が短い方が角度が大きいよねっ」

「その通り、ただ、普通の『深溝玉軸受』の場合でも、若干は軸の倒れ、要するに芯ズレに対応できることになってる、内輪と外輪との間で吸収するワケやけど、その量は『自動調芯形状』に比べると少ない、これとは別で、スプールシャフトの支持剛性という観点からは、もちろん幅の狭い方が有利、だから、一つの事象だけを捉えるのじゃなくてトータルで判断したい、けど、『自動調芯形状』のもつ意味合いはこれでわかるよな?」

「うん、わかったよっ、それでねっ、今のリールは『自動調芯形状』じゃないじゃんっ、オールドABU以外に『自動調芯形状』のベアリングってあったのかなっ?」

「そうやな、ウチの知ってる範囲では、第1世代のミリオネアかな、ABU5000Cの『完全パクリ』という表現がある、ミリVは実際その通りやけど、ウチ的には『リバースエンジニアリング』って言葉の遊びをするんやけどなぁ・・・、ちなみにミリVの『自動調芯形状』ベアリングは『Koyo』やったぞ、で、今のリールが普通のベアリングなのは精度的な面、必要がないっていうのが考えられる」

「でもねっ、『自動調芯形状』にしてもいいんじゃないのっ?精度もそれで逃げることもできるんでしょっ」

「まず、コストの問題があると思うぞ、外輪を球面に加工するワケやからどうしても値段は高くなる、あと考えられるのは、外輪とハウジングの穴との接触面積が少なくなるから、普通のベアリングよりも『面圧』が高くなる、そうするとベアリングに負担が掛かることになるのと違うやろか?」

「『めんあつ』?・・・」

「接触面に対してかかる圧力っていう意味、普通のベアリングは平らやから外輪の全面が穴に接触、要するに面接触してるねんけど、『自動調芯形状』の場合は球面やから極端に言うと線接触って状態になるやん、同じ負荷が掛かった場合に圧力は面積が大きいほど小さくなるやんか」

「うんっ、そうだねっ」

「だから『自動調芯形状』と普通のベアリングを比較すると、値段と負荷という2つの意味で不利になるから、必要がないのなら普通のベアリングでいい、ってのが今の考えのような気がする」

「そうなんだ〜っ」

「旧ABUで特記すべきは『精度編』で述べた『予圧』かな、旧ABUに関しては『自動調芯形状』による過度のアキシアル方向の遊びを規制するのが主目的か?それなりの効果があるとは思ってる、それからな、『精度編』で『はめあい』やら色々考察したやんか、考えてばっかりでも仕方がないからシャフトの寸法を測ってみる、ただ、測定器が『マイクロメーター』って最小0.01mmまでしか測れんからミクロン単位は無理やけど、ウチにできるベストな手段がこれしかないし、穴に至っては0.01mmの精度で測定する物すらないからなぁ・・・」

ハンドル側 コグホイール側
ちょっと寸法が小さくないか?

「どんな感じかなっ?」

「左側、要するにハンドル側が2.97mmで右側が2.97〜98mm、セコく読めば2.975mmってところやわ」

「それじゃぁ、『精度編』で言ってた『すきまばめ』よりもすきまが大きいんじゃないのっ?、確か『h5』って『はめあい』は-4〜0ミクロンだったじゃんっ、これだと-20ミクロン以上あるってことだよねっ」

「ああ、ベアリングメーカーの推奨値に対してかなりのすきまやんか、せやからマジで高精度ベアリングを組んでもしゃあないのかも知れん・・・、じゃぁ、次行こうか」

「次は現行ABUっ?」

「いや、シャフトレスはあとで、次はABUのシャフトスプールのウルトラキャストやな、UC6501Cハイスピードウインチプラスを見ていく」

「分解するとオールドとはかなり違うんだねっ」

「ああ、見た目はあまり変わらんねんけどな、飛距離っていう評価ではPE10号クラスやとウチ的には結構いい、『飛ばせ、鉄拳!フルキャスト編』ではベアリングが『ジャラジャラ』で完全に死んでる状態であの結果やから、マトモな状態ならさらにいい結果が望めるのかな?一応、いい加減なB-Trapの効果もあるのかも知れんわ、で、ベアリングの受け方が旧ABUとは全然違う、ハンドル側はブレーキプレートで、反対側はフレームで受けている、だから取り付けのバラツキという観点からは大幅に改善されてる」

UCスプール UCフレーム
同じシャフトスプールでも旧ABUよりは良さげに感じるが・・・

「そうだよね〜っ」

「メカニカルブレーキもベアリングがあるから、合計ベアリング3コでシャフトを受けている、けど、メカニカルブレーキのベアリングはシャフトとはガタがある、すきまばめ以前の問題、ベアリング内径4mmに対してシャフト径は3.45mmしかないからな」

すきまだらけ
すきまが大きいじゃんっ

「画像で見るとすごいすきまだねっ、でもっ、そんなのでいいのっ?」

「ええんかなぁ・・・、『投げるときはスプール両端のベアリングだけで受ける、魚が掛かった時の荷重でシャフトが弾性変形でたわんだ場合にメカニカルブレーキのベアリングでも荷重を受ける』っていう風に判断したけど、それやと荷重が掛かった場合にはフレームもたわまんとそこまでシャフトが弾性変形しないと思うからギヤの噛み合いもおかしくなる気がする、ここはボールベアリングじゃなくてブッシュでもいいのと違うやろか?」

「う〜んっ、なかなか難しいんだねっ」

「ただ単にベアリングの数を増やしてるだけなんか?そっちの方が高級そうに思えるから?それやとスウェーデン人に『日本人、ベアリング大好き!』とか言ってアホにされてるんやろなぁ、ヤツらは『福祉国家の顔をしたハリネズミのような武装中立国家』やぞ、あと、ピニオンギヤとスプールシャフトの関係やけど、旧ABUと違って段付になってる、クラッチを切ったときにピニオンギヤが移動するけど、その部分は段付き加工で逃がしになっているから、ピニオンとシャフトの接触箇所が少ないから摩擦も少なくなる」

逃がし加工
これ、ピニオン逃がしの段付加工やね

「でも、見てると『予圧』はかけてないみたいだねっ」

「『予圧』をかけてないのはウルトラキャストだけやなぁ、でも、少なくとも旧ABUよりは構造的にも飛距離が稼げる様になってると思うぞ、ただ、遠心ブレーキに水が回りやすい、ABUの場合は左ハンドルやと投げるときには遠心ブレーキが下側に向くけど、旧ABUは水が回ってバックラッシュなんてことはないねん、でもこの娘はなんでやろ?遠心プレーキが4ピンやから、油を差してブレーキブロックは多めで使うのが対策かなぁ」

 
ちょっと微妙やなぁ・・・

「シャフトの寸法はどうなのっ?」

「左側が9.98mmで右側が7.98〜99mmって感じかな、旧ABUよりはすきまは小さいなぁ、ちなみにウルトラキャストはスプールのアルミに直接ベアリングがはまるようになってる、これも独特、普通はステンレスのシャフトが『はめあい』やからな」

「じゃぁ、今のところ、大遠投っていう場合はハイスピードウインチプラスで決まりかなっ?」

「そうやね、『6501C HWP・フルキャストチューン』って感じで検討してみるわ、それで次行こう、次はQuantumやな」

「Quantumって使ってる人いるのかなっ?」

「CABOPTはウチ以外見たことない!、最近はClassicMGなんてのも仕入れたぞ、面白そうやからなぁ・・・、で、構造的には残念やけどフツーのベイトリールやわ、スプールの両端2コとメカニカルブレーキの1コで都合3コのベアリングで受けている、あと、シャフトはピニオンの逃がし加工もされてる、この辺は見た目ほど面白くないけど、精度で言えば、ハンドルと反対のサイドプレートな、これ樹脂製やねんけど、フレームにはめたときにちょっと遊びを感じるから精度的に気になる部分ではある」

スプール Quantumのフレーム
マジで構造的には普通すぎて面白くもない・・・

「それでも、飛距離的にはABUやシマノと変わらなかったよねっ」

「そうなんや、だから、PE10号クラスのベイトリールであの条件ならたいした差はない、精度もへったくれもないのかも知れんわ、せやからウチが気にしすぎてるだけなんやろなぁ・・・、ということは、好みで選んでいいってことになる、あと、メカニカルブレーキのベアリングな、これもウルトラキャストみたいにガタがある、それどころか外輪とフレームのはめあいもガタガタで測る気にもならんわ、Quantumは日本人向けじゃないから『質実剛健のアメちゃんもベアリング大好き!』ってことかな?ちなみにClassicMGは昔のベイトリール、例えばPMA33SLみたいに樹脂で受けているからな」

すきまだらけやんけ
内輪どころか外輪もガタガタやけどええんか!?

「そうなんだ〜っ」

「あとは、寸法測定やな、ミキ、『マイクロメーター』読んでみてくれ」

左 右
上の2つよりはすきまは小さそうだねっ
でもな、バラツキがあるのと違うやろか?

「う〜んっ、これだと、左側が4.99mm、右側が4.98mmでいいのかなっ?」

「おっ、『マイクロメーター』も読めるようになったか、かしこいぞ、ミキ、で、これから推測するに同じ5mmの寸法で0.01mmの誤差があるってコトやから公差の幅はもしかすると大きい気がする、実際はサンプルがいっぱい必要やから断定できんし、マイクロマーター測定やからなぁ・・・、じゃぁ、次行くわ、今度は日本代表その1、シマノで行こう」

「コンクエストの輸出仕様だっけ?」

「いや、その前に飛距離っていうネタでは絶対に欠かせんリールがある」

「え〜っとっ、それってアンタレスのことかなっ?」

「おっ、最近結構理解できるようになってるやんけ、見直したぞ」

「へへへっ、ちょっとは勉強したんだよっ、Gamくんって釣りと軍事の話しか興味がない人だからねっ!」

「ゴメン、そう言うなって、で、アンタレスやけど、ベアリングの数自体は旧ABUと同じで2コ、サイズも同じサイズやな、なんでこの娘がこれだけ飛ばせるのか理解できんわ、最近はデジタルコントロールがあるから目立たんけど、ライギャーリールどころかバスリールとしてもブッ飛ばせる、基本性能がいい、っていうありきたりの答えやろか?ベアリングはメカニカルブレーキ、シマノでいうキャスコンで1個、SVS側にもう1個で受けてる」

SVS側 キャスコン側
正直、キャスコン側は奥まってるから見えん・・・

「・・・」

「シャフトはお決まりのピニオン逃がし加工済みと、あと重要なのがピニオンもベアリングで支持してる、この場合だとクラッチを切った場合でもピニオンの位置はラジアル方向では固定されているからシャフトとピニオンの接触を可能な限り減らすことができる、ピニオンが遊んでたらいくら逃がし加工してもそこまでの効果はないからな、で、ベアリングは必要最小限、かつピニオンとの摩擦はわずか、となれば、ベアリングを受けるサイドプレートやフレームの加工精度と組立精度がよければフリクションは限りなく小さくすることができる、こんな感じでいいか?」

ピニオン受け 逃がし加工
左はピニオン受けのベアリングで、右が段付のスプールシャフト

「いいか?って聞かれてもねっ、ミキじゃわかんないよっ」

「そうやな(笑)、これでいいってことにしておこう、あとは結構長いシャフトで更に逃がし加工の段付きが結構ある、これが旧ABUみたいにピニオンが遊んでいる構造やと負荷をかけた場合にシャフトやギヤにかなり負担が掛かる気がするけど、アンタレスの場合はピニオンをベアリングで受けてるから、負荷をかけてもスプールと繋がったピニオンを介してベアリングで受けることになるから、クラッチを切れば2ベアリング、クラッチを繋いだ場合は3ベアリングと同様の状態になる、これもちょっと補足しておくわ、やっぱりロングセラーだけのことはある、いいリールやと思うぞ」

「値段だけのことはあるっ?」

「そんな感じや、それから寸法測定やけど、SVS側は測定できへん、ここもシャフトが段付きやねん」

ハンドル側 SVS側
アンタレスも意外にすきまがあるんだねっ
うーん、SVSの段付きがめっちゃ気になるけどなぁ・・・

「どうしてなのっ?」

「いや、悪いけどウチもちょっとわからんのや・・・、ちなみにハンドル側はほぼ2.98mmって感じで、シマノでもこれくらいのすきまはあるんやなぁ、そしたら次はお待ちかねのコンクエスト401の輸出仕様、カルカッタTE401やな、飛距離実験ではあまりいい印象がなかったけど、今のコンクエスト401と違ってグリスベアリングやから割り引いて考える必要がある、それで、構造的にはさっきのウルトラキャストやQuantumと変わらん、スプール両端とメカニカルブレーキの3点支持やな、ただ、ギヤ側はボールベアリングじゃなくてテフロンか何かでできた樹脂ベアリングで受けてる」

キャスコン側 SVS側 樹脂ベアリング
初期型なのでA-RBじゃなくてフツーのグリスベアリングなのだ
それでねっ、右のが樹脂ベアリングなんだよっ

「それって、輸出仕様だからかなっ?」

「いや、コンクエスト401がないからわからん、カルカッタ編で情報募集したけどファイナルダムンにそんな情報提供してくれる人はおらんから自分で買って調べろってことやろな、完全に破壊したら考えるわ、で、この樹脂ベアリングはサイズ的にシールドベアリングやと厚みがありすぎるので無理、A-RBみたいな開放型やと互換性がある、でも注油するときにはSVSのリムを外すからレベルワインドのシンクロを調整し直す必要があるからめんどくさい、やから注油しなくて済む樹脂ベアリングなのかなって思う」

「手間かけてもいい人はボールベアリングにしちゃってもいいんだねっ」

「勝手にしていいぞ!あとは、その外すSVSのリムやけど、アンタレスとかコンクエストの51はリムごとネジ込み式やけど、CTE401は位置決めのピンがあってネジ2本で固定する、SVSのリム自体にベアリングとシンクロ用のギアが取り付けられてるけど、残念ながらピンとピン穴にはわずかやけどガタがあるから、組み方によってはフリクションを増やすことになると思う、あと、シャフト寸法測定はこんな感じ、両方とも2.99mmやから、今まで測定した中では1番すきまが少ないぞ」

 SVS側
あ〜っ、CTEはいい感じじゃないのっ?

「あのねっ、ひとつ思いついたんだけど言っていいかなっ?」

「ええけど、何を思いついた?」

「CTE401なんだけどっ、アンタレスみたいにベアリングを2コで受けるようにするのはどうかなっ?」

「あん?樹脂ベアリングを外すってか?」

「そうなんだけどっ、やっぱり負担が掛かるから無理かなっ?無理だよね・・・」

「ちょっと待て、考えてみよう・・・・・・」

「・・・」

「うーん、やってみる価値はありそうやな!」

「えっ、大丈夫なんだっ・・・」

「いや、負担が掛かるのは予想つくわ、カルカッタの100や200でバス釣るんじゃなくて400番でカバーブチ抜きするんやからな、でも、ベアリング2コで受けてるリールもあるんやし、飛距離だけを考えればそっちの方がいいと思う、ただ、樹脂ベアリングとシャフトにはそれなりのすきまがあるから、もしかすると変わらんかも知れん、キャスコン側のシャフトの寸法は2.99mmやからウルトラキャストやQuantumみたいなガタがない、だから可能性はあると思うぞ、それにしてもリスクはあるから試さんと結論出せん、ピニオンはアンタレスみたいにベアリングで受けてない、遊んでるし、本来あるべきモノを外すんやからなぁ」

「ミキのただの思いつきだったのに、実験してみるのっ?」

「ああ、だからウチがやるんじゃない、ミキ、おまえがするんやぞ」

「えっ、ミキが!そんなのできないよっ、壊しちゃうかも知れないじゃんっ!」

「ええねん、実験に失敗は付き物やから、それこそ壊れたら国内仕様を仕入れたらいい、ファイナルダムンのスペースを1ページ空けとくから、『ミキちゃんちゅ〜んっ!ベアリング外しだよっ♪』ってタイトルでアップしよう」

「でもっ、ベアリングなんか交換したこともないよっ」

「ちょっとは『ヒミツ姉ちゃん』を見習えって」

「そんなのミキができるわけないじゃんっ・・・」

「あのな、肝心なコト忘れてないか?他の誰でもない、ウチがついてるやんけ、まぁ、どうにでもするよ、気にせんでもいいって」

「・・・そうだったねっ、Gamくんがいるのなら、何とかなるよねっ」

「そう、それでいい、で、話し戻そう、次はシャフトレス編、ここでようやく現行ABUの登場やね、'05・6501Cと言いたいところやけど、『旧ABUシャフトレス』に改造したからできへん、なので、検証用で別に仕入れた6501Cを見てみよう」

「あのねっ、シャフトレスのABUも『ウルトラキャストデザイン』って言うじゃん、なんか、紛らわしくないっ?」

「そうやな、確かに区別つかんようになる時があるから、一応、ファイナルダムンではUC6501C HWPみたいなシャフトスプールを『ウルトラキャスト』、現行ABUの『ウルトラキャストデザイン』は『シャフトレス』って言うことにしてる、もちろん旧ABUやシャフトレス以前の初期パーミングカップはもちろん別やぞ、で、シャフトレスを検証したんやけど意外な結果になってなぁ・・・」

「そうなんだっ」

「どうせ『しょうもない』とか思ってナメてかかってたんやけど、それがどうして、『加工精度が確保できたら』という前提やけど、今まで挙げたリールとは全く別モノやぞ」

「それってっ、どういうことなのっ?」

「まず、スプールとシャフトが完全に分離構造になってる、それで、シャフトは左右のカップが支持して、スプールに埋め込まれたベアリング2コでシャフトに接してる、今まで検証してきたリールやと加工精度以外にも組立精度というのを必ず考慮してきた、だけど、シャフトレスのABUの場合は組立精度を考慮する必要がない」

「う〜んっ、ちょっとわかんないなっ」

6501Cその1 6501Cその2
これも右はありえんやろ・・・

「上の画像やけど、赤いのがシャフトと考えてほしい、左が左右のカップがずれてない場合で、右は例の如く5度ほど傾けてみた、で、これにスプール組んだのが下やねんけど、どうなるか見てくれ」

6501Cその3
イラストは適当やからね・・・

「あっ・・・」

「わかったか?青がベアリングで黄色がスプールやねんけど、シャフトがスプールと分離してるっていうのが重要で、旧ABUみたいに左右のカップで芯がずれたとしても、シャフトレスの場合はそれはあくまでシャフトがフレームやカップに対して斜めになるだけ、一番肝心なスプールとシャフトの位置関係は変わらんねん、だからシャフトとスプールの加工精度だけを気にすればいい、分解組み立てするってコトだけで考えれば、今のところ一番いい構造やと思うぞ、もちろん両側のカップでの芯ずれが大きすぎる場合はシャフトが弾性変形でたわんだりするし、ヘタするとこういうコトになる」

旧ABUシャフトレス
実はスプールエッジがフレームと接触してたのだった・・・

「どうしたの、これっ?」

「例の『旧ABUシャフトレス』やけど、スプールエッジがフレームに接触してアルミの地肌が見えてる、まず、『スプールの振れ』が一つの要因で、投げた直後に思いっきり音がするけど、中間以降は音がなくなるから、強い遠心力を受けて外側にブレながら回転して当たったんやろね、これは『ラジアル方向のガタ』が原因やわ、クラッチ切ってメカニカルブレーキを締め込んだ状態でスプールにラジアル方向の力を加えるとちょっとガタつくねん、あとはフレームとの相性、場所によってスプールとのすきまが大きかったり小さかったりやから当たりやすい状態やわ、太PE限定やからフレームは削ればいいだけやねんけど、『スプールの振れ』はシャフトとかも全面的に見直す必要がある、要するに加工精度の問題が極端やとこんな感じやねん、ウチにミクロンオーダーで加工できる環境があるのなら、スプールやシャフト、ブッシュは作り直す」

「Gamくんの機械とか、工場長でも無理なのっ?」

「ウチのはオモチャやし、工場長には前に頼んだけど、あのオッさん『ワシはスプールは作らん!』とか言いよったからなぁ、まぁ、工場長のボロ旋盤も無理やと思うし、あのボロで仕事してること自体がウチに言わすと奇跡みたいなもんやねん、やっぱり『旋盤歴50年の神技』って感じや、だから、今のところ『旧ABUシャフトレス』は失敗やな、ははは・・・」

「・・・」

「話し戻すと、あとはベアリングに予圧をかけてることと、ABUのお約束シンクロレベルワインドかな、シンクロはABUの長所でもあり短所でもあるけど、PE10号クラスのリールは条件的には変わらんはず、ただ、スプール側のシンクロのギヤの端とカップのシャフト支持部が接触している、昔のウルトラマグはシンクロのギヤじゃなくてベアリングのフタやねんけど、これもシャフト支持部と接触してる、これはメカニカルブレーキを調整した場合のアキシアル方向の受けやと思う、これをベアリングの内輪で受けるようにすればフリクションは減るけど、スプールギヤの形状も見直しせんといかんし、ベアリングにかかる負荷とメカニカルブレーキの問題もあるから、ちょっと難しいわ」

「・・・」

「ちなみに、スプール側にベアリングがあるから外輪回転になるけど、回転体の重さを考慮すれば外輪回転は内輪回転よりも不利になるのは言うまでもない、これは前から言うてることやんか」

「それじゃぁ、トータルで判断ってことっ?」

「うん、その通りやね、あと、New Recordについてはこっちを見てほしいけど、投げる、ってことに関してはシャフトスプールに該当するやん、そしたら最後にシャフトの寸法測ってみよう」

左側 右側
基本的には1本モノだから寸法は変わらないと思っていい

「ちょっと微妙だけど、3.98mmって感じじゃないのっ?」

「そうやね、3.98mmよりちょっと大きいくらいやわ、これは誤差の範囲にしとこう、そしたら次は日本代表その2、ダイワのスピードシャフト、現行ミリオネアやな、ミリオネアは飛ばんってのが一般的評価でいいのかな?正直言うとCV-Z253Lしか使ったことがないから、ウチ的には現状では評価できない」

「300番で左ハンドルってなかったもんねっ」

「最近ようやく逆輸入したねん、『ミリ逆』で紹介したやん」

「うんっ、TD LUNA 300Lだよねっ」

「そうやねん、意地でも死ぬ前に仕入れたった、これをベースに色々実験してみたいけど、飛距離だけやと初代ミリオネアと変わらんのかな、って気がせんでもない、で、ダイワのスピードシャフトはABUのシャフトレスと違ってシャフトが残ってる、だから、条件的には内輪回転で、サイドプレートとフレームの組立精度を考慮する必要があるけど、今まで組立精度ってさんざん言うてきたけど、現行ABU以外やと仕方がないかなって感じになってきたなぁ、LUNAもわずかやけど遊びは感じるし、現実的に無理やもんなぁ」

LUNAその1
この辺はどうってコトないと思うが・・・
それって、コメントなしってことじゃんっ(笑)

「それじゃぁねっ、それ以外で何か気になることはあるのかなっ?」

「うーん、飛ばなさそうな要因が見あたらんぞ(笑)、スピードシャフトもピニオンとシャフトの摩擦はないからその面ではいいと思う、遠心ブレーキはセントリフレックスってヤツで、スプール回転が低い時には制動力が掛からんらしい、どんなのかなって興味があったんやけど、見たら納得、単純やねんけどよく考えてるわ、動かしてみるで・・・」

セントリその1 セントリその2
左が弱い方で、右が強い方やぞ
白いバネみたいなのと、黒いブレーキブロックの位置関係にに注目してねっ

「えっ、これだけなのっ?ブレーキブロックが3コあって、そのブロックを板みたいな白いプラスチックで押さえてるだけでしょっ、青いリングを動かすとブロックも一緒に動くよね、それでっ、白いプラスチックがバネの役目をしてて、バネの力は支えてるところから遠い方が弱くなるから、そっちに動かすとバネの押さえが効かなくってブロックが突き出ちゃうから、ブレーキは効きが強くなるっ、白いプラスチックを支えてる方側に動かすと、バネの力が強くなるから、あんまりブロックが突き出さないからブレーキの効きが弱くなるっ、どっちにしてもバネの力よりも遠心力で突き出す力が弱いとブレーキは働かない、って感じでどうかなっ?」

「おっ、ミキ、完璧やんけ、知らん間にめっちゃ賢くなったんと違うか?何か怖いぞ・・・」

「も〜っ、Gamくん何言ってんのっ!ミキでもそれくらいはわかるんだよっ!」

「ゴメンゴメン、あんまりにも完璧やったからなぁ・・・、このセントリフレックスは分解したらブレーキブロックの数を変えることができるらしい、それもちょっとやってみようかなって思うわ、あとは気になる箇所はない、ちなみにベアリングはCRBBやけど、シールドに『NMB』って刻印がなぜかある、なので、ダイワのCRBBは『ミネベア』ってのが判明したぞ、これは本邦初と違うやろか?」

ミネベア
ちょっと見にくいけどっ、『NMB』って刻印わかるかなっ?

「謎が解けたって感じかなっ?」

「そう、めっちゃ嬉しい!でも、なんでかなぁ?元ネタなんかバラさんと思ったけど輸出仕様やから油断したんかな?まあ、それだけでもウチ的にはLUNAを仕入れた価値がある、そしたら寸法測定してみよか」

「じゃぁ、ミキが測ってみるねっ、・・・・・・、Gamくん、右側なんだけど、ちょっと測れないよっ」

「なんでや、あ!スプールエッジとクリッカーが邪魔で無理やわ、ウチが強引に測るから写してくれ」

「うんっ」

左側 右側
ミキのヘタクソ、めっちゃ手ブレやんけ!
だって〜っ、フラッシュなしじゃぁ無理に決まってるじゃんっ
・・・

「カメラウーマンがヘタレやからしゃあないけど、左が2.98mmで、右が4.98mm程度やな、もちろん右は強引に測ってるから誤差はいつもより大きいと考えんといかんけど」

「それでねっ、今まで測った数値を比べたんだけどっ、だいたいベアリングよりも-20ミクロンって感じみたいだねっ」

「そうやな、ちょっと表にしてみよう・・・

リール
左側シャフト寸法
右側シャフト寸法
5001C改(6000Cスプール)
2.97mm
2.97mm+
UC6501C HWP
9.98mm
7.98mm+
Quantum CABO PT
4.99mm
4.98mm
アンタレス5
2.98mm
CTE401
2.99mm
2.99mm
6501C
3.98mm+
3.98mm
TD LUNA 300L
2.98mm
(4.98mm)
+表示は0.001mm単位での測定誤差、目盛りの半分くらいの場合を示すぞ
TD LUNA 300Lのカッコはちゃんと測れてないってことだねっ

これから想像するに、『精度編』でやった『はめあい』については『h5』とかじゃなくて『f6』とかそんな感じなんかなぁ?・・・」

「『f6』ってどんな精度なのっ?」

「3mm超6mm以下の軸の場合で-10〜-18ミクロンやわ、そしたらだいたいの辻褄は合うのと違うかな?」

「う〜んっ・・・」

「もちろんこれはウチの憶測に過ぎんし、ミクロン単位での測定はできんのと、サンプルが1個しかないから正確じゃないけど、軸の公差域が『6』やったら穴の公差域は『H7』って感じになると思う、いずれにしても今のウチのリールでシャフトとベアリングのすきまが一番小さいのはCTE401、これだけは断言できるよね」

「そんな感じだねっ」

「やから、高精度ベアリングを組んで効果があるのは、現状やとCTE401、ってのが結論で、構造的には現行ABUが意外にイケそうやったのと、他のリールはあんまりかわらんのかな、ってのが結論になりそうやね」

「それじゃぁ、あとは実験で投げてみて判断、ってことだよねっ」

「そうやね、ほんならこれで終わりにしようか、ホンマはウチの好きなイクシとかにも触れたかったし、穴の寸法測定もしたかったんやけど、今回はやめにするわ、ほな、長かったけどお疲れさん、おおきに」

「うんっ、Gamくんも、ごくろうさまっ♪」

(2006/4/1更新)

一応、予告編にもどるけどっ、本当は閉じてねっ