「オイル編の最後ってことで今回は実際の銘柄とその入手手段について触れてみるわ」

「うんっ、今まで説明したコトを踏まえてのお話しだねっ」

「みんなが最終的に知りたいのは結果、どのオイルがブッ飛んで長持ちするか、ってことやと思う」

「やっぱ、そうなるんだねっ」

「先に言うわ、今回は残念やけどそこまでやってない、ちゅーか、やる気ない」

「実験してない、ってコトっ?」

「その通り、飛距離実験で結果出すのが本筋やとは思うけど、あれだけ大量の潤滑油や、見たやろ?」

「前の時間で画像、アップしたよねっ」

「ウチが考えてたのは、潤滑油別にベアリングを用意してそれを組み替えながら実験する、って手順やな」

「じゃぁ、ベアリングもすっごく用意しないとダメっ・・・」

「大量にベアリング仕入れるのはもちろん金額的負担になるけど、ベアリングのバラツキも考慮する必要があるねんな」

「そんなに差が出るモノなのっ?」

「0級のベアリングはそれなりに誤差があるから、本気でやるならバラツキの少ない精密級のベアリングで条件を揃えんと潤滑油の比較にならんと思う」

「精度の高いベアリングだと、もっとお金が掛かっちゃうし、そもそも手に入らないんだよねっ」

「そこまでやってられへん、前にも言うたけど、ウチ、ボランティアと違うからな」

「・・・」

「それを期待した人には悪いけど諦めてくれ、ちゅーか、自分で潤滑油を仕入れて結果出してくれ、最終的には個々の感覚が結果を生み出すんやからな」

「・・・」

「せやから今回はリールに使うに良さげな潤滑油の紹介、にとどめることにする、結果を期待してたヒトには謝るわ、ごめんな」

「・・・」

「ミキ、お詫びもしたから、銘柄編、始めよか?」

「今回はどういうカタチでやるのっ?」

「それなぁ・・・、基油別に紹介してみようと思ったけど、うーん・・・」

「・・・何かあるんだっ」

「一部の潤滑油に基油が不明なのがあるわ、化学合成油って表示しててもその先がなにかがわからんのやね」

「エステルとかポリアルファオレフィンってコト・・・」

「そう、せやからそれを踏まえての、基油別油種別、みたいな感じで」

「あとっ、選定基準、みたいなモノって?」

「できるだけデータシートが揃ってる潤滑油を紹介したいけど、そうもいかん場合もあるから、まぁ、必要に応じて、ウチの独断と偏見、やね」

「じゃぁ、まずは動物油だったよね」

「動物油はパス、植物油からにしよう」

「手に入らなかったんだねっ」

「手に入れるだけやったら肝油でもガマの油でもなんでもええねんけど、それらは潤滑目的じゃないからパス、で、植物油やねんけど、実のところ植物油って潤滑性能だけで評価すると結構優秀やねんで」

「あっ、そうなんだっ、・・・でもっ、それって意外だねっ」

「だた、それ以外の性能に問題があるから使いにくい」

「例えばどんなのっ?」

「酸化しやすくって、使うのは1回こっきりみたいな感じ」

「すぐにダメになっちゃう、ってコトなんだねっ」

「それやと問題があるから、化学合成油とブレンドしてみたり、植物油をエステル化してみたり、ってのが実際の使われ方らしいわ」

「Gamくん、それとねっ、基油編で植物油はエコ、ってお話しもしてたよねっ」

「生分解性やな、ミキが言いたいのは」

「そうそう、そうだねっ」

「元々が植物に由来するから環境中に放出されたとしても微生物が分解してくれる、ってのが植物油の特徴やけど、生分解性はエステル油にもあるよ」

「あっ、そうなんだっ」

「潤滑性能と生分解性、特性としては似てると思う」

「エステル油も潤滑性能はいいんだったよねっ」

「そんな感じ、で、実際の植物油を見てもらうけど・・・」

蓖麻子油
潤滑油ってありえんなぁ
絶対違うよ〜っ

「Gamくん、コレってお薬じゃないのっ?」

「誰が見てもそう思うよなぁ・・・」

「だって、このパッケージって、どこをどう見てもお薬だよっ、一応、『加香ヒマシ油』って書いてるからオイルなのはわかるんだけど」

「そう、『ヒマシ油』な、これが植物油の中でも古くから潤滑目的で使われてたし、『ヒマシ油』に添加剤を加えた潤滑油が売ってるわ」

「あっ、なるほどねっ」

「薬の効能としては下剤で、イタリアのファシスト党党員が反対勢力のリンチをするのにこの『ヒマシ油』をムリヤリ飲ませた、って記録が残ってるくらい由緒正しい潤滑油、ドゥーチェ愛用の逸品、とも言えるぞ」

「またっ、意味わかんないコト言ってるっ・・・」

「そしたらミキに質問するけどいいか?」

「それはいいけど、変な質問はダメだよっ、そのっ、ドゥーチェとか、ホントに意味わかんないんだしっ」

「・・・『ヒマシ油』の原材料ってなに?」

「それは、ヒマシ、って植物っ、・・・でもっ、そんなの聞いたコトないけど、Gamくん、ホントにそれでいいのっ?」

「標準和名で言うと『トウゴマ』、これを『ヒマ』と呼ぶ場合もあって、そのヒマの種子から取れる油やから『ヒマシ油』で漢字で書くと『蓖麻子油』になる、らしい」

「漢字の『蓖』って見たコトないよっ」

「ウチもこの年になるまで知らんかったわ、で、その『ヒマシ油』に添加剤を加えて潤滑油として売ってるのがこれ」

カストロールR30
めっちゃボロボロやけど未開封な
物持ちがよすぎ、って言うか・・・

「Gamくん、この缶、すっごく錆びちゃってるねっ」

「そうやなぁ、確か・・・20年くらいに貰ったと思う」

「コレはカストロールの『R30』っ、どんなオイルなのかなっ」

「油種としては2サイクルエンジンオイル、ただ、この手の潤滑油は動粘度が高いからリールには向いてない」


R30のスペック
表がちょっと小さいか?
なんかそうだね〜っ

「それでも紹介するには、何かワケがあるんだねっ」

「いや、ウチが植物油ですぐに思い浮かんだのが『R30』、基油が植物油で動粘度の低いのってなかなか見かけんわ」

「それじゃぁ、リールオイルとして使える植物油はない、みたいなっ?」

「これくらいかなぁ・・・」

バイオブレンドMPO
おまえの好きなエコやんけ
その言い方っ・・・

「え〜っと、『バイオブレンド』ってオイルだね、やっぱ、バイオって書いてるくらいだからっ」

「バイオと言えばスピニングリール、バイオマスターかな?」

「はははっ」

「・・・今のところ、リールに使えそうな動粘度の植物油でウチの心当たりはこの『バイオブレンドMPO』だけ」

「じゃぁ、コレって動粘度はどれくらいなのっ?」

「VG22相当やから微妙に高い目やけど、『バイオブレンド』のウリはもちろん生分解性、そのあたりはパフォーマンスとは分けて考えてほしい、公表データも見てくれる?

バイオブレンドのスペック
コレは何処で買ったのっ?
ここのリンクに飛んでくれるか

エコの是非はともかくとして、生分解性を重視するならこんな選択もありなんやろね」

「そうだね〜っ、今の時代だからっ、こういうのも必要だとミキは思うよっ」

「・・・そしたら次はメーカー純正、まず、メーカー純正の潤滑油はリールの付属品もお店で売ってるスプレー式も基本は鉱物油、って考えてほしい」

シマノとダイワの純正
まぁ、見ての通りやな
コレならミキでもわかるよっ

「Gamくん、この、容器に入ってるオイルとスプレーのオイルってどっちがいいのっ?」

「・・・ミキ、いい、ってのはどういう意味で言ってる?」

「中身もそうだし、あとっ、使い勝手、かなっ」

「中身は基本的には同じと思う、ただスプレー式は石油系溶剤が含まれてるけど、この溶剤の効果としては、噴射したときは溶剤が含まれてるので動粘度が低くなってベアリングのシールドのすきまとかに浸透しやすくなる、そして溶剤が揮発すると潤滑油本来の動粘度に戻ってその役目を果たす、みたいな感じかな?」

「へ〜っ、そういうものなんだ〜っ」

「いや、そんな都合よくできたらえーねんけど、このへんは正直言うとわからん、溶剤の効果はウチの思いつきやから」

「でもっ、言われてみればそんな気がするよっ」

「あと、使い勝手については好みの問題と違うかな、ウチはスプレー式リールオイルは使ったことがないので何とも言いようがない、噴射したときにムダに飛び散りそうな気がするけど、浸透性で言えば溶剤を含んだスプレー式の方が有利やんね」

「うんっ」

「ちなみにメーカー純正でも合成油を見掛けることもあるわ」

ダイワの合成油
高純度100%合成油らしい・・・
コレは昔のっ?

「コレはダイワのオイルだねっ」

「ベイトフィネス用なんやろね、で、これは基油がわからん」

「あっ、最初にお話ししてた・・・、確かに合成油、って書いてるけど」

「書いてない」

「え〜っ、コレっ、ちゃんと合成油、ってなってるじゃん」

「おまえの目は節穴?」

「どうしてっ?」

「手書きじゃなくって印刷やんけ」

「そんな細かいコト、いいじゃんっ、別にっ・・・」

「ウチは元々釣り具業界の欺瞞とハッタリには辟易してるから、そのKTFだかKFTだかなんか知らんけど一切信用してないし興味もない、・・・そしたら次は『ホムセン軍団』と『100均油』、なんしか、簡単に安く入手できる潤滑油、こっちの方が見てても落ち着くぞ」

ホムセングレード潤滑油
男は黙ってホムセンミシン油?
じゃぁ、ミキはどうすればいいのっ?

「この手のオイルって、なんか、似たようなのが色々あるんだねっ」

「そうやなぁ、タービン油にタッカーオイルやらミシン油に切削油・・・、基油は鉱物油で、動粘度と添加剤の違いで区分されてるけど、『添加剤の巻』でコメントしたやんね?」

「あっ、リールならあまり変わんない、みたいなっ・・・」

「この手の潤滑油は動粘度が表示されてるのと、あと、簡単に手に入るのがメリットな」

「それに、値段も安いよねっ」

「うん、お店によって取扱商品が違うから、いろんなホムセンに見に行くのがいい」

「Gamくんも色々探してたんだよねっ」

「休日はもちろん、仕事の合間とかにホムセンに寄って物色してたぞ」

「あ〜っ、お仕事、サボっちゃダメだよっ」

「あのな、ミキ、ウチは仕事の資材を買うついでで潤滑油を物色してただけやっちゅーねん・・・」

「ぷぷぷっ、それくらいわかってるって」

「・・・次からは油種別になるけど、これを見てくれる?」

シマノのディスクブレーキ作動油
バンタムオイル以外でもシマノ純正ってあるねんぞ
へ〜っ、そうなんだ〜っ

「Gamくん、コレはシマノのオイルじゃん」

「よく見たらわかると思うけど、シマノはシマノでも釣り具じゃなくって自転車な」

「へ〜っ、シマノって自転車も作ってるんだっ」

「シマノって元々は釣り具じゃなくって自転車の部品メーカーやねんな、で、これは自転車の油圧ディスクブレーキ用作動油、一般的に単車とかクルマを含めて油圧ディスクブレーキはポリグリコール油で、このポリグリコール油は塗装面に付着すると塗装がダメになってしまう、でも、シマノは取り扱いの容易な鉱物油でブレーキシステムを構築してる」

「じゃぁ、動粘度とかってどんな感じなのっ?」

「ごめん、実はスペックが開示されてないから不明やけど、垂らしてみたり触った感じで言えばバンタムオイルより柔らかそうに思ったけどなぁ・・・」

「このオイルは自転車屋さんに行けば手に入るんだねっ」

「流石に在庫を持ってる、ってことになるとその手の自転車をメインに取り扱ってるお店じゃないと厳しいと思うわ」

「結構いい自転車、ってコトだよねっ」

「そう、油圧ディスクブレーキ搭載のママチャリなんか売ってない、改造するにしてもこんなんが必要」

1インチスレッドステムディスクブレーキ台座フロントフォーク
油圧ディスクブレーキってフレーム弱い自転車やとどうかな?
そんなにきくんだっ??

「コレって、自転車の前の部分っ・・・」

「これはママチャリに使えるディスクブレーキ台座付フロントフォークで、マウンテンバイクとかのディスク台座のフロントフォークってママチャリとはフレーム側の直径が違う、具体的にはママチャリが1インチでマウンテンバイクが1-1/8インチやけど、これは世にも珍しい1インチスレッドステムのディスク台座&Vブレーキ兼用フロントフォークな」

「じゃぁ、Gamくんはそれをどうするのっ?」

「簡単やんけ、おまえの自転車を改造するねん」

「え〜っ、ちょっとヤダよっ・・・」

「おまえの自転車って前ブレーキ全然きかへんからめっちゃ危ないやんけ、だから強烈なストッピングパワーを誇る油圧ディスクブレーキにするんや」

「でもっ、それっ、なんだか危なくないっ?」

「・・・話し戻すけど、これ以外にも鉱物油のブレーキオイルは探せばある」

magura
ロイヤルブラッドってなんかの血?
高貴ってコトっ??

「シマノは赤だけど、コレは青いんだっ」

「これは『マグラ』ってメーカーのブレーキオイル、あと、自転車用でもポリグリコール油、ブレーキフルードの場合があるからそれは注意してほしい、『ミネラルオイル』って表示してるのが鉱物油な」

「それって基油によって言い方が違うのっ?」

「単車とかクルマはブレーキフルード、って言い方をするわ、で、鉱物油とポリグリコール油では互換性がない」

「え〜っと、その言い方だと、シマノのブレーキオイルにポリグリコール油は使えない・・・」

「ポリグリコール油と鉱物油ではオイルシールとかのゴムの種類が違うねんな、・・・あとは、ブレーキオイルは油圧作動油の一種やから添加剤としてはそれに準じてると思う」

「油圧作動油と特性が同じ、ってコトだねっ」

「特に必要なのが消泡性で、ブレーキの油圧配管中に泡が入ると正常に油圧が伝達できなくなるけどこれを『ベーパーロック』って言う」

「・・・」

「ブレーキキャリパやらマスターシリンダの整備作業したらわかるけど、間違いなく配管中のエア抜きが必要になる、だから要求性能としては動粘度が低くて消泡性のある、且つ沸点が高い作動油が望まれる、専用の作動油がシマノ純正で売ってるのはそーゆー面も踏まえての話しなのかな?」

「・・・」

「それじゃぁ次の潤滑油はこれにしよ・・・」

サンハヤト
これがウワサの小分けで買えるポリアルファオレフィンな
ウワサになってないっ・・・

「同じ容器で3種類あるんだねっ」

「これはプリント基板やらの電子関連メーカー、『サンハヤト』って言うねんけど、そこが販売してる接点復活剤が2種類と潤滑油な、『サンハヤト3兄弟』とも言う」

「ぷぷっ」

「『ポリコールキング』と『ニューポリコールキング』が接点復活剤、『アルファルーブ』が潤滑油やけど、基油はいずれもVG32のポリアルファオレフィン、少量で入手できるポリアルファオレフィンでウチが知ってるのはこれだけ」

「VG32っていうと、ちょっと動粘度が高い目なんだねっ」

「垂らしてみた感じで言うと、『IOS-01』と似たような感じがするけどなぁ・・・」

「じゃぁ、リールにも使えるんだっ」

「『サンハヤト3兄弟』の『IOS-01』に対する優位性は値段の安さで、『IOS-01』は3グラムで税込み1680円やけど、『サンハヤト3兄弟』は20mlで500円くらいで売ってるわ」

「なんだか、すっごく安いっ、・・・て言うか、前にもお話ししたコトあるけど『IOS-01』って高いよねっ」

「この値段なら試しに買うのもありと違うか?特に『IOS-01』を使ってるヒトは『サンハヤト』で代用できそうな気がするぞ」

「Gamくん、この、『サンハヤト3兄弟』ってどこで売ってるのっ?」

「そうそう、肝心なところやけど、電子部品を売ってるお店やったら在庫持ってると思う」

「電子部品の専門店ってちょっと難しいかなっ?」

「そうやなぁ、ウチのアタマにパッと思いつくのが秋葉原に日本橋、大須に寺町・・・」

「秋葉原は東京、日本橋は大阪で、大須は名古屋だし・・・、Gamくん、最後の寺町って何処っ?」

「寺町は京都にあるけどウチは行ったことない、ちゅーか日本橋で用事済んでた」

「あとはっ・・・、この3種類でどれがいい、とかってあるっ?」

「データシートによると潤滑油の『アルファルーブ』は基油100%、接点復活剤の『ポリコールキング』と『ニューポリコールキング』は添加剤が違う」

「じゃぁ、コレもリールだとあんまり変わんないっ・・・」

「接点復活剤の場合、基本的には銅と銀の酸化もしくは硫化の防止や皮膜除去、って考えてくれたらいい」

「やっぱ全然関係なさそうだねっ」

「ただ、『ポリコールキング』は添加剤が判明してて、窒化ホウ素が0.1%以下含まれてる・・・

ポリコールキング
ポリアルファオレフィン99.9%!
っ・・・

で、この窒化ホウ素はメーカー曰く『超微粒子のセラミック添加剤を配合した』ってことで所謂固体潤滑剤に該当する」

「Gamくん、コレは『F-0』みたいに振らなくってもいいのっ?」

「そうみたい、上手いこと拡散させてるんかな?」

「じゃぁ、接点復活剤じゃなくってオイル、ってコトを考えた場合は固体潤滑剤が含まれてる『ポリコールキング』の方がいいんだねっ」

「理屈的にはそうなるけど、0.1%以下やからそんなに変わらんのと違う?」

「『ニューポリコールキング』の方はわかんないんだっ」

「データシートでは添加剤が5〜15%に増えてるけどその組成はわからんよね

ニューポリコールキング
ポリアルファオレフィン85〜95%!
っ・・・

で、名前の通り商品としては『ニューポリコールキング』の方が新しいから接点復活剤としての性能は向上してるはずやけど、その添加剤の違いが潤滑性能の向上をもたらせてるか、ってところが見えへん」

「フツーに考えると新しい方がいい、って思っちゃうけどね〜っ」

「そのへんは実際に試してみてほしい、値段も安い、・・・ちゅーか、小分けの化学合成油の適正価格としたらこんなもんと違う?」

「20mlで500円くらい、なら、ってコトだねっ」

「ただ、『サンハヤト3兄弟』は全部刷毛塗り仕様やから、目薬容器とかの滴下できる容器に移し替えた方が使い勝手がいい」

「Gamくんは全部入れ替えてるっ」

「うん、あと『IOS-01』みたいに瞬間接着剤のノズルみたいなのを使ってもいいかも・・・、じゃぁ次やけど、どれにするかなぁ・・・」

「あと、どれくらいあるのっ?」

「うーん・・・、これにしよ

レッドラインフォークオイル
自転車じゃなくってバイクのフォーク用なんだねっ
自転車のサスペンションフォークはオイルダンパーかどうか知らんねん

自転車、電子の次は単車やな」

「コレって?」

「単車のフォークオイル」

「どんなオイルなのかなっ?」

「単車やクルマのサスペンションってバネの力で路面の凸凹を追従してるけど、この追従する速さを封入されてる油の動粘度やらガスの圧力で変えてる」

「・・・」

「例えば2本の同じ大きさの注射器に動粘度の高い油と低い油がそれぞれ入ってるとする、で、両方の注射器に同じ力を加えて中の油を出すとしたらどっちが早く出せる?」

「あっ、それは動粘度が低い方がすぐに出るよねっ」

「そんな感じ、それでやな、単車のフロントフォークはダンパーの役目を果たしているフォークオイルが簡単に交換できる構造になってるのと、サスセッテイングの必要上いろんな動粘度のフォークオイルが用意されてるわ」

「じゃぁ、その中で動粘度の低いフォークオイルがリールに使える、ってコトなんだねっ」

「そう、その動粘度やけど、銘柄によってはVG5クラスが存在する、写真でいうと左がVG10で右がVG5に相当するわ」

「さっきのがそのっ、フォークオイルっ・・・『レッドライン』ってのだねっ」

「何回もコメントしてるけど、工業用潤滑油ならVG2とかも20リッター缶で売ってる、でも、現実的手段として一般人が入手できる潤滑油になるとこのレベルで限界な気がする」

「・・・」

「フツーのフォークオイルは1リットルが標準やけど、『レッドライン』は1パイントで売ってるよ」

「『ぱいんと』っ?・・・」

「アメリカの単位で、1パイントは約0.47リットルになる」

「ちなみにお値段っていくらするのっ?」

『レッドライン』のオンラインショップで税込み2700円、『レッドライン』って単車やクルマの潤滑油としては高級品やから割高な印象があるけど、リール目的としては充分に安い、ちゅーか『レッドライン』を安い、って言い切れるウチは幸せ・・・」

「・・・Gamくん、『レッドライン』ってそんなに高いんだっ?」

「エンジンオイルなんかオンラインショップ価格で1ガロン、・・・約3.8リットルで税込み13650円やぞ、ホムセンで売ってるトヨタや日産純正エンジンオイルなんか4リットルで2000円ちょいやから、どんなけ高級品なんか理解できる思うわ」

「じゃぁ、リールのオイルって、そのっ、高級なエンジンオイルなんかよりもさらに高いっ・・・」

「そう、小分けにしたら高くなる、ってことを考慮しても気ィ狂ってるレベル、具体例はさっき『サンハヤト3兄弟』の時にコメントした通りな」

「うんっ、・・・じゃぁ、次の粘度指数だけど、コレもいい感じなんだねっ」

「前の時間に紹介した航空機用の高粘度指数作動油との比較になるけど、その『Mobil Aero HF』の粘度指数は370やねんけど、フォークオイルの場合、モノによっては400超えるわ、高粘度指数作動油の入手性はウチくらいのマニアックレベルを要求されるから、それを思えば入手性はいいと思う、高いフォークオイルはバイクショップで取り寄せになるけど」

「・・・でも、モノによる、ってのが難しいねっ」

「具体的銘柄はこれを見てくれる?

フォークオイル
これはVG30未満に絞った
VG32じゃないだっ

ガイジンさんの作ったデータやけど、フォークオイルの銘柄と動粘度、粘度指数の表で、これの2種類あるViscosity Indexのところを見てくれたらわかるけど、300とか400が平気で存在する、『レッドライン』なんかそれに該当するよね」

「それじゃぁGamくん、どの銘柄が手に入れやすいのっ?」

「入手性はもちろん日本のメーカー純正が手っ取り早い、ミキは単車のメーカーって知ってる?」

「Gamくんのバイクって、確か、・・・スズキだったよねっ」

「それ以外にはホンダにヤマハ、カワサキ、あとはサスペンションメーカーのカヤバとショーワやな」

「この表で言うと、え〜っと・・・、日本のってどれもそんなに粘度指数って高くないっ、『Kayaba (K2-C Shock)』が粘度指数310だからっ・・・」

「カヤバの『K2-C』はカワサキがリアサス用で純正採用してて、一般的にはカワサキブランドで入手することになる」

カワサキK2-C
単車の世界では男カワサキ、って言うらしい
Gamくんはスズキじゃんっ

「あとは外国のメーカーなんだねっ」

「『レッドライン』に『モチュール』、『シルコリン』やら『オーリンズ』・・・、基本的には趣味の世界かなぁ」

「それだと、・・・やっぱ『レッドライン』じゃん、それ以外になると『シルコリン』の『Pro RSF (2.5wt)』とかっ?」

「まぁ、そんな感じやわ、次の混合可能、って項目についてやけど、フォークオイルはサスペンションセッティングの必要上、いろんな動粘度のが用意されてる、って言うたよね」

「うんっ、それじゃぁ、混ぜてもいい、ってコトだから、用意されてる動粘度ではセッティングがダメみたいなコトもあるんだっ?」

「サスセッティングって、手ェつけだしたらそんなこともあるらしいわ」

「でねっ、混ぜてもいい、ってコトをわざわざ強調するんだったら、フツーは混ぜちゃダメなのっ?」

「機械に使う潤滑油って推奨品がちゃんと指定されてる、それは市販品やからISO粘度グレードが一定の値に決まってて、別の油を混ぜて動粘度を調整するシチュエーションって指定の油がないとかの緊急時くらい、普段からそんな使い方することは想定されてないし、通常の感覚やと在庫持ってると思う」

「混ぜると問題があるっ・・・」

「違う潤滑油を混ぜると互いの成分同士がどんな反応するか読めんのやね、だから同じ銘柄の動粘度違いであれば問題ないと思う」

「じゃぁ、動粘度の一番低いのと高い目のを買うじゃん、それでねっ、季節によって混ぜる割合を変えて動粘度を調整する・・・、前にもお話ししてたけど、そういうコトができるんだねっ」

「混合比率は動粘度が対数で算出される数字やから、フツーに比例計算するのとはちょっと結果が違う」

「例えばだけど、VG10のオイルとVG32のオイルを半分ずつ混ぜても、平均した数字、VG21にはならないっ、ってコトっ?」

「その通り、・・・あとはフォークオイルで注意する点やけど」

「この流動点、ってどういうコトかなっ?」

「液体って温度を下げると凝固するやんね?」

「じゃぁ、その固まったオイルが流れ出す温度、でいいんだねっ」

「その温度が微妙に高い、銘柄にもよるけど『レッドライン』のVG5は摂氏-15度、極端な例を挙げると『Mobil Aero HF』は摂氏-66度やから」

「コレだと、冬はちょっと厳しいのかなっ?」

「さぁ?そんな極寒コンディションでサカナ釣りする?」

「それっ、たぶん、やんないっ・・・」

「それはそうと、クソ寒い時期に単車乗るのってきついやん」

「うんっ、だからっ、すっごく寒い状態って考えていない、みたいなっ?」

「そんな感じかなぁ、・・・動粘度のデータとしては摂氏40度と100度しかないからその下の温度ってわからんし、いくら動粘度が低いからって流動点近辺では動粘度は極端に高くなる、例の動粘度-温度グラフが直線にはならん」

「このグラフだよねっ」

チャート
またっ、登場しちゃうんだねっ
気にすな・・・

「理屈としては、動粘度と温度の関係って公式があって、それに当てはめるとこんな具合で傾斜が直線になる、でも左端の低温領域はちょっと怪しい」

「このグラフだと左端が-10度だから、流動点からの余裕ってほとんどないよっ」

「このあたりは銘柄によって違うけど、『レッドライン』の場合は流動点が高い傾向なんを考慮する必要がある」

「じゃぁっ、次の水と反応、って加水分解のコトでいいのっ?」

「たぶんエステル油がベースになってそうな気がする、ただ、これは実は『F-0』の方がひどくてそれを思えばマシやけど、実のところ加水分解実験の写真撮ったけど画像がどっか行ってしまったからアップできへん、それはまたやり直すつもりやわ」

「ふ〜んっ」

「最後は目薬容器の話、さっき潤滑油を目薬容器に入れ替えてる、ってコメントしたけど、『レッドライン』のVG5だけ漏れてきた」

「樹脂をダメにしちゃってるっ?」

「割れてはないねんけど、この手のキャップの樹脂はポリエチレンで耐油性は悪くないと思う、なんでって聞かれてもちょっとわからんわ」

「でもっ、気をつけた方がいい、ってコトだねっ」

「そう、そんな感じ、そしたら次行こうと思ったけど・・・」

「どうしたのかなっ」

「いや、ここまでまとめたところで2年半放置プレイ状態になったから、なに考えてたか全然思い出せん・・・」

「ぷぷぷっ」

「もーえーやろ?」

「それはミキに聞かれてもわかんないよっ」

「植物油に鉱物油、ポリアルファオレフィンにエステル、一応は紹介したやん」

「でもっ、シリコーンオイルやフッ素オイルはどうするのっ?」

「シリコーン油はベアリングの潤滑には向いてない、鉄対鉄の潤滑能力が悪い時点で却下、フッ素油は仕入れたけど以前に『月刊ダムン』で紹介したやんね」

「・・・」

「例えば以前紹介したフッ素油の『クライトックス』、これの防錆グレード『クライトックス1506XP』な、ウチは意地でも仕入れたけど一般的にはどうあがいたって入手できへんもん」

クライトックス1506XP
幻の防錆グレードフッ素油やからダイフロイルよりも安心できるぞ?
ISO VG32相当なんだってねっ

「コレがそうなんだっ」

「もうちょっと動粘度が低ければ値打ちあるのかも知れんが、無理してクソ高いフッ素油使うこともない気がするわ」

「・・・」

「現実世界で入手できる、となれば例の航空機用高粘度指数作動油やらベアリングメーカー純正採用のエステル油も厳しいと思う、このレベルも基本的には海外直輸入になるもん」

エーロシェルフルード12
今度はベアリングメーカー純正採用品!
釣り具メーカーよりもいいのかなっ??

「そのっ、ベアリング用のオイルって?」

「昭和シェル石油の『エーロシェルフルード12』な、これをNSKがミニチュアベアリングに純正採用してるよ、ほら・・・」

NSK
NSK以外のメーカーだとどうなのかなっ?
どこもミニチュアベアリングはこれの相当品、MIL-6085適合品を使ってるわ

「カタログだと『エアロシェルフルイド12』だねっ」

「外国語の表現の揺らぎや、そこを突っ込むな・・・」

「はははっ」

「これも航空機用の潤滑油やねんけど、ジャイロやら計器類用の低揮発性潤滑油で、40度での動粘度の表記はないけどデータシートのスペックで計算するとVG12相当になるわ」

エーロシェルフルード12スペック
40度の動粘度が12.38、100度で3.22、これを計算すると粘度指数130.3になるぞ
NSKでの規格はMIL-L-6085Aだけど・・・

「それだと、今まで言ってきた条件にはだいたい合ってるみたいだねっ」

「ベアリングメーカー純正採用、っていうのが最大のウリと違うやろか」

「そうだねっ」

「そんなこんなでいろんな潤滑油を紹介してみたけど、・・・ホンマは粘度測定してみたいねんけど、測定器が高額すぎて手がだせんのやな」

「・・・」

「あと、粘度測定には重要な項目があってやな・・・、なにかわかるか?」

「えっ、ちょっと・・・」

「温度や」

「あっ、動粘度は温度で変化するっ・・・」

「そう、粘度測定は温度を一定に保つ必要があるけど、エアコンさえないウチの部屋でどないせーちゅーねん、って感じやな、だからあきらめた」

「そうだね〜っ、まずはっ、エアコン、買わなきゃねっ」

「年取ると我慢がきかん様になるわ、そしたら銘柄の巻はこれにて終了、思い出したら補足するつもりやけど、一応、次はグリース編に突入やな」

「こんどはいつになるのかなっ?」

「さぁ、気まぐれで目ェさめたり寝てみたりするからウチにはわからん!」

「Gamくんも色々考えてるみたいだけど・・・」

「そんなんどーでもえーねんって、そしたら次行こ!」

「うんっ」

(2015年2月15日更新)

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