天使の誘惑・BG7001HS改造編

ソルティガZの改造はもう一息、遠心ブレーキさえどうにかすればOKなことが判明した。それはそれでいいのだが、キャスティング用じゃないリールなので使っていると色々と不満な点が出てきたのも確か。なので、もう一つの計画である、ABU・BG7001HSを見直すことにする。

見直す前にちょっと述べておきたいことがある。 ベイトリールの改造で重要な回転抵抗の減少に大きく関わってくる、摩擦という現象についてだ。

摩擦力F=摩擦係数μ×重量W

厳密に言えば摩擦には「すべり摩擦」と「ころがり摩擦」の2種類あるのだが、細かいことはどうでもいいだろう。回転抵抗を低減したいのなら、上の式にあるように摩擦係数を小さくするか、重量を軽くすればいいことになる。摩擦という現象は、実のところある程度の圧力までは接触している面積には左右されないというのもある。ボールベアリングの変更は摩擦係数を小さくすることだし、ソルティガZみたくスプールを軽くするのは重量軽減そのものだ。運動している物体にはすべからくこの原理が適用されていることを頭に入れておこう。

あと、スプールのような回転体については、回転モーメントというのも考慮したい。回転軸から離れるほどモーメントは大きくなり、慣性重量でも不利になる。身近な例だと、シャフトレスにしたスプールと、スプール外周に穴をあけて軽量化したスプールが同じ重量なのであれば穴あけスプールの方が回転モーメントは小さくなるのだ。この回転モーメントといった意味では、シマノの古くさいはずのシャフトスプールはある意味正しいのかな?と思ったりもする。まぁ、トータルバランスが最も重要なのは当然のことなのだが・・・

眠たくなる技術論はこれくらいにする。早速改造だ、といってもソルティガのように狂ったようなことはしていないので、能書きばかりなのだが。

アンバサダーの回転系の改造というと、ボールベアリングの変更、クロスギヤやコグホイールをBB化するのが定番なのだが、これって全部6000番クラスまでの話で、残念ながら7000番になるとパーツ自体が存在しなくなる。

今のところ唯一の部品がボールベアリングだ。ボールベアリングって規格なのでメートル系とインチ系では違うが、同じメートル系であればABUでもQuantumでもダイワだろうが何でもOKだ。

7001HSのノーマルベアリング
ゴムシールやぞ、これって

ボールベアリング自体の寸法は内径3mmの外径10mmで厚みは4mmだ。オールドABU用のボールベアリングと同じサイズなので、5001C改で採用したハネクラの開放型ベアリングがそのまま使えるよ。ノーマルのボールベアリングで一つだけ気になるのだが、リールでは珍しくゴムシールのベアリングを採用しているのだ。ゴムシールには非接触形シールと接触形シールの2種類があって、非接触形シールはいつもの金属シールドと同じなのだが、接触形シールというのはシールとベアリング内輪が接触しているので防塵効果には優れているが、その分回転性能は落ちる。これがどっちなのかは小さいのでちょっと判断できなかった。規格表によると、このサイズには接触形シールは存在しないことになっているが、ゴムシール自体も存在しないはずなので、もしかしたら接触形の疑いもある。いずれにしても胡散臭いので交換しよう。

交換するボールベアリングは、今回はこんなのを採用してみた。

ZPI・SiCボールベアリング
あのA-RBを上回る、アホみたいに高額なベアリングだ

バス用リールでは既に定番なのかも知れないが、ZPI"のSiCボールベアリングだ。メーカーの謳っている能書きについてはZPI"のサイトで確認してもらいたい、というか、管理人は今回初めて訪れた。今まで必要がなかったからね。だから、皆さんの方が詳しいのではないだろうか?

これをノーマルと交換するだけなのだが、何も考えナシに、ただメーカーさんの謳っていることを盲信しての「SiCBB萌え〜」ではないことは明確にしておきたい。いや、謳っている意味が通用しないと思うぞ、これだからね。

SiC−BBとは? ZPI”が世界で初めて量産化した「リール用小型SiCボールベアリング」です。
では、なぜ、SiCだったのか?
SiC(焼結炭化ケイ素)には耐酸化性、耐熱性、耐久性、耐温度性、耐磨耗性、低温膨張で、急熱急冷に強く、高温時の強度も抜群という特徴があるからです。これらのSiCの特性がベアリングの回転時の抵抗を極力抑えて飛距離を伸ばします。
また、オープンBB仕様になっておりますのでメンテナンスも楽々!
F−0パーツクリーナーでクリーニングして、F−0を注油することによって、ベアリングチューンだけにもかかわらず、圧倒的な飛距離を生み出します。

黄色がZPI"のコピペなのだが、色々とシリコンカーバイドの特性について謳っている。でも、肝心な軽さについての表記がないやんけ!あと、摩擦係数の低さを強調させるような研磨精度とかもね。いや、研磨も怪しいのかも知れないぞ。これなら富士工業の方がよっぽど親切だろう。だから、ZPI"の謳っている内容とは全く関係のない理由で選択しているのだ。恐るべきというかアホというべきか・・・

ちょっと補足しておく。SiCの特性についてはアルコナイトガイド編で述べたが、比重は鉄の半分以下だ。では、なぜベアリングのボールが軽い必要があるのか?ボールは遠心力を受けて高速回転しているので、軽ければそれだけ遠心力の影響を減少させることができるからなのだ。ボール1個は僅かな重量なのだが、それが1万回転か2万回転かで回っているのかは知らないが、とにかく遠心力を考慮すれば単純な重量比率以上に摩擦力を増やすことになるだろうからね。

本来、摩擦には材質のかたさは影響しない。表面が平滑であれば摩擦係数μは低くなる。ただ、いつまでも平滑にしたいのであればかたさは重要になってくる。ヤワな材質だとすぐに摩耗してしまい、摩擦係数は増加する一方だろう。

あとの特性はどうだろうか?

耐摩耗性くらいかな、マトモなのは。これだけ関係ないことを謳っているようでは処置がないとしか言いようがない。(ボールベアリングについてはNTNの「転がり軸受入門ハンドブック」というPDFにリンクしておくので興味があればご覧いただきたい。ただ、2MB以上あるから気をつけてね!)

ボールベアリングの技術論でメチャクチャ引っ張ってしまった(笑)
文句はいいからさっさと組め、ってABUなので本当に秒殺だ。これがアンタレスだと気が狂ってしまうだろう。

SiCBB取り付け完了!
マジで秒殺、1分あればお釣りがくるだろう

交換後、手回しでスプールを回転させてみたのだが、ソルティガZのスプールを軽量化した時のように体感的に変わったとはちょっと・・・

あとはウルトラダイニーマの10号を巻いて試し投げか実釣のどちらかで試してみるだけだ。純正ベアリングは予備として、もちろん持って行こうね。

元々レベルワインドと遠心ブレーキ付きのリールなので、ソルティガZのような不安定さは回避できると思う。ソルティガZと「神雷2号蛇頭殺」との組み合わせって使う人をメチャクチャ選ぶから。なので、管理人らしいのはやはりソルティガZの方だろう。だから、悪魔じゃなくて天使なのだ。(2006/7/17更新)

ソルティガZを先にやっちゃったので・・・

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