「リバースエンジニアリング」ってコトバを知っているだろうか? 機械関連だと競合企業の製品を入手して分解、部品一つ一つの寸法を採寸して図面を作成するのだけど、これ自体は悪いことなんかじゃない。技術は日進月歩の世界だし、常に競合企業の動向を調査するのも企業努力だから当然の行為だと思う。でも、リバースエンジニアリングした競合商品にちょっと手を加えて自社商品として販売するのは、21世紀のこの時代だと恐らく企業モラルを問われるのではないだろうか。それが大企業であればあるほど問題視されるのは言うまでもないだろう。ただ、現在の視点で過去の事案を判断・評価するのはちょっと待った方がいい。時代背景、ってのがあるから。
いつも茶化してばかりなのに今回は冒頭から珍しく真面目なコメントだけど、なんでやねん??
管理人はパクリとかオリジナル、って言うのがのがあまり好きじゃない・・・
言い出したらキリがないけど、この世で完全オリジナル、ってなかなか難しいぞ。「世界初!」とか言うのが大好きな管理人がそう言うんだから間違いない。まぁ、管理人は個人だからこんな発言ができたりするんだし、実際に「パクリは最大のリスペクト」だと思っているから、パクれるのなら無制限にパクってほしいくらいだ。でも、企業の場合は「リスペクト」なんてコトバで解決できるわけもないけど、
パクられるのがイヤやったら特許で保護してもらえ!
これが健全な企業努力だと思うけど・・・
釣り具に限った話しじゃないけど、インターネットで見かけるパクリ論争についてはこんな具合で見ている。まぁ、オリジナルを生み出す努力、ってのは本当にリスペクトしないといけないのは確かだね。そして、今回のお題はABU5000Cのリバースエンジニアリングによってこの世に生み出された、ダイワ精工が誇る?初代ミリオネア、ミリオネアVについて改めて確認しよう。
えーっと、まず、今回の経緯をちょっと説明するね。
石垣島に滞在中の管理人、iBook持ち込みで「実況中継、石垣ファイナルダムン?」なんて感じで現地で遠征報告の更新作業をしていた・・・
「さーて、更新も終わったし、『ファイナルダムン掲示板』でも見てみよか、質問のあった『CURADO301DSV』の件、レス付けてるし」
・・・・・・
「うーん、『CURADO301DSV』の件は・・・、直輸入、いい感じやね!」
「あっ、もう一件書き込みあるやん?」
はじめまして。ミリオネアVについて調べていたところ、ココに行き着きました。Vと5000Cは互換性があるみたいですが、スプールは流用できるのでしょうか?
「ミリVの旧ABUスプール流用か・・・、6000Cでやったことあるけどなぁ」
そしたらこんな感じで・・・
ABU5000C系スプールを組んだことはないですが、6000Cフレームと6000Cスプールの組み合わせでミリオネアVI仕様にできましたから、ABU5000C系スプール流用は可能、と見ています。
「でも、5000番はやったことないから断言できへんもんなぁ・・・」
フォロー入れとくか・・・
現在石垣島遠征中ですので、帰って5001Cスプールで試してからの正式回答、ということでそれまでお待ち頂けないでしょうか?
・・・・・・
まぁ、こんな感じで掲示板のリクエストにお答えするの第何弾?ちょっと記憶になくなってきたけど、久しぶりの「ミリオネアの逆襲!」、「ミリVって旧ABUスプール流用できるのん??」ってことでお送りしよう。
今回の依頼主、teppyさんからのリクエストは、
こんな感じだ。メインになるのはもちろんスプールの方だね。あと、「ミリVで知ってること」ってお話しもあるけど管理人は詳しくないので、ちょっとごめんなさいをしている。誰か管理人の代わりにお答え頂けないだろうか?
今回のお題だよ
ところで管理人は言わずと知れたのかどうかはさておき「永遠の左ハンドルベイト使い」を自認しており、旧ABUの5000Cは所持していない。その代わりと言っていいのか?5001CならBigAから旧ABU最後の81年モデルまで色々取りそろえており、今回は5001Cスプールでの検証になる。まず、5000Cと5001Cのスプール互換性についてだけど、例によってピュアフィッシングのサイトでダウンロードできるパーツリストで確認してみよう。さすがにスプールは一緒だと思うけど、やはりちゃんと確認しないとダメ、納得できないのだ。(誰が?)
5000Cは760204で50001Cが740602、らしい
ハンドルに合わせて左が5001Cで右が5000Cだ。見ての通り、スプールとコグホイールの駆動ギヤがアセンブリ状態で設定されているけど、どちらもパーツナンバーは8583番で同じだ。よって、5001Cスプールでの検証は問題ないことが判明した。(当たり前やんけ?)
じゃぁ、次は実際にミリVスプールと5001Cスプールを確認してみよう。
左3コが5001Cで右2コがミリVだ
遠心ブレーキ側から眺めてみるとこんな感じだ。大きいワッシャがあるのが5001Cスプールで、ワッシャがないのがミリVスプールだね。一方、反対側から眺めてみると、
これも左3コが5001C、右2コがミリVだね
これもワッシャの有無で判断できるだろう。それとコグホイール駆動ギヤにも違いが見受けられる。ミリVスプールと真ん中の5001Cスプールはアルミ製のギヤ、左2コの5001Cスプールは樹脂製のギヤで、さらにクリッカー用のギヤがコグホイール駆動ギヤと一体成型されている。ちなみに5001Cスプールに関して言うと、
順番は上と変わらないよ
左から、'81・5001C、年式不明、BigAの順番だ。ここでの注目は'81・5001Cで、それ以外の2コはただの平らなワッシャだけど'81・5001Cはワッシャにプレス加工が追加されており、外径よりもちょっと内側に低い円形の突起が見受けられる。意図はよくわからないが強度を上げる目的があるのだろうか?
あと、ミリVスプールについても違いがあり、
スプールの真ん中、見てね
左みたいにスプールの芯をスプリングピンで貫通させているタイプと、右のスプールの様に糸が結べるようにピンが突起になっているタイプに区別される。実は、黒ミリVと緑ミリVでどちらのタイプのスプールだったのかは忘れてしまっている。何も考えずにワイドコンバージョンしちゃったから。teppyさんの黒ミリVはどっちかな?
さて、それでは本題、実際にミリVに5001Cスプールを組んでみよう。一応、リバースエンジニアリングの元になったと思われるBigAスプールで試してみる。
まずは黒ミリVから
この時点では特に問題はない。そして、
見た目わかる?
真ん中の穴はエコノマイザー用の穴でこれはミリVスプールにはないから
この状態でクラッチを切ってスプールを回してみると、
フレームと接触してダメです・・・
あれ?互換性、ないの???
じゃあ、緑ミリVでもやってみよう。
エコノマイザー用の穴、見てね
さっきと同様にクラッチを切ってスプールを指で回すけど、
これもフレームと接触してダメです・・・
以上、ミリVに5001Cスプールは流用できない、ってのが現時点での結論になってしまうのであった。teppyさん、期待を持たせてしまってごめんなさいね。
以上でスプール組み替え検証は終わったのだけど、ここはファイナルダムンだから単純にそれで終わらせるはずがない。さらなる検証を行おうではないか、なんでスプールが流用できへんねん、と。
流用ができない、となると寸法に微妙な違いがあることが予想される。なのでそれぞれ測定してみればいい。
左がミリV、右が5001Cスプールだよん
まぁ、見ての通り微妙に寸法が違うのであった。それ以外のスプールについても測定結果を報告しよう。
|
スプール外径 |
スプール幅 |
シャフト長さ |
重さ |
ミリV・スプリングピン |
38.81 |
33.18 |
78.08 |
24.2 |
ミリV・突起 |
38.80 |
33.22 |
78.07 |
25.1 |
5001C・BigA |
38.96 |
32.28 |
78.02 |
25.2 |
5001C・年式不明 |
38.98 |
32.38 |
77.89 |
29.0 |
5001C・81年式 |
39.00 |
32.03 |
78.03 |
28.8 |
ついでにフレーム内径も測定してみたけど、
黒ミリV |
39.30 |
緑ミリV |
39.35 |
5001C・BigA |
39.47 |
この様に寸法の違いが確認されたのであった。スプール外径で約0.2mmほどミリVの方が小さく、それに伴ってフレーム内径も0.2mmほど小さい。そしてリールの構造上、フレームやカップの組み立て誤差や取り付け誤差によって、スプールの中心とフレーム穴の中心が一致せずにちょっとずれてしまうことが考えられる。よって、ミリVに直径の大きな5001Cスプールを組んだ場合はスプールとフレームが接触してしまうのだろう。それぞれの寸法差からクリアランスとして0.5mm程度確保しているみたいだ。
あと、管理人は6000Cスプールと6000Cフレームの組み合わせでミリVをワイドコンバージョン化したけど、その場合スプールとフレームは接触しなかった。でもなんでやねん?これは簡単、寸法が大きい同士の組み合わせだから。なので、スプール流用編の正式回答としては、
ミリVには5000Cスプールと5000Cフレームのセットで交換すれば流用可能・・・
こんな感じだね。
スプールが一段落してお次はハンドル編、今度はミリ3HのハンドルがミリVに流用可能なのか試してみる。
左がミリVで右がミリ3Hだね
見た感じよく似たハンドルだけどちょっと違いがあるぞ。まずはカウンターバランス部、
大きさが違うよね!
バランスウエイトの大きいのがミリ3Hだ。そしてハンドルノブも違っている・・・
微妙に違うぞ
斜め下の5角形のがミリVだ。一方のミリ3Hはノブが丸みを帯びているのがわかると思う。ただ、取り付け部の穴形状や板厚については見た目同じなので問題なく組めそう?じゃぁ、やってみるけど、
カウンターバランス、大きいよね!
見ての通りだ。これで回転させても何も問題はない。なので、
ミリ3HのハンドルはミリVに問題なく流用可能!
と、結論づけておこう。いや、それよりミリ3Hのハンドルを入手する方が難しそうだね。
以上、リクエストにお答えするの第何弾?としてお送りした「ミリVって旧ABUスプール流用できるのん??」は終わりにする。teppyさん、こんな具合だけど、納得頂けた?
他のみんなも恥ずかしがらずに疑問があったら質問したらいいよ。できる範囲で答えちゃうからね。ほな、さいなら!(2008/9/22更新)
ファイナルダムン掲示板に今回の依頼主teppyさんからの報告があったので、ちょっと遅くなったけど紹介するね。
実は、自分でもやってみました。BIG Aの5000cと黒ミリVのスプール交換。
結果は、黒ミリVのほうは、スプールに余裕があるためよく回りました(1ミリ弱ほど余裕がある感じ)。
5000Cのほうは、干渉する部分があり、スプールはスムーズに回りませんでした。
ちなみに私の黒ミリVのスプールには突起したライン止めがありました。
まだ実用してませんが、黒ミリVに5000Cのスプールは使えそうです。
改行は管理人が読みやすいように勝手にやっている。掲示板じゃくて本編だから。それはいいけど、「黒ミリVに5000Cのスプールは使えそうです。」ってのがteppyさんからの報告なのだ。あれ?本編の結果と違うやん?なんて言わないでね。管理人もなんでかわからないから。ちょっと考えたけど、ミリVはフレーム内径のバラツキが大きく、いろんな寸法のフレームが存在する、ってことなのかな?ミリVのフレームにはフットナンバーが打刻されていないからミリVフレームと5000Cフレームを間違えることは考えにくい。であれば寸法のバラツキ、すなわち寸法公差が大きいことくらいしか思いつかないのであった。うーん・・・
最終的には依頼主さんがOKなのであれば実用上問題ないと思う。なので、これ以上の追求はしないよ。あと5台ほどミリVを仕入れれば何が正しいのか判明するだろうけど・・・(2008/10/6追加)