「ミキ、今月は予告通りに『刃物についてのエトセトラ?』で行くけどええか?」

「うんっ」

「サカナ釣りで刃物を使う場合って、先々月にも言うたけど釣ったサカナをシメる場合に使うんやな」

「そうだったねっ、それでねっ、その、シメるのってどうやるのっ?」

「ナイフで刺し殺すねん」

「Gamくん、なんか物騒な表現だけどっ・・・」

「いや、この『刺す』ってのが今回は重要やからそう言うてる、で、シメる場合って何通りかあるみたいやけど、ウチの場合は教科書通りで昔の『釣り入門』にも書いてた、そしたらこれを見てくれる?」

カスミアジ
これっ、どこで釣ったんだっけ?
北大東島のオカッパリで釣ったカスミアジやな

「この、赤い線を引いた部分を刺す、ってコトでいいのっ?」

「そう、この赤線部分にナイフを刺して血抜きする、メインは頭の方でしっぽはオマケやねんけど、ここに背骨があるから骨ごとブッ刺すねん、あとはエラをちぎって廃棄するとさらにいいらしい」

「ふ〜んっ」

「そうすることによって、お持ち帰りの場合鮮度が保てるみたいやわ、もちろん血抜きした後は氷で冷やしておくのは言うまでもないぞ」

「でねっ、このサカナって沖縄遠征で釣ったんでしょっ、大東島に行った時ってクーラーボックスだっけ、そんなのも持って行ったんだっ?」

「いや、ウチは荷物は最小限にしたいヒトやし、そんなでっかいクーラーなんか持ってないもん、これが大物狙い専門のヒトの場合はでっかいクーラーを持って行くみたいやな」

「じゃぁ、Gamくんはどうしてたのっ?」

「ストリンガーにぶら下げて海に放置プレイしてた、ウチはオカッパリ専門やからこれを釣った後も移動せんといかんやんか、でっかいクーラーは邪魔になる、ってのもあるねん、せやから帰る時に回収するんやな」

「へ〜っ、そうなんだ〜っ」

「大きいサカナの場合はこんな感じでナイフで刺すねんけど、手のひらクラスのメッキみたいな小さいサカナになると別のやり方があるわ」

メッキ
コレは今年の石垣島で釣ったんだねっ
今年の本土メッキが気になる・・・

「え〜っとっ、コレも赤い線だから、この部分を刺しちゃうのっ?」

「いや、違うねん、小さいサカナの場合はこの赤線部分を手でちぎる、それから頭を折り曲げて背骨を折る、いわゆる『手ジメ』やな」

「ナイフは使わないんだっ」

「メッキで使ってたこともあったけど、メッキの場合は炸裂したら刺し殺してるヒマがない、『手ジメ』した方が手っ取り早いし、絶好調の場合は『手ジメ』すらめんどくさくなってやらんこともあるわ」

「じゃぁ、シメない場合って鮮度が落ちちゃってダメだったとか、そんなのはどうだったのっ?」

「ははは、ウチは味にはうるさくないヒトやんか、せやからあんまりわからんなぁ、まぁ、『神戸メッキ』よりも『尾鷲メッキ』とか『新宮メッキ』のほうがおいしかった、ってのがウチのおかんの評価やわ」

「ぷぷぷっ、なんか、それって、すっごく当たり前だと思うよっ」

「ああ、せやからウチの場合はそれすらわからんのやな、でもな、釣って帰ったサカナを喜んで食べてもらったらめっちゃうれしいやん、おかんも近所におすそ分けしてたけど、『尾鷲メッキ』はめっちゃ評判よかった、みたいなコト言うてたわ」

「それじゃぁねっ、Gamくんが実際にサカナをシメる時に使ってたナイフって、どんなのかなっ?」

「まず、ナイフの種類から説明するけど、大まかに分類すると2種類、刃が折りたためる『フォールディングナイフ』ってのと、包丁みたいに刃が折りたためない『シースナイフ』があるねん、で、『フォールディングナイフ』は刃が折りたためるから携帯性に優れてるけど、可動部やら折りたたんだ刃を収納するスペースがあって、サカナをシメたりするとそういう部分に血とかウロコみたいなのが入ったりする、コレを放置プレイすると動きが悪くなったりめっちゃ臭くなるんやな」

「じゃぁ、Gamくんは、その、『フォールディングナイフ』は使わない、ってコトだねっ」

「そう、メンテナンスが余計に必要になるからウチみたいな放置プレイヤーには向いてないねん、で、『シースナイフ』は包丁を連想してもらったらいいけど、可動部にゴミとかが入って動きが悪くなる、ってのがないからメンテも楽やし耐久性もあるわ」

「ふ〜んっ」

「そしたらウチの愛用品を見てもらおう・・・」

マーク1
コレは、なんてナイフなのっ?
「ガーバー」ってメーカーの「マーク1」やわ

「この、黒いカバーみたいなのを外すと刃が出てくるんだねっ」

「そう、『シースナイフ』の『シース』は『鞘』って意味でいいよ、そしたらミキ、外してくれるか?」

「えっ、ちょっと・・・」

「怖いんか?」

「・・・うんっ」

「包丁やったらええみたいやけど?」

「・・・」

「そしたらウチが外すとするか・・・」

パチッ

スポッ・・・

マーク1その2
ちょっと〜っ、危ないよ〜っ・・・
そう?

「あ〜っ!Gamくん、コレって、もしかしてっ・・・」

「なんや?」

「『ダガーナイフ』じゃないのっ・・・」

「ははは、ミキ、正解やな、かしこいぞ!」

「そんなので褒められても、うれしくないもんっ・・・」

「ちゅーか、『ダガー』の現物なんか見たことないやろ?」

「そんなの、あるワケないじゃんっ」

「あのな、ちょっとウチの話を聞いて冷静に判断してほしいねんけど、最初に『『刺す』ってのが今回は重要やから』って言うたよね」

「うんっ・・・」

「サカナをシメるのは刺すんやから、その刺すことに特化した刃物を使う、この選択って間違えてるか?少なくともウチは『ダガー』がベストチョイスやと思って今まで使ってきたけど」

「・・・」

「世間的に今の時点で『ダガー』を見て危ないとか騒ぐんは『アキバの事件』があったからで、バカタレが対人目的で使わんかったら『ダガー』なんか世間で知れ渡ってない、ナイフファンだけの世界やんか」

「・・・」

「ミキ、あんまり納得してない顔やけど?」

「だって・・・」

「いくらなんでも『目的の行為で使って間違えてるか?』って言うても対人目的で運用するのはさすがに倫理的に問題があるのは言うまでもないし、ウチもそこまでアタマ悪くないぞ」

「・・・」

「まぁいいわ、ウチも『アキバの事件』以降は持ち出してないし」

「捕まっちゃう、ってコトなのっ?」

「いや、まだ『銃刀法』は改正されてないけど、さすがにこの期に及んで『ダガー』をおおっぴらに釣り場でひけらかすワケにはいかんやんか」

「Gamくんも、それは考えてるんだっ」

「うん、せやから今年の沖縄遠征にも持って行ってないねん、こんなんポリスに見つかったら任意同行求められるのと違うかな?空港で荷物を調べられるやん、昔はスルーやったけど今は事情が違うもん」

「そうだよねっ、それでねっ、さっき、『刺すことに特化した刃物』って言ってたじゃんっ、『ダガーナイフ』ってフツーのナイフとはそんなに違うのっ?」

「そしたら釣具屋さんで売ってるフツーのナイフと比べてみよか?ちょっと待ってくれよ・・・」

・・・・・・

マーク1とフィッシュナイフ1
もう一つの方は、まだいいかなっ
どっちも刃物やんけ・・・

「この、下の青い握りのがそうなんだねっ」

「そうやね、これはダイワが大昔から売ってる『フィッシュナイフ-T』ってヤツで店にもよるけど釣具屋さんで1000円出したら買えると思う、実のところ『フィッシュナイフ-T』もウチ的にはちょっとポイントがあるねんけど、これは後でコメントする、で、この2つを見比べたらどんな感じ?」

「そうだねっ・・・、まず、『ダガーナイフ』は刃が両方にあるよねっ」

「うん、左右対称形状の『諸刃』ってヤツやけど、切断目的の場合は片側だけでええやん、鉛筆を削る時って、右手でナイフを持つ場合は、まず、右の親指を刃の背中、『峰』の部分に添える、それから左の親指も『峰』の部分に添えて削るよね?こんな感じになるけど・・・」

鉛筆削り
ちゃんと写してな
わかってるって・・・

「そんなのしたコトないよっ・・・」

「ははは、そうなんや、せやから『刃物は危ない』とか言うんかなぁ・・・」

「だって、ちっちゃい頃から鉛筆なんて手で削ったコトってないんだもんっ」

「さすが育ちのいいお姫様やね」

「あ〜っ、その言い方、すっごくバカにしてないっ?」

「ちゅーか、前から気になってたんやけど、ミキって名詞の最初に『お』ってつけへんか?」

「それって、どういう意味なのっ?」

「『お薬』やら『お友達』とか『お話し』って言うやん」

「・・・」

「そんな言い方するのって育ちがええからやと思うんやけどなぁ、そうじゃない場合は『お友達』じゃなくって『連れ』って言う女の子もおるやん」

「じゃぁ、それってGamくんの昔の彼女なんでしょっ♪」

「・・・」

「Gamくん、もしかして、フラれちゃったんだっ?」

「・・・」

「ぷぷぷっ、正解なんだ〜っ、Gamくん、顔に出てるよっ♪」

「いや、話し戻そう・・・、刃物で削るような細かい作業をする場合って、さっき言うたみたいに『峰』の部分に親指を添えてその親指でコントロールして切るねんけど、『ダガー』は『諸刃』やから左の親指はそんなんできへんやん」

「Gamくん、『ダガーナイフ』って刃の途中からギザギザになってるから右の親指も添えれないと思うんだけど・・・」

「そうそう、これは『セレーション』って言うねんけど、『ダガー』でも『セレーション』の有る無しがあって、ない方が多いと思う」

「『せれ〜しょん』?・・・」

「『ダイバーナイフ』って海に潜る人らのためのナイフがあるねんけど、水分を含んだロープを切断する場合はフツーの刃で切るよりも『セレーション』でノコギリみたいに切った方が切れるらしい」

「・・・」

「あと、対人目的で言うとフツーの刃でスパっと切った傷より『セレーション』で切った傷の方が治癒が遅い、ダメージがひどくなるらしいわ」

「切り口がキレイじゃないから、ってコトでいいのっ?」

「たぶんそんな感じやわ」

「じゃぁ、やっぱ、すっごく危ないんだね・・・」

「うーん・・・、『セレーション』って貫通能力を考慮すると邪魔な存在、切れ味が悪いから通常は必要ないねんけど、サカナ目的やと『ウロコ落とし』で使えるぞ、ダイワのナイフにもギザギザの部分ってあるやん、これも『ウロコ落とし』やねんで」

「ふ〜んっ」

「『セレーション』にはもう一つ意味があるねんけどこれは後で説明する、で、左右対称形状の『諸刃』なのはもちろん要求性能が刺した場合の貫通能力やから、これは片側だけにしか刃がない刃物に比べるとどっちが優位性があるのか想像できると思うよ」

「う〜んっ・・・、そんな感じかなっ」

「そしたら次、行ってくれるか?」

「え〜っとねっ・・・、『ダガーナイフ』には『鍔』って言ったらいいのかなっ?そんな部分があるよねっ?」

「これは『ヒルト』って言うねんけど、『ダガー』は形状的には『ダブルヒルト』になる、刺した時の内部抵抗、たとえば骨とかに当たったとする、で、思いっきり力を加えて突き刺すワケやから『ヒルト』がない刃物の場合って手が勢い余って刃の方までずれてしまう、それで手を切ってしまうことが想定されるねん」

「・・・」

「だからこれがあると安心して?刺すことができるぞ」

「じゃぁ、この『ダブルヒルト』って、『ダガーナイフ』だけなのっ?」

「いや、『近代式銃剣』やら『サバイバルナイフ』やら『ランボーナイフ』とかあのへんの『コンバットナイフ』って言ったらいいのかな?戦闘用ナイフは『ダブルヒルト』、切るだけじゃなく刺すことも想定してるから、それ以外やと大型のナイフは『ダブルヒルト』が多いんかな?」

「この『ダブルヒルト』って、さっき言ってたみたいな、右の親指を添えるのには邪魔になるよねっ」

「うん、めっちゃ使いにくいぞ、せやから『ダブルヒルト』のナイフは基本的には細かい作業には向いてない、戦闘用とか、ブッシュに進入した場合に振り回して枝とかを切ったりする大型ナイフくらい、って考えたらいい、逆に言うとフツーの作業するナイフの場合は『シングルヒルト』、刃のついてる側だけに『ヒルト』があるナイフでいいと思う」

「へ〜っ、Gamくんって、なんか、いろんなコトに詳しいんだねっ」

「そうでもないぞ、ただ単にフツーのことに興味がないだけやもん、そしたらこれ以外でわかるか?」

「えっ、まだあるのっ?・・・」

「うん、そうやけど」

「え〜っと・・・」

・・・・・・

「Gamくん、ちょっと、わかんないよっ・・・」

「ほんなら両方の刃の厚みを比べてみてくれ」

「厚みだねっ」

厚み比較
全然違うんだねっ
せやから、用途が全然違うねん

「『ダガーナイフ』の方が厚いんだねっ」

「単純に貫通能力だけで考えると、薄い方が抵抗って少ないやんか」

「そんな感じかなっ?」

「でも、実際には『ダガー』の方が厚みがあるけど、これは強度を確保するためやわ」

「強度?どうしてなのっ?」

「えーっと、実際に刺す場合を想像してほしいねんけど、刺す対象が動かんとじっとしてくれたらいいけどフツーは動くよね?」

「・・・」

「そうした場合って刃には曲げの力が作用するけど、薄い刃の場合は折れることが想定されるわ」

「・・・」

「あと、刺す場合でも完全に真っ直ぐ突き刺せればいいけど、これもそんなに都合よく行かんと斜めに刺したり、さっき言うたみたいな内部抵抗もあるから、それで刃が逃げるとやっぱり曲げの力が作用するやん、で、この手の刃物は刃が折れたら終わりやからそれで厚みで強度を確保してるねん」

「折れたら終わりって・・・」

「遊びじゃなくって戦闘用、折れたら替えがない、命と引き替えってことになると思うし、『アキバの事件』も包丁やったら犠牲者も少なかったと思うわ」

「・・・」

「で、この厚みのある刃でキャベツの千切りとか刺身とかって、どう思う?」

「なんか、すっごく切りにくそうな気がするよねっ」

「そう、切る用途にはめっちゃムダな厚み、フツーは『フィッシュナイフ-T』くらいの厚みでええねん、せやからさっきから言うてる『諸刃』形状と『ダブルヒルト』、それに刃の厚みってのが『刺すことに特化した、それ以外役に立たん刃物』ってことやねんけど、わかってくれた?」

「うんっ・・・、ミキ、さっきも言ったけど、やっぱ、すっごく危ないと思うんだっ」

「そうやなぁ・・・、ウチ的には刃物で刺す、ってシチュエーションそのものがイレギュラーな気がするよ」

「そうなのっ?」

「サカナをシメるとか、ハンティングで獲物にとどめを刺すとか、そんなんくらいしか思い浮かばん・・・」

「それって、結局、刺し殺しちゃう、ってコトじゃんっ・・・」

「そう、正直言うとそれくらいやったら別に『ダガー』じゃなくっても他の刃物でも代用できるからな」

「じゃぁ、Gamくんは、『ダガーナイフ』ってもう使わないんだねっ」

「ほんならその関連で次の話しやけど、『アキバの事件』を受けて『銃刀法』が改正される予定、銃関連と刃物関連があるねんけど、刃物関連で言うと『ダガー』の所持規制が大幅に強化されるぞ」

「確か・・・、『刃渡り』がどう、とかってお話だったんじゃなかったっけ?」

「あれ?知ってるんや??」

「あの事件って、『刃渡り』が短い『ダガーナイフ』だったからお店で売ってた、ってコトだったよねっ」

「ワイドショーでも見まくってるみたいやな?」

「いいじゃん、別にっ・・・」

「ははは、『ダガー』みたいな『諸刃』の刃物は『剣』って分類になるねんけど、『現行銃刀法』では『刃渡り』で15センチ以上の『剣』は『刀剣類』ってことで許可なく所持できない、処罰の対象になる」

「じゃぁ、ちゃんと申請して許可をもらえばOKなんだっ?」

「『刀剣類』で現実的に許可が下りるのは『日本刀』かな?で、『現行銃刀法』には別の条文があって、『刃体の長さ』で6センチを超える刃物で一部の例外を除いては、正当な理由のない携帯はこれも処罰の対象になる」

「今度は持ち歩いたらダメ、ってコトだねっ、でねっ、その『刃渡り』と『刃体の長さ』ってどう違うのっ?」

「『フィッシュナイフ-T』で説明するけど、『刃渡り』は実際に切れる刃の部分の長さ、『刃体の長さ』は刃物の材質そのものの露出してる長さやねん、せやからこんな感じで・・・」

刃渡り&刃体長さ
曲がってる部分も真っ直ぐで計算していいのかなっ?
ええはずやけどなぁ

「でも、これだとあんまり変わんないんだねっ」

「ミキ、まぁ、焦るなって」

「Gamくん、なんか、今日は勿体ぶってるよっ」

「そしたら『改正銃刀法』やけど、『剣』の規制が『刃渡り』で5.5センチ以上って具合に強化される、ってのが報道であったわ、現時点では閣議決定の段階で今年中の施行を目指してるらしい」

「じゃぁ、Gamくんの『ダガーナイフ』ってダメじゃんっ、コレだと5.5センチ以上はあるよねっ」

「いや、ここでさっきの『セレーション』が出てくるねんけど、現時点の法解釈では『セレーション』って『刃渡り』には含まれん、刃じゃないねん」

「え〜っ、それってホントなのっ?」

「うん、マジメな話しやけど、ウチの『ダガー』は『ガーバー』ってメーカーの『マーク1』やねんけど、これより長い『マーク2』って『ダガー』があるわ、で、『マーク2』の場合はそのままやと長さで『刀剣類』に該当するから、ってことで『セレーション』が追加工された状態で売ってる、元々は『マーク1』も『マーク2』も『セレーション』なしやねん、なんで『マーク1』が『セレーション』付きなのかはウチも知らん」

「それじゃぁ、Gamくんの『ダガーナイフ』の『刃渡り』って・・・」

刃渡り&刃体長さ
さっきとは全然違うんだね〜っ
これも「セレーション」のおかげやわ

「短いやろ、どう見ても5センチないもん」

「コレは持ってても大丈夫、ってコトなんだねっ、よかったじゃんっ」

「いや、そこで喜ぶのはまだ早いんやな」

「えっ?、でも、『刃渡り』は短いから問題ないんでしょっ?」

「法解釈ってどうにでもなるぞ、規制したいねんから、ポリスに『セレーションも含めて刃渡りやんけ、逮捕するぞ!』って言われたら処置ないやん」

「・・・」

「まぁ、日本は法治国家やから法解釈は司法当局の仕事、ウチには法解釈の権限ってないし、ポリスは法解釈に従って取り締まるのが仕事やねんけど、法解釈を裁判で争うようなヒマはない、竿作る時間を工面するのも必死やもん」

「・・・」

「せやから現実には『改正銃刀法』が施行されての様子見になると思う、少なくとも個人の勝手な解釈、ってのは通用しないと思った方がいい」

「あのねっ、もしも『改正銃刀法』で取り締まりの対象になったとするじゃないっ、そんな場合ってどうするのっ?」

「ウチの『ダガー』か?」

「うんっ」

「原則的にはポリスに提出やな、一応、施行後6ヶ月って猶予期間があるらしいわ、ただ、『改正銃刀法』に規制されんような形状に改造する、ってのもありやと思う」

「それって?」

「『諸刃』じゃなかったら『刀剣類』と違うねん、せやからグラインダーで削ってしまうとか・・・」

「もったいないけど仕方がない、みたいなっ?」

「うん、せやからナイフファンを中心として規制強化反対の意見があるよ」

「Gamくんはどう思うのっ?やっぱ、反対かなっ」

「消極的賛成、ってコメントしとくわ」

「へ〜っ、賛成ってのも意外な感じだし、なんか、消極的ってのも微妙だねっ」

「自分が使ってる道具が規制されるんやからええ話しとちゃうやんね、それが消極的って意味合い、せやけど今までにコメントした通りで『刺す以外に使えん』、『刺すという行為がイレギュラー』、『代替品が他に存在する』、これを冷静に考えればウチは反対する理由が見あたらん、でも、ナイフファンはそうはいかんみたいやけどな」

「それって、ナイフをいっぱいコレクションしてるから、ってコトなのかなっ?」

「ああ、『ダガー』にもピンキリあるみたいで、メイドインチャイナのめっちゃ安いヤツから、ウチのんみたいに名前の通ったナイフメーカーのヤツとか、欧州の骨董品や美術品みたいなのんまで多種多様やけど、それを一律規制することになるし、やっぱし自分の趣味を規制されるのってどう考えてもイヤやと思う、ウチらで言えば『特定外来生物騒動』みたいなのんやわ」

「うんっ、それはわかるけど、Gamくんのお話しを考えると、やっぱダメなのかな〜って・・・」

「まぁ、中には『ダガーを規制するんやったら包丁も規制しろ!』とか言うのもおったりするけど・・・」

「でもっ、それって、なんか違うよねっ」

「そう、ウチがコメントした通りの3点セットを適用すればいいと思うぞ」

「じゃぁ、『ダガーナイフ』のお話しはこれでいいのかなっ?」

「いや、あと一つだけコメントするわ、『改正銃刀法』やけど、どこの報道記事見ても『刃渡り』で規制するみたいやけど、これってホンマはおかしいねんぞ、ミキ、なんでかわかるか?」

「う〜んっ・・・、ちょっと・・・」

「ヒントあげるわ、『セレーション』やな」

「え〜っと・・・、あっ、Gamくんの『ダガーナイフ』みたいに取り締まれないのがあるかもしれない、ってコトでいいんだねっ」

「その通りやね、本気で規制するんやったら『刃渡り』じゃなくって『刃体の長さ』で規制するべきやと思う、ハッキリ言うてマスコミなんか当てにならんからホンマは『刃体の長さ』かも知れへんし、『改正銃刀法』の条文は見てないからわからんけど、『刃渡り』で規制すると法解釈によっては『セレーション』付きの『マーク1』みたいな『合法ダガー』が存在する可能性があるやん」

「でも、Gamくんがそんなこと言っちゃっていいのっ?」

「ええねんって、ナイフファンや政府関係者とか司法当局やら警察がファイナルダムンを見ることってないし、それに『マーク1』が『合法ダガー』になったら高く売れるかも知れんぞ?」

「ぷぷぷっ、それも変だよ〜っ」

「ミキ、そしたらええもん買ったるわ」

「えっ!そうなんだ〜っ♪」

「・・・現金なやっちゃなぁ、で、結局、規制強化するって言うてるけど『刃渡り』での規制であれば『ダガー』って刃物の特性を理解してない、って言い切っていいぞ」

「刺すコトに特化した、って意味だよねっ」

「そう、切るんじゃなくって刺すねんから、先端の5.5センチ以外の部分は適当でも殺傷能力はたいして変わらん、ちゅーか、横の刃がない、先端しか刃がないねんから完全に刺すことだけに特化した形状、って言えるやん」

「そうだね〜っ、・・・やっぱ、Gamくんって、実際に使ってるからそんなのがわかったりするんだねっ」

「いや、対人目的で使ったことはない、誤解するなよ、まぁ、ウチ的には『ダガーを規制しろ!』ってヒステリックに叫んでたヒトらが『刃渡り』規制で納得するのか聞いてみたい、たぶんやけどそこまで考えてないと思うわ」

「え〜っとねっ、あの事件って、確か、『ダガーナイフを取り締まっただけでは根本的解決にはならない』ってお話しもあったような気がするんだけど・・・」

「『根本的解決』ってほんならどないしたらいいのん?」

「ミキ、わかんないよっ・・・、でも、事件を起こしちゃうのって、色んな状況があるから、って思うんだけど・・・」

「ミキの言うてる意味がわからん」

「だからっ、それは・・・、お仕事がうまくいかない、とか、彼女がいないとか・・・」

「へー、そうなんや?、・・・でもな、そんなん理由にならんわ、ウチもあの年齢の頃は『無職透明、彼女なし』やねんから」

「えっ、そうだったのっ?」

「うん、自慢ちゃうけど完全プータロー、そんなん関係ないし、その頃から『ダガー』は持ってたけどウチは人殺しどころか対人目的で運用なんかせーへんかったぞ」

「・・・」

「ただ、時代の閉塞感、みたいなのは感じることがある、うまいこと行かへん、その、行き場を失った若い子らって、ちょっとかわいそうやけどな」

「うんっ、ホントにどうしたらいいのかな・・・、って思う時ってあったもんっ」

「ミキが?」

「も〜っ、茶化さないでよ〜っ」

「うーん・・・、そしたらこんなんどうやろか?」

「Gamくん、何かいいコト思いついたっ?」

「徴兵制度復活!」

「何言ってるのよ〜っ!そんなの全然よくないじゃんっ・・・」

「なに言うてんねん、ってこっちのセリフやんけ、若い子の憤懣やるかたないエネルギーの噴出を祖国防衛に向けるんや、雇用対策と再教育で一石三鳥くらいになるかな?」

「そんなのならないよっ・・・」

「ははは、軍隊って確かに向き不向きがあるからな、拘束されるのがイヤとか、上下関係が腹立つ、みたいな根っからの自由人には向かん、ちゅーか自由人はそんな物騒な犯罪は犯さんと思うわ」

「そうだねっ、なんか、そういうのって厳しそうだもんねっ」

「そしたら『ダガー』の件はこれくらいにして、次はダイワの『フィッシュナイフ-T』やけど、これはこれでポイントがある、ってのはさっき言うたよね」

「それってっ?」

「これって形状としては折りたたみやん」

「うんっ、『フォールディングナイフ』って言うんだったよねっ」

「折りたたんだ状態から開いてみてくれる?」

「・・・」

「なんや、そんなんもあかんのか?・・・、しゃーない、刃にテープ貼ったるわ、それやったらいいやろ?」

「なんか、ちょっとねっ・・・、え〜っとっ、両手で握る部分を開いて・・・、こんな感じかなっ?」

「それがフツーやな、折りたたみ式は両手で開く必要があるやん、それがめんどくさい、素早く対処できへん、ってことで色々と片手で開くような構造にしてるのもあるわ」

「いざって時にすぐ使いたい、ってコトだねっ」

「うん、ボタン一つで刃が開く『飛び出しナイフ』って便利なのもあるけどあれは長さにかかわらず所持禁止やから、それ以外の手段をナイフメーカーが色々考えてるねん、で、『フィッシュナイフ-T』って本来はそこまで配慮してない、そんな必要がないやん」

「サカナ釣りには関係なさそうだよねっ」

「もちろん素早く開けた方が使い勝手はいいけど、サカナ釣りレベルやとそこまでムリにせーへんでもいいと思うねん、でも『フィッシュナイフ-T』は安物やけどちょっと違うんやわ、ウチが開くからちょっと見ててくれよ・・・」

「あれっ、片手でいいのっ?」

「まぁ・・・」

閉じた状態
もちろんロックは外すんやで
開けないじゃんっ

カシャン、カシャン

開いた状態
ホンマはロック巻き込んでるのはあかんねんぞ
後ろのヤツだよねっ

「ほら、こんな感じ」

「えっ!Gamくん、今って、何したのっ・・・」

「片手で開いたんやけど」

「それはわかるんだけどっ、何したのか全然見えなかったから・・・」

「開き方って今回のんだけじゃなくってあと何通りかあるねんけど、ゆっくりやってみるわ・・・、まず、手首をちょっと下に向けつつ、握りを両方とも握ってるのを片側の握りだけにする、・・・そしたら刃ともう片方の握りは自重で垂れ下がるやん」

第1段階
なんで斜めに撮影するのん?背景おかしいやん
そんなコト言ったって・・・

「次に、手に持ってる握りを180度回転させると、・・・こんな感じで今までブランブランしてた刃がまともな方向に向くやんね」

第2段階
さっきより斜めやし、今度は手ぶれ丸出しやん
Gamくんのデジカメ、手ぶれ補正ってないんだもんっ・・・

「この状態で手首のスナップをきかせて後ろ向きに振ってあげると、・・・もう片方の握りと刃も後ろにスイングするわ」

第3段階
おっ、今度はマトモに写してるぞ
それくらいできるんだからっ

「それからおもむろに手首を前に返したら、・・・これで完成、これが『フィッシュナイフ-T』の正しい?開き方やねん」

第4段階
なんか、斜めってるなぁ
これくらい、いいと思うんだけど・・・

「なんか、手を切りそうだよっ・・・」

「ははは、手で持つ方の握りを間違えんかったらそれは大丈夫、ちゃんと向きがあって、ロック金具が付いてる方を持って操作するのが正しい」

「じゃぁ、Gamくんって、昔から『ダガーナイフ』を持ってたくらいだから、こんなコトって前からできたのっ?」

「いや、仕入れて半日遊んでたらできるようになったからそんなに難しくないと思う、で、本題はこれからやねんけど、折りたたみ式でもこの手のナイフは『バタフライナイフ』って種類やねん」

「『バタフライ』って、蝶々のコトだっけ?」

「うん、開け閉めする時の握りがチョウの羽根みたいに見えるから、らしい」

「そうなのかなっ・・・」

「テレビドラマで『バタフライナイフ』を振り回してたのがおって、それを見た若い子が実戦で使っていろいろ問題になったらしい、都道府県指定の『有害玩具』ってことで18歳未満販売禁止アイテムやわ」

「でもっ、釣具屋さんで売ってるんでしょっ?」

「さぁ、レジ打ちの兄ちゃんにそんな認識があるのかな?」

「もしかして、中学生や高校生でも買えちゃうっ・・・」

「おまえ、年齢不詳やから釣具屋さんで買えるか試してみたらええやん」

「そんなのいらないよっ、それに、ミキ、そんな子供じゃないんだもんっ」

「そしたらミキって何歳なん?」

「いいじゃんっ、別に・・・」

「ええなぁ、婦女子は年齢不詳でも社会で通用するねんから」

「・・・」

「ほら、雑誌なんかでも女の人って年齢非公開が目に付くやん、あと、年齢詐称もあるのと違う?」

「年なんて関係ないよっ」

「ただ単に若く見られたいだけ?、それとも自分の積み重ねた年月を恥、って考えてるんか、ウチはその辺の女性心理って理解できんのやなぁ・・・」

「Gamくん、もう、いいってば・・・」

「そうするか・・・、で、この『フィッシュナイフ-T』ってダイワ精工公式ホームページには掲載されてへんのやな、でも、ダイワのロングセラーアイテムでたいていの釣り具量販店で取り扱ってる」

「じゃぁ、それって、やっぱ『有害玩具』に指定されてるからなのかなっ?」

「たぶんそうやと思うぞ、ウチは確か中学生の頃にも買った記憶があるけどその時分は『バタフライ規制』はなかったからな」

「えっ、Gamくんって、中学生でナイフ買ってたのっ?」

「カッターナイフは刃が折れるから嫌いやってん、ウチはクソガキの頃からカッターナイフでさんざん指を切ってたし」

「でもっ、その頃って、何に使ってたのかなっ?」

「プラモデルやら、バルサ削ってルアー作ったりしてた」

「お母さんやお父さんには、手を切ったりしたら何か言われなかったっ?」

「いや、致命傷じゃないから放置プレイやったと思う、おかげで刃物に対する正しい認識ってのも含めて健全に成長したけどな」

「それって?」

「刃物で切ったらめっちゃ痛いぞー!」

「はははっ、それって当たり前じゃんっ」

「せやけど、その当たり前がわからん人間がおるやん」

「そうだよね〜っ」

「せやから子供の頃から刃物に触れる機会を作る、ってのは正解やと思う、・・・そうや、思い出したぞ、ウチが小学生の頃ですらそんな話しがあったねん」

「そんなに昔からのお話しなんだっ?」

「うん、小5の時に学校の先生が『今の子供は刃物で鉛筆も削れない』とか言うてたもん」

「へ〜っ」

「それでな、ウチはその当時でも鉛筆削りができたから頭にきたんやろなぁ、先生の目の前でカッターナイフで鉛筆削ったったんやぞ、『先生、そんなん簡単やで!』とか言うてな、めっちゃ笑えるやろ」

「ぷぷぷっ、なんか、すっごくGamくんらしいお話しだねっ、でもねっ、小学生の頃からGamくんってそんなのだったんだねっ」

「ははは、そんな感じ、ウチがヘンコなんは純正培養、筋金入りやわ、・・・そしたら話し戻すけど、『フィッシュナイフ-T』は樹脂ハンドルの安物やからカシャカシャやり続けたらヒンジの部分がすぐにガタガタになる、って言うかウチのはとっくにガタガタになってるんやな」

ピンのガタ
右側のピンだよねっ?
ちょっと浮いてるやんね

「そうだね〜っ、でもっ、コレって全然使ってないんでしょっ?」

「うん、部屋でカシャカシャやって遊んでただけ、せやから調子乗るとやってる最中に分解して刃が飛んできて刺さるかも知れへんから気ィつけた方がいいと思う」

「やっぱ、値段が値段だから仕方がない、みたいなっ」

「そう、本気でカシャカシャやろうと思ったらもっとまともな『バタフライ』でやるべきやわ、そしたら『ダイワの『フィッシュナイフ-T』は『隠れバタフライナイフ』!』ってことでこの項、終わりにするか・・・」

「あのねっ、Gamくんの『ダガーナイフ』が取り締まられちゃうとするじゃないっ、そうなったら、別のナイフを使うんでしょっ?次はその『フィッシュナイフ-T』を使おうって考えてるのっ?」

「いや、ウチはケータイもそうやけど折りたたみが苦手やし、釣り場でカシャカシャやってもなぁ・・・、せやから『シースナイフ』をどこかで仕入れると思うよ」

「そのっ、『Gamくん流ナイフ選び』みたいなのって?」

「ウチはナイフ選びでそんな能書きってないけどなぁ」

「そうなんだっ」

「サカナをシメるんやったら『ダガー』が最適って思って使ってきたんやから、それ以外の選択になると現状では思い浮かばんなぁ、簡単にオーソドックスな刃物になりそうな気がする・・・」

「Gamくんだったら、ナイフとかも作ってしまいそうだけどねっ」

「うーん・・・、それは電気炉がネックやな、ウチの電気炉は温度が低いから『マルテンサイト系ステンレス』の熱処理ができへんわ」

「そっか〜っ、やっぱ、海で使うからステンレスじゃないと錆びちゃうもんねっ」

「ステンって錆びるぞ」

「そうなのっ?」

「ウチの『ダガー』って放置プレイしてたことがあって、結構錆びてたのを落としてるねん」

錆び
この、黒いのがそうなんだねっ
うん、高く売れんぞ

「へ〜っ、ステンレスでも錆びちゃうんだ〜っ」

「ちゅーか、おまえ、『ベアリング編』でやったやないか、『オーステナイト系は錆びへんけどマルテンサイト系は錆びる』って・・・」

「じゃぁ、ナイフもベアリングも同じで、その、『マル・・・』」

「ペケ!、『マルテンサイト』!!」

「ぷぷぷっ、・・・そうそう、その、『マルテンサイト系ステンレス』なんだっ」

「どっちも鋼材メーカー独自の材質ってあるけど、基本は『SUS440C』、『ダガー』はそうやし、『フィッシュナイフ-T』も『440』ってパッケージに書いてた」

「ダイワのって『440C』じゃないんだっ」

「うーん、『SUS440』はA、B、CとFがあるねんけど、AからCの順番でだんだん硬くなるぞ」

「じゃぁ、Fって?」

「FはCの快削バージョン、硫黄が含まれてるから加工性はいいけどCよりも錆びやすい」

「それじゃぁ、チタンはダメなのっ?チタンって錆びないんでしょっ?」

「がまかつがチタン合金ブレードのナイフを定価2万2千円で売ってるわ」

「でも、2万円もするのって、やっぱ、高そうだねっ」

「カスタムナイフに比べると安いけどな、ただ、耐食性は『マルテンサイト系ステンレス』よりもいいけど、刃物としての基本性能、刃持ちは落ちるような気がする・・・」

「すぐに切れなくなる、みたいなっ」

「ウチは使ったことないから知らんけど、フツーで言うたら『64チタン』よりも『ベリリウム銅』の方が硬い、せやからチタン合金ブレードっていろんな処理をして硬くしてるみたい、この辺はちょっと調べたけど詳細不明やわ」

「じゃぁ、『ベリリウム銅』で作っちゃうのはっ?」

「それこそ刃持ち悪そう、ベリ銅のかたさって、標準時効で『ロックウェルのCスケール』、HRC45くらいまでやねんけど、『SUS440C』は最低でもHRC58は確保できるから、この差は大きい」

「そうなんだっ、確か、『ベリリウム銅』も錆びないって、Gamくんが言ってんだけどねっ・・・」

「うん、あとは錆びるのを無視して『ハイス』の『完成バイト』、要するに『高速度工具鋼』からグラインダーで削り出す、って手もあるわ、手ェ抜いて硬さを求めるなら今のところこれが一番いいと思う」

「『完成バイト』?・・・」

「旋盤の刃物で、ムクの『ハイス』で熱処理済みの板とか棒があるねん、フツーはこれを適当な形状に削って旋盤で使うねんけど、板状の『完成バイト』でナイフに使えそうな大きさ、たとえば厚みが3ミリで高さが20ミリとかで長さが200くらいのがあるから、それをナイフの形状にグラインダーで削って整形して最後に刃をつける、そうすれば熱処理する必要がないやん」

「それは硬いのっ?」

「モノによってはHRC68くらいになるみたいやから、フツーに売ってるステンのナイフよりもはるかに硬くできると思う」

「でも、錆びちゃうんだよねっ」

「やっぱ、そこやねんなぁ・・・、せやから素直に『SUS440C』でいいような気がする、このレベルやと研ぎ直しも楽でいいよ、『ハイス』のHRC68ってめっちゃ研ぎにくそうな気がする・・・」

「じゃぁ、Gamくんって、ナイフも研いだりできるんだっ」

「いや、研ぐのんってそんなたいしとことじゃないし、めっちゃ切れるようには研げん、腕のウブ毛が剃れる程度やけどなぁ・・・」

「Gamくんはそう言うけどっ、なんか、ホントにいろんなコトができちゃうから・・・」

「ははは、『器用貧乏』って呼んでくれー!」

「ぷぷぷっ、でもっ、ちょっともったいない、って気もするんだけどねっ」

「なにがやねん?」

「だって、Gamくんみたいな器用なヒトだったら、なんか、独立してやっていけそうだもんっ」

「ははは、ウチは商売人じゃない、純粋に技術者してるからそれはムリやわ、営業センス全然ないもん」

「って言うか、それがGamくんのいいところなんだけどねっ♪」

「また、意味わからんこと言うてるわ・・・」

「だって、そうじゃんっ、ウソつかないし、変なコトばっかり言ってそうだけど、ホントはすっごくマジメだもんねっ」

「おまえ、それは営業さんに失礼やないか・・・、そしたら終わるぞ、今回はちょっと長くなったからなぁ」

「うんっ、今回って結構難しいお話しだったよねっ」

「ミキ・・・」

「どうしたのっ?」

「・・・ごめんな」

「えっ?どうしてGamくんが謝るのっ・・・」

「刃物みたいなワケのわからん話しにつきあわせたからな・・・、基本的にこの手の話しって全然興味ないと思うし、受け答えするのんめっちゃ考えてたと思うねん」

「それは・・・、でもねっ、そんなの気にしなくていいんだよっ、Gamくんのお話って、いろんなコトで勉強になるんだからっ」

「それは年齢詐称の話しやな?」

「違うってば〜っ!」

「ははは、ウチもミキが受け答えしてくれてるから助かってるねんぞ、おおきに、興味のない話しって一切耳に入らんコもおるからなぁ」

「だからねっ、それってGamくんの昔の彼女なんだよねっ♪」

「・・・」

「ぷぷぷっ、なんか、同じコト言ってるみたいっ」

「・・・もうええわ、なんか疲れた、ウチは寝るから『ダガー』とか片付けといてくれ」

「片付けるって・・・、どこに仕舞えばいいのかわかんないよっ」

「そしたらその辺に放り投げといてくれたらいい、ウチは『ミキちゃんひざまくら』で寝るわ」

「あっ、Gamくん、ちょっと待ってよっ・・・」

・・・・・・

「なんか、ええ感じやなぁ・・・」

「うんっ、そうだね〜っ」

「ひざまくらって足痛くならんか?」

「ううんっ、・・・でもっ、長い時間はちょっとヤダけどねっ」

「そうなんや、・・・なんかなぁ、気持ちええんか知らんけど、ヨダレ垂れてきたぞ」

「あ〜っ!そんなのヤダよ〜っ!!」

「ムニャムニャ・・・」

「Gamくんっ!」

「あん?ミキ、おまえ、なに持ってるねん??・・・、あー!『ダガー』はやめてくれー!めっちゃ危険やー!!」

「じゃぁ、今月の結論は『ダガーナイフはすっごく危ないよっ!』にするからねっ!」

「は、はい、ごめんなさい・・・」

(2008/10/28発行)

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