カエルとPEラインを接続するハワイアンフック、管理人はいつも「定番アイテム」と呼称しているのだが、実のところ、いまいち信頼性に欠ける、と思っている。使ってるうちに変形しちゃう、ってコトだね。中にはハワイアンフックを使わずにPE直結、なんて人もいると思う。PE6号ならともかく、10号が切れるシチュエーションって木に引っかかった場合くらいしか思い浮かばないからそれも正解。手間がかかると思われるカエルの交換についても、ダブルラインを利用した「チチワ結び」にしてしまえば全然楽だろう。ただ、結束しない、ってのがどうしても気になってしまって、従来通りハワイアンフックを継続使用しているのが現状だ。一時期はヘビーソルト用のクロスロックスイベルからスナップだけを外して使っていたこともある。直線強度では全く問題がないのだが、フッキング時に思いっきり変形してしまったことがあったので、クロスロックはヤメにしたのである。

クロスロック
下が変形したクロスロック、4年くらい前の話し?
GT用のハズやねんけどなぁ・・・

フッキングする際にカエルのアイ位置がズレてしまったのだと思う。これでは「完全なフッキング」なんてできるワケもなくスッポ抜け、カエルもその辺に浮いていたから大事には至らなかったのだけど、これじゃぁ話しにならない。何かいい手はないかなぁ?なんて思い続けていたが、やはり、いつも通りの結論に至ったのであった・・・

ないのなら作ってしまえ!

まぁ、言うのは簡単だけど・・・

そんなワケで自作ハワイアンフック、材質選びから始めたのだが、これが結構やっかいなのである。

  1. 引張強さ
  2. 加工性
  3. 耐食性
  4. 衝撃強さ

耐食性はともかくとして、それ以外の項目は互いに足を引っ張る傾向にあり、とくに1.と2.が両立できないのだ。ヨーヅリやヤマシタのハワイアンフックは「機械曲げ」だと思う。でも、管理人は一般家庭レベルだからもちろん「手曲げ」だ。だけど、手作業で簡単に曲げることができるのなら、使っていたらこれも簡単に変形してしまうだろうし、強度のある材質だと加工が難しい、任意の形状に曲げるのが困難なのだ。強度が低いと自作する意味がないし、市販品で充分なのは当然、何かいい材質はないかなぁ・・・

それでは、色々な材質のJIS規格による機械的性質をピックアップしてみる。

  
ステンレス鋼
SUS304
ステンレス鋼
SUS631
クロムモリブデン鋼
SCM435
黄銅
C2700
高力黄銅
C6782
ばね用りん青銅
C5120H
アルミニウム青銅
C6191
ばね用洋白
C7701H
超々ジュラルミン
A7075
純チタン
TP340
チタン合金
TP6400
引張強さ
520以上
1230以上
(95以上)
295以上
490以上
590〜705
685以上
630〜735
540以上
340〜510
895以上
耐力
205以上
1030以上
(80以上)
-
-
(390以上)
-
(480以上)
470以上
215以上
825以上
伸び
40以上
-
(15以上)
30以上
15以上
20以上
15以上
4以上
7以上
23以上
10以上
単位は引っ張り強さと耐力がN/mm2、伸びが%
SUS631は熱処理後の数値、SCM435は現行規格ではなく旧規格のSCM3での熱処理後の数値で単位はkgf/mm2
ばね用りん青銅とばね用洋白の耐力は0.2%耐力ではなくばね限界値だ

まぁ、これ以外にも色々とあるのだが、傾向的に強度の高い材質は伸びが少ない。そうなると、曲げ加工する際に折れてしまう事が想定されるだろう。ただ、SUS631についてはちょっと事情が違っており、表では熱処理後の数値を挙げているが、その前段階、固溶化処理後の数値は引張強さ1030N/mm2以下とこれも強力だが、0.2%耐力は390N/mm2以下、伸びが20%以上あり、曲げ加工は可能なことが想像される。この手の析出硬化系ステンレスの耐食性はあまり良くないらしいが、超々ジュラルミンよりはるかにマシ、一応はステンレスだもん、それなりに期待できるだろう。ただ、SUS631を採用するに当たっての問題点、それは・・・

熱処理なんかどないするねん!!

考えてみなくてもわかるぞ。曲げ加工後に熱処理すればいい、って感じだけど、熱処理工場じゃないんだから。ちなみにSUS631の熱処理条件はというと、

工場長の得意先の熱処理工場にお願いすればいいのだけど、今回はパス、SUS631が簡単に入手できるのか全然知らないし。

結局、今回は上の表にはない、別の材質を選択している。

  
引張強さ
伸び
ばね用ベリリウム銅
C1720P-1/4H
510〜620
10以上
こんなん使っていいんか?・・・

ばね用ベリリウム銅、通称ベリ銅なんてのを採用してみた。銅合金の耐食性はいい。少なくとも超々ジュラの比じゃない。でも、そんなに強くないやんけ?他の銅合金の方が強いやん??と思われること請け合いだろう。だけど、こんなデータも存在するぞ・・・

  
引張強さ
ばね限界値
伸び
ばね用ベリリウム銅
C1720P-1/4H
1180以上
835以上
2以上
さっきとは、えらい違いやなぁ・・・

先の表からは大幅にパワーアップ、チタン合金すら凌駕してしまう強度を誇るのだ。単純計算だと1mm四方の角の棒を引っ張ったら100kg以上の荷重にも耐えれる、ってコトだ。これならカムルチィどころかGTでも大丈夫かも知れない?でも、なんでそんなに違うのかというと・・・

ベリリウム銅も熱処理が必要です!

現状では、手曲げでの加工性と高い強度を兼ね備えた材質が思い浮かばない。なので、今回は熱処理による機械的性質の変化を利用して、加工性と強度を確保することにした。ちなみにベリリウム銅の熱処理条件は単純で、

これだけでいい。熱処理温度も鋼みたいに1000℃とかクソ高い温度じゃないのもいい感じ。これだと安い電気炉を仕入れてきたらどうにかなるだろうし。そんなワケで・・・

電気炉
ここまで来たら人生破滅やなぁ(笑)

ライギョを釣るのに電気炉がいるんか!いや、ええねん。しつこいけど管理人は変態ライギャー、ライギョマンじゃないから・・・

では、前振りが長すぎたけど、「ベリリウム銅製自作ハワイアンフック」の実作業編、行ってみよう!

まず、1.2mm厚のベリリウム銅板を金切りバサミで切る。幅はだいたい1.2mmを目標にしているのだが、何せ手作業だ。かなりいい加減だと思う。ちなみにハサミは強力なのじゃないとムリだ。たとえ熱処理前とは言えベリ銅、そんなヤワじゃないから。

切る
ハサミで切る、って時点で既に怪しい・・・

金切りバサミで切るとカールしちゃってるよね。だから、このカールしたのを真っ直ぐに伸ばしてから曲げ加工してあげよう。

曲げその1
だいたい、ヨーヅリフックの形状を参考に・・・

フツーに曲げるだけだと、すき間が拡がってしまってるので、バイスで挟んで修正してあげよう。

曲げその2
ラジペンで捻ってやるとある程度の修正が可能だ

これで曲げ加工は完了。めっちゃ単純にアップしてるけど、実際はもっともっと苦労してる・・・

曲げ完成
どうにかなりそうだね!

一応、ヨーヅリのハワイアンと比較してみると・・・

比較
これは3号だけど、だいたい似たような寸法だね
もちろん手曲げだから数作ると大きさがバラつくのは言うまでもない

曲げが済んだら切りっぱなしのカドを丸くしてあげないと糸が切れるだろう。なので、研磨してあげよう。

アール
リューターで磨こう

で、あとは指定の温度、315℃で2時間放置プレイしてあげれば完成だ。

熱処理前
とりあえず10コほど作ってみた

315℃
これで2時間放置だね

熱処理後
で、すき間の修正がヘタレだとこうなる・・・

熱処理後の色は黒く変化している。これは空気中の酸素と化合した結果なのだが、本来であればアルゴンガスや窒素ガス等の雰囲気中で熱処理するのがいいし、町の熱処理屋さんはそういう電気炉を保有している。だけど、そんな設備投資はさすがに不可能、この色の方が落ち着いていい、ってコトにしておこう。ただ、換気は絶対に怠らないこと。ベリリウムは有毒だから肺を侵されて死んでも知らない。ベリリウム銅自体は問題ないんだけどね・・・

さて、これで「ベリリウム銅製自作ハワイアンフック」が完成したのだが、実際にどれだけの強さがあるか実験してみよう。測定器は「背筋力計改」を使用する。これはPEラインの強度測定用でジャンクの背筋力計を仕入れてたのだが、ようやくヤル気になって作成したアイテムだ。

背筋力計改
早く太PEの強度試験をしようね!

これに色々な金具を組み合わせてハワイアンフックを接続してあげればいい。

接続
まずはヨーヅリ4号
ソルト用のスプリットリングやアシストフック用の溶接リングを組み合わせてみる

では、試しにヨーヅリのハワイアンフック4号から・・・

「うりゃ!」

・・・・・・

「うーん・・・」

「あれ、曲がったぞ?そのまま引っ張ろ・・・」

・・・・・・

バキッ!

「何キロや?・・・25キロ?えらい弱いなぁ・・・」

25キロ?
これは間違えてたりする・・・

「今度は曲がった時点で一回やめよう」

・・・・・・

「あれ?曲がってきた時点で33キロあるやんか?なんでや??」

33キロ

・・・・・・

バキッ!

「じゃぁ、次はベリ銅、やってみよか」

・・・・・・

「全然曲がらんなぁ・・・」

・・・・・・

「おい、60キロ超えても曲がらんぞ、さすがベリ銅!」

64キロ

・・・・・・

バキッ!

「うーん、伸びがないから限界超えた時点で破断したみたいやわ・・・」

「せやけど、これやったら破断時点の強度測定できへんやん・・・」

要するに破壊時の衝撃で針が戻ってしまっていたのだ。これがデジタルの背筋力計なら問題ないのだけど、アナログのジャンクやから仕方がない。誰かに針を読んでもらってたらいいのだろうけど、肝心な時にいないから・・・。しゃあない、デジカメの動画撮影機能を使って破断直前のコマを採用しよう。

じゃぁ、ヨーヅリ4号から・・・

ヨーヅリ4号
33キロって感じだね

次はベリ銅。ヨーヅリは機械曲げだからそんなにバラツキはないと思う。でも、ウチは手曲げやから結構バラツキがあったりする・・・

ベリ銅その1 ベリ銅その2
左は54キロ、左が70キロだ

破壊強度はヨーヅリ4号をはるかに上回ると断言できる。けど、手曲げ故のバラツキが大きすぎるのだ。ついでに破壊した状態での比較はこんなの・・・

破壊・・・
ヨーヅリは曲がってるけど、ベリ銅は折れている・・・

それじゃぁ、いつもの気付点、

まぁ、こんな感じかなぁ。それじゃぁ、次回は「ベリリウム銅製自作ハワイアンフック・改」ってコトで再検討だね。(2007/12/3更新)

ちょっと方向転換、「超合金エックス」編!(2008/2/6追加)

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おまけ

ベリ銅じゃなくってクロスロックでもやってみた。そしたらこんな感じ・・・


おい、78キロもあるやんけ!

ベリ銅を上回る測定結果なのだが、実はこんなのだったりする・・・

・・・
クロスロックが破壊したんじゃない・・・

クロスロックじゃなくて、ソルト用の強力スプリットリングが伸びてしまいました。クロスロックはカタチがめちゃくちゃになってるけど、また耐えてくれてます。クロスロックにズレ防止対策を施したほうがいい?フツーの人ならそっちをお勧めするぞ。ウチは意地でもベリ銅使うけど。だって、ベリ銅ってめっちゃ高かったんだもん、電気炉もそうやし・・・