「Gamくん、準備はいいっ?」

「めっちゃ眠たいぞ・・・、せやけど朝からなんの準備やねん?」

「あ〜っ、前から言ってるでしょっ、Gamくんの部屋、お掃除するんだから〜っ」

「・・・掃除、やらんといかんか?」

「当たり前じゃないのっ、もうお正月なんだよっ、大掃除くらいしないとダメだよ〜っ」

「いや、どうせ掃除したってまた散らかすやん、一緒やと思うんやけどなぁ・・・」

「でもねっ、Gamくんって、お正月には大阪に帰るんでしょっ?」

「うん、そのつもりやけど」

「お掃除する時間も今日しかないじゃんっ」

「今日は12月23日、どんな日なんか、わかるやろ?」

「うんっ、天皇誕生日だよねっ」

「今日は赤飯炊いてお祝いする日やぞ、めんどくさい仕事する日と違う、ウチは陛下のご容態がめっちゃ気になって仕方がないのに・・・」

「Gamくん、それってお掃除したくないだけじゃないのっ?」

「なに言うてんねん、おまえ、非国民丸出しやないか・・・」

「って言うか、Gamくんの部屋、炊飯器ってないでしょっ、お赤飯なんて炊けないじゃんっ」

「皇紀2668年は電子レンジでチン!でもええねん、ちゅーか、パックの赤飯買いに行かんと・・・、ミキ、今からスーパーに買いに行こ」

「お掃除が終わってからだよっ」

「・・・」

「Gamくんっ!」

「はいはい、わかりましたよ、掃除したらいいんでしょ・・・」

「あ〜っ、いつも『はい、って言うのは1回でええ!』って言ってるの、Gamくんだよっ」

「・・・」

「それじゃぁ、ミキとGamくんで手分けしてお掃除するんだけど、どんな感じでしよっか?」

「うーん・・・、ビルドルームはウチやな、ミキは手ェ出されへんと思う」

「じゃぁ、ミキはダイニングキッチンだねっ」

「あとは和室と洋間と裏庭、玄関、風呂にトイレに・・・、ミキ、やっぱりめんどくさいわ」

「ダメだよ〜っ」

「今年はクルマがないからまだええけどなぁ・・・」

「でねっ、さっき言ってたのでGamくんじゃないとダメそうな所って?」

「裏庭の草刈り、これはエンジンの草刈機使うからウチの仕事やわ、あとはどうかなぁ・・・」

「洋間って、釣り具とかパソコンとかいろんなのがあるでしょっ、これもミキには手が出ないと思うんだけどっ」

「そしたら掃除やめよう」

「Gamくん、まだ言ってるのっ」

「ちゅーか、なんでおまえがウチの部屋掃除する必要があるねん」

「だって、年末なんだから、大掃除くらいしないとダメじゃんっ」

「それ、答えになってないぞ」

「どうしてっ?」

「掃除くらいウチ一人でやるやんけ、なんでミキの手ェ煩わせる必要がある?」

「あ〜っ、そんな言い方ヒドいよ〜っ、Gamくん一人じゃぁ大変だと思ったから、ミキ、お手伝いしようと思ったんだよっ・・・」

「悪いけど、ウチは他人に手ェ煩わせるような神経はないぞ、だいたいやな、10年くらい前までは『そんなんされるくらいやったら死んだ方がマシ』って思ってたから」

「・・・でもっ、Gamくんって、ミキが困ってたら、手伝ってくれたりするよねっ?」

「ああ、困ってる人間助けるのは当たり前、それに他の誰でもない、おまえ、かわいいミキちゃんやんけ」

「じゃぁ、Gamくんが困ってたら、ミキが手伝うのって間違ってないじゃんっ」

「せやから繰り返しになるけど、ウチは他人に手ェ煩わせること自体を恥、って思ってるんやから話し違うんや」

「なんか、Gamくんの言ってるコトってメチャクチャだよっ・・・」

「得意のダブルスタンダード、わかりやすく言うたら、他人の手助けはするけど逆はイヤやねんって・・・」

「ねぇ、Gamくん、そんなコト言わないでよっ、ミキ・・・」

「・・・」

「ぐすんっ・・・」

「やべっ・・・」

「・・・」

「あのな、泣かんでいいから・・・」

「・・・」

「ミキ、手間かけさせて悪いけど、掃除、手伝ってくれるか?」

「・・・うんっ」

「・・・そしたら風呂とトイレはウチがやるわ」

「じゃぁ、和室はミキがやるよっ」

「いや、あそこは掃除機かけるだけでいいからウチがやる」

「それじゃぁ、ミキがお掃除する所、ないよっ・・・」

「玄関でいい、あとは出たゴミをまとめてくれたら・・・」

「・・・うんっ、わかったよっ」

「ちなみに、・・・こないだ和室を片付けてたらミキの忘れ物があった」

「えっ、ミキ、何か忘れてたっけ?」

「パンツ、忘れてたぞ、もちろんズボンじゃなくって下着な」

「何言ってるのっ、そんなのあるワケないでしょっ・・・」

「ちゅーか、女モンのパンツやんけ」

「ミキ、そんなコトしないってば〜っ!」

「いや、パンツ履かんと帰ったんかと思って、ちょっとドキドキした」

パチンっ!

「ミキ、暴力反対・・・」

「Gamくんが変なコトばっかり言うからでしょっ!」

「そんなん冗談に決まってるのに・・・」

「もういいよっ・・・、じゃぁ、和室はミキがお掃除するよっ」

「まさか、心当たりがある、とか?」

「ありませんっ!」

「・・・ははは、そしたら始めよか」

「そうだねっ」


・・・・・・

「Gamくん、この、ダイニングに置いてるバイク、どうするのっ?」

「どうするもこうするも、そこに置くしかないわ、レストア途中やから屋外に放置プレイできへんもん・・・」

「ふ〜んっ・・・、このバイクと壁の間ってペットボトルがいっぱいだねっ」

「ああ、壁に向けて投げたらそこに着地するからな」

「ぷぷぷっ、でもっ、そんなコトするから散らかっちゃうんだよっ、ちゃんと片付けようよねっ♪」

「ああ、頼むわ・・・」

・・・

「あ〜っ!Gamくん、ちょっと〜っ、コレって何よ〜っ!!」

「なにってペットボトル・・・、あー!ちょっと待てー!!」

「何よっ、コレっ・・・」

「・・・見ての通り、ただのDVDやないか」

エロDVD
絶対、変だよ〜っ!
いや、ちょっと待ってくれ・・・

「違うよ〜っ!」

「おまえの目は節穴?」

「コレ、エッチなDVDでしょっ!」

「うっ・・・」

「Gamくん、こんなにいっぱい、どうしたのっ?」

「いや、日光川を散策してたら大量に落ちてたから拾ったねん、ウチがこんなんアホみたいなのんを身銭切ってまで買うワケないやないか・・・」

「アホみたい、って言ってるけど、見てるのっ?・・・」

「・・・」

「Gamくんっ!コレ、捨てちゃうからねっ!!」

「ゴミ袋、半透明やから中身わかるし、名前書かんといかんねんぞ・・・」

「何かに包んで見えなくすればいいじゃんっ・・・」

「ウチは無実、全ては『コミンテルンの陰謀』やんけ・・・」

「意味わかんないコト言わないでよっ」

「田母神閣下・・・」

「それって誰っ?」

「前の航空幕僚長・・・」

「全然関係ないじゃんっ」

「まぁええわ、隣の部屋の名前書いて回収業のオヤジのオカズにでもしてくれ、オッさんらも大喜び、いや、近所の学校に投げ込んだ方が教育にいい気がするぞ?」

「そんな変なコト、しないのっ!」

「そしたら、ミキの名前書いて廃棄処分・・・」

「ダメっ!」

「・・・」


・・・・・・

「Gamく〜ん、ビルドルーム、片付いた〜っ?」

「いや、旋盤の周りがグッチャグチャやわー」

「切りくずがいっぱい、なんだね〜っ」

「ああ、めっちゃ手間掛かりそうー」

・・・

「作業が終わったら、ちゃんとお掃除すればいいのにねっ・・・」

キュイーン・・・

「えっ、何よっ、この音っ、掃除機でもなさそうだし・・・」

ゴリゴリゴリー・・・

「Gamくん、ちょっと〜っ、何してるの〜っ」

「こっちはええから、そっち片付けてくれるかー」

「何か音が変だよ〜っ、そっち行くからっ」

「来るなって・・・」

・・・

「Gamくんっ!マジメにやる気、あるのっ!!」

「ちょっと試しで削ってみただけやないか、ステンレスの丸棒・・・」

「お掃除してるのに、どうしてゴミを増やすのっ」

「ちゅーか、『SUS304』みたいなフツーのステンと違うぞ、『析出硬化系』なんかファイナルダムン以外の釣りサイトで登場することってないのに・・・」

「そんなの全然関係ないよ〜っ」

「・・・ごめん、ちゃんとマジメに掃除する」

「・・・」

「ウチがウソつくと思ってる?」

「・・・ううんっ、そうじゃないけど、Gamくんって、ホントによくわかんないところがあるからっ・・・」

「いや、ウチがやるって言うてるねんから、本気やわ・・・」

「じゃぁ、もう、変なコトしちゃダメだよっ、今日中にお掃除するんだからねっ」

「ああ、気合い入れてやるよ・・・」


・・・・・・

「ようやく、お掃除も終わったねっ」

「ああ、これだけ片付いたら上等やわ、ミキ、おおきに」

「でもっ、もうちょっと足らないと思うよっ・・・」

「もうええから気にするなって、住んでる人間がそう言うねんから・・・」

「そうなのかなっ・・・」

「おまえ、意外と掃除好きやねんな?」

「そうっ?でもねっ、Gamくんって全然お片付けしないじゃんっ、だから、そう思うだけだよっ」

「うーん・・・」

「もうちょっと、普段から、お片付けした方がいいと思うよっ」

「ごめん・・・」

「ううんっ、謝らなくったっていいけど、・・・やっぱ、きれいな部屋の方がいいでしょっ?」

「ああ、ちょっと反省してる、どう考えてもヒトに手ェ煩わせるのはあかんからなぁ・・・」

「Gamくん、ミキのコトは気にしなくったっていいんだよっ」

「親しい仲にも礼儀あり、って言うやんけ、ウチは甘えるのは好かんから」

「そんなの、考えなくってもいいのにねっ・・・」

「そしたら買い物行こうか?」

「うんっ」

「いや、ちょっと待ってくれるか、陛下のご動向、チェックするわ、ネット見よ・・・」

・・・・・・

「陛下、お出ましになったみたい、よかったわ」

「皇居、だよねっ」

「大日本帝国では『宮城』って言うてたぞ」

「『きゅうじょう』っ・・・?」

「字の通りで、『宮様の住まわれるお城』って感じかな、元々はお城、『江戸城』やんか」

「それでねっ、天皇誕生日もそうだけど、お正月とかって、Gamくんは行ったコトってあるのっ?」

「それって『一般参賀』のことか?・・・恥ずかしながらウチはないわ、東京やから生活圏から遠いもん、あの近辺に住んでたら都合がつく限り欠かさず行ってると思う」

「でもっ、東京出張って年に何回かはあるよねっ」

「タイミングが一致せんのやなぁ、せやから『一般参賀』はない、その代わりって言うのかな?合間見つけて神社には行くけど・・・」

「神社ってっ?」

「ウチが行きそうな神社って、だいたい予想つかんか?」

「え〜っと・・・、そうそう、『靖国神社』でいいのかなっ?」

「ああ、公式参拝やぞ」

「はははっ、Gamくんって、公式参拝なんだっ?」

「ええねん、ウチが勝手にそう思ってるだけやから」

「ふ〜んっ・・・」

「ミキ、遅くなるとスーパーが閉店するから買い物行くぞ、そうそう、今年はこれで終わりやから皆様方に挨拶しとくわ・・・」

「ぷぷぷっ」

「ちゅーか、去年もコメントしたやないか・・・」

「そうだっけっ?」

「そしたら・・・、天皇皇后両陛下万歳!」

「Gamくん、ちょっと違うよっ」

「ウチはこれで正解やねんけどなぁ・・・、ほんなら、お言葉に甘えてもう一回・・・、みんな、ええ年迎えてくれー!」

「うんっ、それとねっ、来年もよろしくねっ♪」

(2008/12/23発行)

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