今回はそそくさとビルドしようと思っている。当たり前だけど、時間は過ぎ去っていく一方で、後戻りすることなんかできやしない。不平等なこの世の中で、時間だけは全ての人に平等に与えられるのだから。もっと時間を有効に使おう、残された時間はあとどのくらいだろうか・・・

余計なことは置いておく。まずはグリップから攻めよう。

順番は「秋水」と同様だ。今回の「Falco」も完全1ピースなのでバットエンド部から組んでいく。なので、まずはブランクのスパインを割り出して、その位置にリールシートを合わせる。接着する順番はファイティングバット、リールシート、グリップ、ファイティンググリップの順番だ。

ブランク終端部外径が15.5mm程度なのに対して、リールシート・DPS-SD17の内径がおよそ17mm、ファイティングバット用のEVAエンドキャップ内径は15mmだ。ファイティングバットはEVAなのでムリヤリ突っ込めばどうにかなる。が、リールシートはブランクをカサ上げしなければならない。その内径差は1.5mmしかなく、そんな太さのカサ上げにはテープ巻きが一番適していると思う。まぁ、カーボンアーバーの内径を削りまくってもいいとは思うが、テープ巻きカサ上げの方が手間がかからないだろう。テープの幅が狭いので並べて巻くことになるのだが、キッチリ並べて巻くのではなく、画像のようにスキマを空けて巻く。そうするとリールシートを突っ込んだ時に、接着剤がこそぎ取られずにスキマに残るので接着強度の面で有利になると思う。だから、テープ巻きもキッチリとリールシート内径に合わせすぎると接着剤がこそぎ取られやすくなってしまうので、ほどほどにしておこうね。

リールシート&ファイティングバット
センクロマークに赤いマーキングを施しているが、これはスパイン位置だ

ファイティングバットとリールシートの接着が硬化したら、次はグリップ部だ。グリップとファイティンググリップはカーボンケブラーパイプを採用する。パイプのサイズは外径27mmの内径24mm。ブランク外径は14〜15mmなので、無論のことカサ上げが必要だ。ここのカサ上げにはカーボンアーバーという専用部材を使う。釣り工房マタギでパイプ用にカーボンアーバーが売っているのでそのまま採用した。もちろんブランクに合わせて内径を加工する必要があるので、ちょっと小さい目を仕入れよう。今回は内径15mmが在庫切れだったので14mmを4コ仕入れた。外径24mmでパイプ内径に合わせているはずなのだが、4コのうち1コだけしかパイプには入らなかった。なのでアーバー外径を削って小さくする必要があった。まぁ、この手の部品に精度を求める方が間違っていると思うのだが・・・

内径の加工にはコルクリーマーを使う。このコルクリーマー、適当な太さのブランクの端切れに砥粒(砥石の粉)を接着したような感じの棒で、本来は名前の通りコルクグリップの内径を加工するのに使う。太さによって3種類くらいあるのだが、使っていると砥粒が剥離してしまい、そのうち削れなくなってしまう。砥石をハンマーでしばいて粉々にして接着してみようかな、なんて思っている。テーパーがついているので、回しながら突っ込んでいくと内径が拡がっていく。外径の加工はサンドペーパーでいい。順番としては、まずコルクリーマーを突っ込んでおき、アーバーをサンドペーパーで包んで回せば外径が加工される。その後、コルクリーマーを回して内径を拡大する、こんな感じが作業しやすいと思う。

コルクリーマー
こういう工具って国内調達すると結構高いので
できるだけブランクと同時に仕入れるようにしている

アーバーの加工が済めば、次はパイプを必要な長さに切断する。カーボンケブラーパイプは長さ19cmあるのだが、グリップは16cm、ファイティンググリップは10cmにしよう。切断する工具としては、今回は棒ヤスリを使ってみた。「2ピース・カムルチィ」でも紹介しているが、切断面にテープを巻いてできるだけ真っ直ぐに切断する様にしているのは、EVAグリップでも変わらない。

ゴシゴシゴシ・・・

「結構硬いなぁ・・・」

ゴシゴシゴシ・・・

「バキッ」

「・・・・・・」

折れた!
ヤスリが折れてしまった・・・

なので、金切りノコにしておいた方がいいだろう。いずれにしてもすぐに切れなくなる。結構な難削材だ。なので、ノコの刃はいいヤツを使おう。

ノコの刃
ハイスピードスチール、俗に言うハイスだから高いぞ

普通の金切りノコの刃は合金工具鋼だと思うが、これは高速度工具鋼、SKH-51だ。ステンレス鋼のような難削材向けで市販されている。こんな良い材質でも結構寿命は短いのだが・・・。ヤスリにしてもノコを使うにしても、始めに切断部には軽く溝をつけておこう。何もしないでそのまま切ってしまうと、切り落としたときに外側の繊維が剥離してしまう。これはブランク切断の時も一緒だと思う。

何で切るにしても手で切ったのでは切断面はガタガタになると思う。なので、サンドペーパーで修正しておこう。薄い砥石を使った「精密切断機」なんてのを使えば無加工でOKだろう。

切断面 修正
今回は工具が変わっているので余計にガタガタだった

パイプの次はパイプ前後にかぶせるEVAの切断。これは簡単だ。「2ピース・カムルチィ」で紹介済みだね。EVAをかぶせるのはパイプ端面の割れ防止とアクセントにするため。グリップの前側のみ、ちょっとテーパーをつけた加工済みEVAを使った。加工済みEVAはコルクリーマーで内径を拡げる必要があった。それ以外は内径15mmの端切れEVAを使ったので切断だけで済んだ。何に使うかわからないので、端切れEVAも捨てずに取っておくといいだろう。「ゴミばっかりためて」と怒りの声が聞こえてくるかも知れないが・・・

グリップ部品の加工が全部済めばあとは接着するだけでいい。この時の注意点は順番だろうか。先にカーボンアーバーと後ろ側のEVAを先に接着しておき、硬化後にパイプと前側のEVAを接着するのが一番確実だと思う。ただ、それだとグリップのアーバー、グリップパイプ、ファイティンググリップのアーバー、ファイティンググリップパイプと、都合4回の接着工程が必要になる。今回はそこまで綿密にする気はなかったので、手を抜いて2回工程で済ませた。1回の工程でグリップ全部を接着してしまうのだ。この場合だと前側のアーバーを接着する場合に注意が必要になる。ブランクとアーバーの接着がやりにくくなるのだ。

接着剤
パイプが邪魔で接着剤が塗布しにくいのだ
なので、奥まで突っ込んであげよう

あと、もちろんのことながら後ろ側のEVAはアーバーより先にブランクに通してしまわないと接着できない。接着剤は今回もコニシボンドの90分硬化型を使った。フレックスコートの通称「G4」という、ビルダー御用達の接着剤も入手しているのだが、いきなり使うと怖そうなので、ちょっと保留している。やはり、慣れというのも重要だと思うぞ。そのあたりは、相互リンクさせていただいている魚花さんの「Fish to Flower」を、これまた参考にさせていただいたことも付け加えておく。

G4
G4がG4なのは主剤2oz、硬化剤2ozの合わせて4ozだからG4
なので、128ozのG128なんて強烈なのも存在するのだ!

で、接着剤が硬化すればグリップ編は完了だ。とりあえずフライリールを組んでみた。

リール込みで
相変わらず撮影技量に問題あり!PhotoShopで強引に誤魔化そうね

ファイティンググリップの位置は、もちろんベイト仕様のフロントグリップ位置でもある(笑)

どうだろうか?コルクグリップやEVAグリップにはない、迫力みたいなものが伝わってくると思う。自己満足だが凄く気に入っている。ただ、パイプが滑りやすくて投げにくそうなことが予想されるだろう。ピュアなスピリットを象徴する「格好だけの虚飾を廃した」なんて言葉が耳に痛そうだ。だが、

「ええねん、虚飾でも何でも・・・」

・・・・・・

さて、この時点での重量なのだが、実測で188gもあった。予想よりもはるかに重いなぁ、と考えてみたのだが「パイプが意外と重い」との結論に達している。

EVA コルク カーボンケブラー
EVA材が長さ23cmで19g、コルクは長さ36cmで40gなのに対し、カーボンケブラーパイプは19cmで30gもある

内径、外径、長さと重さから比重計算してみたらこんな具合だ。

 
EVA
コルク
カーボンケブラーパイプ
比重
0.17
0.21
1.3
炭素繊維の比重1.7やケブラーの1.4とは計算が合わなさそうだが、樹脂で固めているのでこんなものだろうか?
EVAやコルクは多孔質なので若干の変化があると思う

このままで行くと結構な重さになってしまいそう。ただ、「Folgore」の完成重量は253gなので、それよりは軽くできると思いたい。とても片手で振り切れるとは思えないから・・・

お次はラッピング編その1だと思うぞ。それじゃあ、Part2をアップするまでご機嫌さん!(2006/10/14更新)

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