以前より「ガイドについてのエトセトラ」ではフジのSiCガイドとは別のガイドを紹介したり、フジの企業姿勢?を揶揄してみたりと「アンチ・フジ」的な対応に終始していた。なんしか国内市場に限って言えばフジが完全にコントロールできるのだからなんでもできるよね。俗に言う「やりたい放題」ってヤツ。それが我々エンドユーザーに対しての負担になっているし、あと、選択肢が限定されるのもイヤな感じ。最近に至ってはゴールドサーメットのガイドリングもとうとう廃盤になってしまい、フジのカタログを眺めてもそのラインナップのほとんどがSiCガイドなのだ。SiCがその特性上、ガイドリングとしてトータルで考えるとベストチョイスなのは管理人も否定しない。でも、

ガイドリングくらいアメリカ市場みたいに自由に選ばせてくれ!

「気合いを入れてビルドする竿はSiCでそれ以外はアルコナイト!」とかできたらいいのになぁ、なんて管理人は常々思うのだ。でも、EUシマノのパックロッドが元ネタのトラスティックには2大メーカー初とも言えるアルコナイトがSiCに変更されることなくそのまま採用されたし、そして一方のダイワも自社製かどうかは知らないけどカーボンフレーム・チタンリングのガイドを採用してみたりと、この件、ちょっとずつだけど、フジの思惑から外れた動きが見えつつある今日この頃だったりする。

そしてロッドビルドの世界でも、ほんの僅かかも知れないけどSiC以外を選択する動きが見え隠れしているのも事実だ。管理人の独断と偏見じゃなくって。いつもながらに思うけど、ロッドビルドは自由な発想こそがその根底にあるのだと。そこで以前に紹介したアルコナイトガイドやPacBayのSiCガイドとは別の選択肢を「富士工業最後の砦??」と題して紹介しよう。

BHNNGガイド
いずれもリング径は16で左がMNSG16、右はBMNAG16
真ん中が「最後の砦」だけど、背が高くてフレームがゴツいのがわかるだろう

このガイドは例によって海外調達したのだけど、ガイドフレームはフジのNガイドの強力版で国内では廃盤になってしまったHNガイドだ。そしてガイドリングの色に注目してほしいのだが、SiCの黒に近いグレーやアルコナイトの黒とは異なりやや薄いグレーだよね。でも、釣具屋さんで見かける廉価版の竿に組んでいるようなハードリング系の半光沢グレーとは違ってSiCのような光沢を持つこのガイドリング、その正体は窒化珪素、化学式ではSi3N4と表記するセラミックなのだ(以下、面倒だからSiNって表現するからね)。フジの型番だとBHNNGというのが正解になる。

それではいつものように比較データを、と言いたいところだけど、実はフジがSiNのスペックを公表していないものだから話がややこしくなってくる。であればやはり「セラミックといえば京セラ」ってことで京セラの特性表に頼らざるを得ない管理人、いや、フジもガイドリングは京セラに頼らざるを得ないのだが・・・

材質
SiC
アルコナイト
ハードロイ
アルミナオキサイド
ゴールドサーメット
SiN(SN-220)
SiN(SN-240)
ガイドリング種別
S
A
L
O
G
Graphite Black
Polished Black
Grey
Dark Brown
Gold
ビッカースかたさ
22〜24
13〜15
12〜14
12〜14
11
13.9
14
比重
3.2
4.2
3.4
3.8
5.6
3.2
3.3
熱伝導率
60
46
8.3
12.5
33.5
20
27
曲げ強さ
540
440
245
300
980
610
1020
ヒートテスト
500回以上
300回以上
145〜200 回
20〜30 回
500回以上
破壊靱性
4〜5
5
7
単位が今のフジはSI系に変わったから以前の数字とは違うけど、管理人が換算した値だよ
アルミナオキサイドは国内の改良型ハードリングと同じでいいはず
SiNの括弧内は京セラの型番で、?は確定じゃないから、ってことで・・・

白がフジの公表スペックで黄色が京セラの特性表からの追加だけど、これからわかるのは、

こんな具合かな。京セラが2種類のSiNを紹介しているものだから確定じゃないけど、だいたいの感じはつかめると思う。そしてこれを管理人の独断&偏見で評価すると、

ハードリング系よりもちょっとはいい感じ!

ハードロイやアルミナオキサイドよりは確実にいいと断言できる。でも、最強のハードリングと称される?アルコナイトとの比較になるとそれぞれのアドバンテージである強さと熱伝導率のどちらかを優先するか、によって決まってくる。強さ優先ならSiNで熱伝導率優先ならアルコナイト、ってことだね。実際、SiNはヘビーソルトのワイヤーライン用、ってのがアメリカでの売り方らしくって、管理人は詳しく知らないけどトローリングか何かでサメでも釣るのかな?

そして肝心なSiCとSiNとの比較としては、工業的には耐熱衝撃性はSiNの方が優秀だからそっち方面に用いられるみたいで、ジェットエンジンやターボチャージャーのベアリングなんかにはSiCじゃなくってSiNが採用されるらしいのだけど、それこそワイヤーラインでトローリングするワケじゃないから関係ないと思う。となれば「強さと靱性」と「ビッカースかたさと熱伝導率」とのトレードオフになるけど、SiNが京セラ型番のSN-240であれば「強さと靱性」優先でSiN、って選択肢はあると思う。でも、SN-220とSiCとの比較であればそんなに優位性があるわけじゃないから微妙としか言いようがない。このあたりの評価にもフジがスペックを公開していない、ってのが影響している・・・

あとは値段についてもコメントしなければならないだろう。今回利用したビルドショップ、MudHoleでの価格になるけど、まずはSiNのHNガイドは、

こんな具合で、一方のSiCのHNガイドは、

このように値段はSiNの方がかなりリーズナブルだから、「強さと靱性」優先で、且つ、値段を加味すればSiNガイドという選択肢も間違っていないと管理人は思うのだけど、どうだろうか?


さて、色々述べてきたSiNガイド編だけど、最後に肝心な事をコメントしなければならない。それは・・・

ごめん、アルコナイトと違ってSiNはヘビーソルト系のガイドしか揃ってないねん(笑)

笑いはどうでもいいとして、アルコナイトがSiCの代わりに使えるのはそのスペックもそうだけどSiCと同様のラインナップが存在するからだと思う。でも、SiNには世間的によく使われるLNガイドやYガイド、MNガイドや最新のKガイドシリーズなんてのは存在しない。

BHBNGとHBSG
海外仕様のガンスモークHBSG20とBHBNG20だ
SiNって大昔、25年くらい前のフジのカタログには載ってた様な気がするけど、記憶違いかなぁ・・・

なので、フツーのロッドビルダーだと「ヘビーソルト系のガイドしかないんやったらそんなん使い物にならへんやないか!」なんてお叱りを頂戴すること請け合いだろう。でも、ここからが本番、というか管理人の本領が発揮?まぁ、なんしか、

世界初!SiNガイド搭載ライギョ竿をビルドするねん!!

いつも通りだけどこれが正解だね。

以上、フジの海外向け専用ガイドリングで最後に残った存在であるSiNを国内復帰させた「ガイドについてのエトセトラ・富士工業最後の砦??」、冗談みたいで誰の参考にもならない結論になってしまったけど、次は今までの流れでガイドリング総集編がいい?それともフレーム編??(2011/4/10更新)

ガイドについてのエトセトラ・アルコナイトガイド追補版!(2015年3月28日追加)

もどる