「ぐすんっ・・・」

「・・・」

「ぐすんっ・・・」

「あのな、そんなに泣かんでも」

「でもっ・・・、ぐすんっ・・・」

「いや、泣きたいのはウチもそうやねんぞ」

「だって、Gamくん、東京に転勤なんでしょっ・・・」

「ああ・・・」

「ミキ、どうすればいいのっ、ってそればっかり考えてるんだよっ・・・」

「うーん・・・、東京永住やったら間違いなく一緒に行こう、って言うけど、今回はそんなんと違うからなぁ・・・」

「確かっ、1年限定だったよねっ・・・」

「うん、今のところはな」

「すっごく中途半端だよっ・・・」

「事情は色々あるねんけど、ここで言うてもしゃーないからなぁ・・・」

「・・・」

「せやから今のウチの気持ちを言うと・・・、こんなんが許されるのか知らんけど、・・・1年だけ待っててほしい、1年経ったらまた帰ってくるから」

「・・・」

「あかんか?」

「・・・」

「・・・そしたらミキのホンマの気持ち、言ってくれる?」

「それはねっ、ミキ、Gamくんとずっと一緒に・・・」

「現状でそれ、できそうか?」

「Gamくんがそう言ってくれればっ・・・」

「いや、そうじゃなくって、ミキが東京住むのって・・・」

「それ、わかんないけど・・・、Gamくんと一緒だったらどうにかなると思う・・・」

「うーん・・・、だからそれ、無理なんやなぁ・・・」

「どうしてなのっ?」

「仮にやで、一緒に東京行くとするやんか、1年ですぐ名古屋戻りするねんぞ、ミキ、おまえ子供ちゃうねんから仕事どうするのん?言うとくけど今のご時世やねんから東京でも簡単に仕事見つからんと思うし、おまえの会社って名古屋ローカルやんか」

「・・・」

「せやからウチは中途半端なカタチで東京に来てもらうよりも名古屋で待っててほしい、これはウチの一生のお願い、その場の感情で流されるんじゃなくって先のことまでをトータルで考えてどうするのがベストなんか、これがウチの想いやねんわ」

「・・・」

「その代わり、1年経って名古屋に戻って来れたら・・・」

「戻って来れたらっ?・・・」

「先のことはどうなるかわからんけど、1年待っててくれたら望み通りなんでもする、ウチのすべてをミキに賭けるわ」

「・・・Gamくん、絶対だよっ」

「ああ、せやから今回は単身赴任って思ってほしい、月一で帰ることにするから・・・」

「・・・わかったよっ、約束だからねっ」

「ミキ、ごめんな、ワガママばっかり言うて・・・」

「うんっ、すっごくワガママなんだからっ」

「これ以上攻めんといてくれ・・・、で、機嫌直った?」

「ちょっと納得いかないところもあるけどっ・・・、それでねっ、今回の転勤って急なお話だよねっ、突然って言うか・・・」

「うーん・・・」

「あっ、そうそう、・・・住む場所ってもう決めたのっ?」

「ああ、『しかばね』やな、これはウチの意志じゃなくって会社の指定やねん」

「ぷぷっ、そんな場所ないに決まってるでしょ、・・・って言うか、ミキも土地勘ないからわかんないんだよね〜っ」

「会社の寮なんかないけど、『しかばね』って東京都区内やねんぞ」

「ミキのイメージだと、通勤がすっごく大変、って思うんだっ」

「満員電車のことか?」

「そうそうっ」

「それ考えるとなんか、気ィ狂いそうやなぁ・・・」

「Gamくん、電車の中でおっきな声出しちゃダメだよっ」

「ははは、『押すな!アホんだらー!!』とかな」

「それっ、なんかGamくんってホントに叫んでそうだもんっ」

「都会は田舎モンには厳しいねんって」

「って言うか、Gamくんって元々大阪の人じゃんっ、心配しなくても都会の人だと思うよっ」

「いや、日本でホンマの都会って東京近辺だけやと思う、大阪とは比べモンにならんからなぁ・・・」

「そうなのっ?」

「出張で何回か行ったことある、ってのは前にも言うた通りやけど、ウチがそう思うんやから間違いない、大阪とは規模が違いすぎるぞ」

「ミキは東京って修学旅行でしか行ったことがないんだよねっ」

「ディズニーランドも?」

「ううんっ、ディズニーランドはその時に行ったよっ、でもっ、今度はGamくんと一緒に行こうよねっ♪」

「・・・」

「あ〜っ、どうしてそこで無言なのよ〜っ」

「ウチ、『遊園地酔い』するやんけ・・・」

「大丈夫だよっ、そんな乗り物ばかりじゃないからっ」

「ホンマかいな・・・」

「だから〜っ、大丈夫だってば〜っ」

「ははは、そうやな、ほんならそれは引っ越しが落ち着いてから行こうか?」

「うんっ、そうだねっ、・・・それでねっ、Gamくんって荷物がすっごく多いから、引っ越しって大変だよねっ」

「荷物全部は持って行けんなぁ・・・、部屋が狭くなるのは確定やから」

「東京で今の部屋だと相当高くなる、みたいなっ・・・」

「家賃なぁ・・・、3DKは確実に規定額オーバー、2DKになりそうやから、荷物処分せんといかんけど、それでもどうかなぁ・・・」

「バイクとか・・・」

「原チャは廃棄せんとしゃーないし、『ぺけよん』と『DR-Z』も名古屋に置いて行くわ、置く場所ないし駐車場高いからなぁ・・・」

「でもっ、廃棄はわかるけど、クルマとおっきいバイクって・・・」

「会社の人に1年預かってもらう、売り飛ばすのもアリやけど、あんまり乗ってないからもったいないと思った」

「それっ、普段はいいとして、お休みの日ってアシがないし、釣りにも行けないじゃんっ」

「カムルチィに関して言うたら東京方面は確実に場所知らんからな、その辺は海部郡と事情違うもん、少なくとも『部屋の横の溝』なんかあり得んと思う・・・」

「釣り、しないのっ?・・・」

「カムルチィについては残念ながら1年間休業と違うか?、『しかばね』近辺でチャリで行ける範囲、って言うと・・・」

「・・・」

「まぁ、ウチの趣味が釣りだけじゃない、ってのはミキは知ってるよね、せやからもっと視野を広げる機会、って考えることにするよ」

「そうなんだっ」

「まずはチャリ買ってアシを確保せんといかんからな」

「あれっ?、Gamくんって折りたたみの自転車持ってるじゃんっ」

「あれ、16インチタイヤやから近所しか動かれへんわ、せやから大きいタイヤのチャリを買おうと思ってる」

「マウンテンバイクみたいなのっ?それとも電気自転車かなっ??」

「いや、フツーのチャリでいいわ」

「じゃぁ、ママチャリってのだねっ」

「もちろんウチのことやからフルチューンとかやってみたり・・・」

「はははっ、やっぱ改造しちゃうんだっ、・・・って自転車って改造するところってあるのっ?」

「さぁ・・・、まぁ、なんしかそれは先のことやからな、そしたら今月号の『月刊?ダムン??』はこんな感じで終わらせて、次からは転勤に伴ってタイトル変更するわ」

「それってどんなのっ?」

「次はなぁ・・・」

「・・・」

「ズバリ、『東京ダムン!』やぞ!!」

「・・・」

「なんで無言やねん?」

「面白くないもんっ」

「ちゅーか、やっぱり会話形式やからな」

「じゃぁ・・・」

「やっぱりおまえはアシスタント嬢!」

「え〜っ!」

「ウチが月一で戻るやんけ、それでな、おまえも月一で東京に遊びに来るねん、そしたら2週間に1回会えることになるやんけ、そん時に『東京ダムン!』やるねん」

「・・・」

「不服か?」

「会えるのはいいことだけど・・・」

「そんなん、おまえの電車賃くらい出すやんけ」

「大丈夫なのっ?」

「ちゅーか、いつもベッタリなんもいいかも知れん、ミキはそうかも知れんけど、こーゆー機会も必要と違うかなぁ・・・」

「・・・」

「こーゆー状況やからこそ本気度が試されると思う、人間って楽な方に流れて行ってしまいがちやけど、強い意志があれば多少の障害はクリアできるやん」

「今度は遠距離恋愛だもんねっ」

「まぁ、人の心は移ろい易いから、ミキがなぁ・・・」

「あ〜っ、何言ってんのよ〜っ、そんなコトするワケないじゃんっ、心配なのはGamくんの方だよっ・・・」

「ははは、それはあり得ん、ウチの強靱な意志力は知ってるやろ?なんせ徹底的に意地と誇りで生きてるからな」

「うんっ、それはそうだよねっ、でも、ちょっと・・・」

「まだ言うてる、ウチを信用しろって・・・、そしたら次回からは『月刊?ダムン??』改め『東京ダムン!』ってことで」

「Gamくん、東京に行っても頑張ってねっ♪」

「ああ、ミキ頑張れよな」

「うんっ♪」

(2009/11/18発行)

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