「この時間はグリースの流動性についてコメントする」

「Gamくん、流動性がリールの巻き心地に関係していて、柔らかいグリスの方がよくなるんだねっ」

「そのあたりやけど、まず、これを見てもらおう・・・

ちょう度番号
最近JIS検索の暗号化がかなり厳しくなった・・・
今までどうしてたのっ?

例によってJIS規格からの抜粋、『JIS K 2220』という規格のお題目がずばり『グリース』やねんな」

「このちょう度番号ってのが流動性を表してるんだねっ」

「ちょう度番号の『ちょう』は前の時間に説明した増ちょう剤の『ちょう』な」

「蝶々の『ちょう』じゃないんだねっ」

「・・・」

「・・・」

「えーっと、潤滑油編で動粘度に触れたけど、それと似たような感じで・・・」

「・・・動粘度は『ISO VG』で数字のちっちゃい方が柔らかいオイルだったから、今回のちょう度番号もそれでいいのかなっ」

「左側がちょう度番号で右側が混和ちょう度、左と右で数字の大きい小さいに注目してくれる?」

「あっ、おっきいちっちゃいが逆になってるねっ」

「ルアーやフライのフックは番号の数字が小さい方が実際の寸法は大きくなるけど、それと同じく外国の規格を準用してるからで、これ以外で思いつくのは電線の太さの『AWG』で『アメリカンワイヤーゲージ』、番号が小さい方が実際は太くなるよ」

「日本とは感覚がちがうっ・・・」

「なんで、って言われてもウチもわからん、・・・で、流動性のあるなしで言えばさっきのミキのが正解で、ちょう度番号の小さな数字が流動性があることになるわ」

「じゃぁ、リールに使うんだったら、ちょう度番号のちっちゃなグリス、でいいんだねっ」

「現実問題を言えばたいていのグリースは2号で、1号とか3号の時点で2号よりも遙かに少ないから入手が難しいし、それ以外は存在すら珍しいレベルになる」

「それだと、1号のグリスをどうかして探す、ってコトになるんだっ」

「潤滑油と同じで、存在するけど1キロ缶とか大量に仕入れることになる可能性が高いから次行く・・・、上の表の右側、ちょう度やけど、こっちの数字は実際の測定によって求められている数字で、JIS規格によると『荷重,時間及び温度の規定条件において,標準円すいが試料に進入する距離。0.1mm単位で表す。』ってことらしい」

「柔らかいグリスだと進入する距離が大きくなるから、ちょう度の数字も大きくなるんだねっ」

「そんな感じ、あと、ちょう度にはJIS規格で採用されている『混和ちょう度』以外にも『不混和ちょう度』やら種類があるけど、このあたりは我々レベルでは気にしなくていいと思う」

「JIS規格では『混和ちょう度』を使うから、『不混和ちょう度』は考えなくっていい、みたいなっ?」

「何かの資料を調べると『不混和ちょう度』に出くわすこともあるから、そのレベルやな」

「うんっ」

「それでやな、今までちょう度についてコメントしたけど、実は流動性についてはもう少し考慮するべきことがある」

「ちょう度番号のちっちゃなグリスは入手しにくい、ってさっき言ってたよねっ」

「そっちじゃなくって、グリースの流動性や封入量によって『チャーニング』や『チャネリング』って状態が生じるねんな」

「・・・」

「前の時間に『直接潤滑面に入り込む特性を持たせたグリースも存在する』って話しをしたけど、覚えてる?」

「・・・」

「平たく言うとそれが『チャーニング』で、流動性の高いグリースはそういう状態になりやすい」

「なんか、そんな感じだねっ」

「でもそれは単純に考えれば撹拌抵抗になるよね」

「あっ・・・」

「歯車でグリースをかき混ぜるのと似たような状態やんね」

「じゃぁ、流動性の高いグリスってリールには良くないのっ?」

「何を求めるかによって良い悪いは変わってくるけど、巻き取りの軽さをグリースによって軽減する目的であれば、単純にちょう度番号の小さいグリースは『チャーニング』の傾向にあるからそれを選択するのは方向として間違えてると思うわ」

「それじゃぁ、今まで思ってたコトって全然逆だったんだっ・・・」

「だから『潤滑は一筋縄ではいかん』って前からさんざん言ってたやん」

「なるほどね〜っ、でねっ、『チャネリング』ってどういう状態なのかなっ」

「『チャネリング』はグリースが潤滑面から押し出された状態で、グリースから滲み出る基油によって潤滑されている、ってこれも前の時間にコメントしたけどな」

「そうだっけ?」

「ミキが覚えてないだけ」

「あははっ、・・・じゃぁ、ちょう度番号のちっちゃなグリスもダメだったら何か選ぶ基準ってあるのっ?番号でも選べないんだったら、実際に試してみるしかない、とかっ・・・」

「正直なところ、ウチの選定基準で言うと巻き取りの軽さはあんまり着目してないけどな」

「それはライギョ釣りだから・・・、あ〜っ、わかった〜っ!」

「なに?」

「だって、Gamくん、そのあたりってすっごく無頓着そうだもんっ」

「ははは、その通りでウチはいい加減やから微妙な違いがわからんのやね」

「ぷぷぷっ」

「でも世間的にはそうもいかんワケやからコメントするけど、世の中には低トルク特性を謳ったグリースが存在するよ」

「そういうのがちゃんとあるんだねっ」

「モノ自体はグリース潤滑のミニチュアボールベアリングで高速回転を狙う場合や、リニアガイドの負荷特性改善目的で使うグリースがそれに該当する」

「でもっ、それもいっぱい入ってるのしかない、だったらもったいないし・・・」

「心配するな、それはちゃんと小さい容器に入ってるのを探したから大丈夫やぞ」

「そうなんだっ、さすがGamくんだねっ」

「但し、低トルクグリースって基油がエステル油なのが多いわ」

「エステルだと樹脂やゴムとの相性があるからっ・・・」

「低トルクグリースはフリクションの低減を狙うから基油動粘度が低い傾向にあって、その条件で長時間にわたって潤滑を維持するには基油そのものの潤滑能力が必要、そうなるとエステル油が多用されるのと違うかな」

「じゃぁ、基油がポリアルファオレフィンとかってないのっ?」

「ないことはないけど・・・」

「いっぱい入ってる・・・」

「入手性の問題、っていつも言ってる通りやな」

「やっぱ、難しいんだねっ」

「だからグリースじゃなくって潤滑油を使ってギヤを潤滑する手法が実施されるのかも知れんね、グリースの流動性って今までコメントした通りで一筋縄ではいかんやんか」

「Gamくんはそれってどう思うのっ」

「使われる潤滑油の動粘度がどの程度かわからんから何とも言いようがないけど・・・、ダイワのマグシールドとの相性は悪い気がするなぁ」

「マグシールド、って磁石を使うんだっけ?」

「磁性流体を磁力で保持してる、で、元々磁性流体シールは液体に対するシール性能は良くない、っていうのが『NOK』とかシールメーカーの言い分やから、それをリールに使うのはどう?って言いたいけど、・・・そもそもスピニングは知らんし」

「ははっ、いつものコトだねっ」

「ケース側から潤滑油が逆流する構造になってるのかどうかも知らんから、この件はもうちょっと調べてからにする」

「じゃぁ、スピニング、買っちゃうんだっ」

「そしたら、ミキがソルティガZを買うんや?」

「絶対、買わないもんっ」

「ちゅーか、買わない、じゃなくってやなぁ・・・」

「そうそう、そんなのとてもじゃないけど買えないよねっ」

「そしたら今回はこれで終わりにする・・・、グリースでフリクションの低減を狙うならちょう度で選択するんじゃなくって低トルク特性で選択しろ、ってのが結論になりそうやね」

「でもっ、それも選択肢が難しいし・・・」

「そのへんも踏まえての、次回は銘柄の巻やな」

「うんっ、それじゃぁね〜っ♪」

(2015年3月1日更新)

もどる