前回、前々回と慣れない木材加工や塗装で神経をすり減らしていた管理人、ちょっとお疲れ気味ではある。だが、今回は金属フェルール編だ。木材よりも馴染みのある金属材料を扱うのだから、楽な気持ちで作業ができることだろう。ただ、一つ付け加えるけど、旋盤加工がめっちゃ得意、というワケではない。能書きは一人前だけど実作業がヘタッピなのはいつもの通りだからね・・・

2ピース以上の継ぎ竿には絶対に必要なのがこのフェルール。カーボンブランクだとビルドでも特別気にする必要はない。ブランクの時点でちゃんとしたフェルールになってるから。でも、今回はバンブーのブランクだからフェルールを追加する必要があるのは当然。金属の丸棒を旋盤で削って作ってみたり、また、ビルドショップでも金属フェルールが売ってたりする。今回は旋盤で削ることにしたのだけど、巷のバンブーロッドではどんな金属材料がフェルールに使われているのかを調べてみたらこんな感じだ。

ニッケルシルバーは日本では「洋白」もしくは「洋銀」と呼ばれている銅合金で、銅にニッケルと亜鉛が含まれている。現行500円硬貨がそれに近いのかな?見た目、銀に似ているのでバンブーロッドのイメージするクラシカルな感じや高級感を出すにはうってつけの材質みたい。次のブラスは別にいいよね?「黄銅」もしくは「真鍮」のことだからニッケルシルバーよりも一般的、釣り人にも馴染みがある材質だと思う。ちなみにこれは銅と亜鉛の合金だからどっちも銅合金ってことだね。いずれにしてもこの2つが一般的に使われているみたいだ。

では次に金属フェルールに要求される特性を考えてみた。

  1. 強度
  2. 耐食性
  3. 摩擦に強い
  4. 比重
  5. 加工性

こんな具合かなぁ?これらの優先順位は竿の性格によって変化するだろう。低番手フライロッドだったら軽いのがいいに決まってるし、ソルト系の竿ならそれよりも強度が要求されるだろう。ライギョ竿の場合もやはり比重の小ささよりも強度を優先するべきだと思う。もちろん軽ければそれに越したことはないのも当然のお話だったりする。

耐食性に関して。水回りで使うのだから錆びたり腐食してしまうと使えないのも当然だよね。だから、これも耐食性のいい材質を選ぶことになる。

次は摩擦に強いこと。フェルールは着脱を繰り返すのだから摩擦に弱い材質を使うとこれもダメ、すぐにすり減ってしまったり固着して抜けなくなってしまうことが想定される。

最後の加工性だけど、旋盤で削るのだから削りやすい方がいいに決まってる。仕上げや精度も削りやすい材質の方が良さげ、いや、出しやすいように思う。管理人の旋盤はオモチャの卓上旋盤だから特にそう。でも、平気でオモチャ旋盤でチタンを削ったりする人だからどうでもいいかな?付け加えておくけど、チタンってめっちゃ削りにくいんやぞ・・・

これら以外だと、入手性と、あと、縦弾性係数もちょっとは考慮した方がいいのかな?入手性に関してはいくら高性能な材質でも、「なかなか手に入らない」とか「めちゃくちゃ高価」だと少なくとも市販を考慮するのであれば「机上の理論」、スペックバカ、って表現でもいいと思う。

縦弾性係数についてはどうでもいいかも知れないが、弾性変形した方が同じ寸法精度でもフェルールがはまりやすそうだし、加工精度も弾性変形で逃げれそうな気がする。ただそれだけ。

それでは例の如く、金属材料をJIS規格から色々ピックアップしてみる。

  
ステンレス鋼
SUS304
ステンレス鋼
SUS630
黄銅
C2700BD-H
快削黄銅
C3604BD-F
ネーバル黄銅
C4641BD-F
りん青銅
C5191B-H
アルミニウム青銅
C6191BD-F

洋白
C7521B-H

快削洋白
C7941B-H

ベリリウム銅
C1720B-H

超々ジュラルミン
A7075-T6
純チタン
TB340
チタン合金
TAB6400
引張強さ
520以上
1310以上
410以上
335以上
375以上
590以上
685以上
480〜620
480〜620
1210〜1470
540以上
340〜510
895以上
耐力
205以上
1175以上
-
-
-
-
-
-
-
-
470以上
215以上
825以上
伸び
40以上
10以上
-
-
20以上
10以上
15以上
-
-
-
7以上
23以上
10以上
ハワイアンフックの時よりちょっと増やしたぞ
単位は引っ張り強さと耐力がN/mm2、伸びが%なのは前と同じだ
銅合金は補足が多く、Bは棒の素材、Dは引き抜き、Fは製造のままでHは加工硬化材って意味
SUS630とC1720、A7075は時効硬化後の値だね

色々能書きをたれたり、つまらんデータをアップしてるけど、要求特性に戻って考えてみる。軽くて強くて錆びない金属、であれば真っ先に思い浮かぶのはもちろん高張力チタン合金だね。実際にチタンのフェルール、ってのも存在する。じゃぁ、今回はTAB6400、ファイナルダムン初の64チタンを投入するのか?いや、実はチタンは3番目の摩擦に弱かったりする。なので残念ながら今回は却下、またの機会だね。人のマネしてもつまらんし。この摩擦、という意味ではステンレスやアルミもあまりよろしくなく、この点では銅合金がいい。ボールベアリングの代わりのブッシュやブロンズベアリングは銅合金だもん。(ステンが摩擦によくないのはオーステナイト系でのお話し、ベアリング用のマルテンサイト系 はまた違うから)でも、純銅の比重は8.9でチタンの倍、合金で若干軽くなったとしてもまだまだ重い。なので、この1から5までの全ての条件を満たす材質、ってのは非常に難しい。とりあえず、それぞれの材質に1〜5の条件を当てはめてみると・・・

 
   
ステンレス鋼
SUS304
ステンレス鋼
SUS630
黄銅
C2700BD-H
快削黄銅
C3604BD-F
ネーバル黄銅
C4641BD-F
りん青銅
C5191B-H
アルミニウム青銅
C6191BD-F

洋白
C7521B-H

快削洋白
C7941B-H

ベリリウム銅
C1720B-H

超々ジュラルミン
A7075-T6
純チタン
TB340
チタン合金
TAB6400
強度
×
×
×
○+
耐食性
×
摩擦
×
×
×
×
×
比重
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
加工性
×
×
×
×
64チタンのみ強度で○+評価がついてるけど、JIS規格では熱処理してないから1000N/mm2は越えないので二重丸は付けれないけど、アルミニウム青銅と同じランクじゃないよね・・・

評価は適当な管理人がこれまた適当に付けただけだから、これが世間の正しい評価、なんて思わないでね。取り扱ったことのない金属材料も存在するから。SUS630とか。それはいいとして、×評価の項目がない材質が存在しないのである。であれば、何かの条件を無視、消去法にて決定することになるのだが、×評価が一つだけなのは全て銅合金、昔から黄銅や洋白がフェルールに用いられてきたのはダテじゃない、ってコトかも知れない。昔の人もちゃんと考えてるんだね(笑)。じゃぁ、次に△評価の少ない材質、ってなるとアルミニウム青銅と快削洋白、ベリリウム銅がそれぞれ△評価一つだ。やはり、洋白でフェルールを削るのは正解だった、と再認識する管理人。でも、肝心の強度が△やんけ、うーん・・・

能書きばっかりで頭がウニになってきたので今回はこれまで、次回、「旋盤加工作業編」を待て!だわ、こりゃ・・・(2008/1/11更新)

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おまけ

その1、チタンフェルールのサイトで紹介文を読んでみようとしたのだが、TOEIC300点レベルでは解読不能(笑)。ただ、ELIグレードのチタンを採用しているらしいのは判読できた。このELIの意味、JIS規格によると、「Extra Low Interstitial Elements(酸素、窒素、水素及び鉄の含有量を特別に低く抑えている。)の略」で、極低温でも脆くならないように不純物をできるだけ少なくしているのだが、なんでそんなのを採用するのかは管理人は知らん。他人事だから。別にELIじゃなくてもフツーの64チタンでええんちゃうのん、常温で使うんやぞ。誰でもいいから教えてくれー!

その2、フェルール材質の候補に最後まで残ったアルミニウム青銅、これはダイワ精工の一部のリールのギヤにも使用されているぞ。ダイワ精工曰く「C6191(高強度特殊合金)」とのことだが、確かに特殊な銅合金やけど・・・

その3、表では黄銅と洋白に「快削」ってオプションのついた材質もピックアップしている。この快削材、読んで字の通り削りやすい、ってコトだ。若干の機械的性質の低下を忍んで加工性を重視した材質だね。でも、なんでそんなコトするの?いや、純銅を削ってみたらわかるねんぞ、というのは冗談だが、大量生産時のコストや手間、仕上げ精度等で標準の材質よりも優位性がある。管理人みたく個人のお遊びなんかじゃないから。これ以外にも「快削ステンレス鋼」、「快削りん青銅」さらには「快削ベリリウム銅」や「快削チタン合金」なんてのも存在するぞ。