「ミキ、前振り、なんかある?」
「何っ?」
「『月刊ダムン』の前振り、なんかネタあるか?最近やってないから思い浮かばん」
「やっぱ、何かしないとダメっ?」
「なんかせんといかんやろ、お笑いやねんから」
「それっ、Gamくんだけだって」
「おまえは?」
「ミキ、そんなの関係ないもんっ」
「最近、なんか、噛み合わんなぁ・・・」
「そんなコトないと思うけど・・・」
「まぁいい、めんどくさなったから今月は本題だけにするよ」
「じゃぁ、今月のお題って?」
「最近になって『ケミカルについてのエトセトラ』ってやってるやん」
「やってる、ってまだ始まったばっかじゃんっ」
「・・・今月号は『ケミカルについてのエトセトラ・番外編』で行くわ」
「それっ、本編では紹介できないコト、でいいのかなっ?」
「そう、それでやな、釣り具屋さんで売ってるリールオイルで『IOS-01』ってあるやん」
「うんっ、Gamくんもそれ、買ってたよねっ」
「そうや、ウチってこういう高級なんは普段から縁がないねんけど、今回はエトセトラシリーズをやる、ってこともあって仕入れたんやね」
「あっ、そうそう、いつもはホームセンターで買ってたオイルを使ってる、って」
「まぁそんな感じ、で、最近になって『IOS-00』って新製品のリールオイルが発売されたねんな」
「それって、どんなのっ?」
「その辺はIOS公式Webサイトに詳しいけど、かなり柔らかい目のオイルで、今の流行りで『ベイトフィネス』ってあるやん」
「あ〜っ、それ、知ってるよっ、ベイトタックルでちっちゃいルアーを使うんでしょっ」
「なんか知らんけど、ウチが冬眠中に世間ではそんなことやってるみたいやねんな、で、それ用に向けて売ってるみたい」
「でもっ、それってGamくんってずっと前からやってたじゃんっ」
「なんの話し?」
「だからっ、『ベイトフィネス』のお話しだよっ」
「『ベイトフィネス』って世間的にはバス釣りやん、でも、ウチのはメッキアタックでコンクエスト51やらプレッソベイト使ってたから、そんなんとは違うけどなぁ・・・」
「そうなのかなっ」
「そしたら話し戻すわ、一応、『IOS-00』のスペックやけど、
IOS-00主なスペック (実績値)
特性 無溶剤、無揮発系100%特殊化学合成オイル
外国為替及び外国貿易法の輸出規定対象 該当あり
表面張力mN/m(25℃) 26〜28
25℃動粘度(cSt) 5
流動点 (℃) -70以下
耐加重性 (N)7384 (一般鉱物油は3292)
ファレックス試験機焼き付き試験 v 9.8cm/sec : w 1334N/min
容量 10ml スポイト内蔵式瓶
販売価格 10,000円(税込み)
ミキ、数字の意味わかるか?」
「そんなのわかるワケないじゃんっ、・・・でもっ、一つだけわかるよっ」
「マジ?」
「うんっ、『販売価格 10,000円(税込み)』ってのはわかるよっ」
「・・・」
「あ〜っ、何よっ!」
「なにっておまえ、誰もそんなん値段の話しなんか聞いてへんがな・・・」
「数字の意味、って言ったの、Gamくんだよっ」
「いや、せやから・・・」
「ぷぷっ、ホントはお値段じゃなくって他の数字の意味、って言いたかったんでしょっ」
「わかってるんやったら最初から・・・」
「いいじゃんっ、・・・でもっ、それ以外ってよくわかんないねっ」
「それは本編で説明するから待っててほしい、で、次に見てほしいのがある・・・
Gamくん、色々調べてたんだねっ
ダイフロイルのスペックがウチの記憶に残ってたんや
これは大阪の『ダイキン工業』って空調・化学メーカーが作ってる『ダイフロイル』ってフッ素オイルの物性やねんけど、一番左の『#1』と『IOS-00』のスペックを比較してくれる?」
「え〜っと・・・、流動点は-70以下だから同じでしょっ、『IOS-00』の比重はわかんないけど・・・」
「そしたら粘度、・・・ちゅーか動粘度やわ、単位がセンチストークスやから」
「『IOS-00』が5で、『ダイフロイル』は5〜15ってなってるねっ、あとはっ、・・・表面張力が同じ、26〜28だねっ」
「実際のとこ、これってどう思う?」
「どうって、・・・Gamくんはコレって同じって思ってるのっ?」
「うん、ウチのアタマの中は『IOS-00』イコール『ダイフロイル#1』やねんけどな、せやから『ダイフロイル』も『外国為替及び外国貿易法の規定により、輸出令別表第1に定められた貨物に該当するため、輸出するときは、日本政府の輸出許可申請等必要な手続きをお取りください』ってことになってる」
「でもっ、動粘度ってちょっと違わないっ?」
「それはやなぁ・・・、『ダイフロイル#1』は5から15って幅があるけど、その一番下限の有利な数値を採用したのが『IOS-00』、って言えば・・・」
「う〜んっ・・・」
「まぁ、これだけやと似たような物性のオイル、ってことも言えるから、もうちょっと『ダイキン』の公式資料を提示するわ・・・
ここまで同じやと結論は明白やぞ
ちょっと違うかもっ?
『ダイフロイル』の耐荷重試験やねんけど、これで比べてくれる?」
「・・・確かに数字は同じだけど、でもGamくんっ、コレって『ダイフロイル#3』の試験結果だよねっ、そのあたりって?」
「そもそも『IOS-00イコールダイフロイル#1説』ってウチの思いつきでしかない、でも、公表されたスペックと『ダイフロイル』の物性との相似点、それに釣り具業界によくある欺瞞とハッタリを考慮すれば・・・」
「それもありえる、ってコトっなんだねっ」
「『IOS』が正体を公表してない限り推測レベル、ってのが正式回答、せやから『ケミカルについてのエトセトラ本編』じゃなくって番外編やねんな、フジのガイドみたいにチタンの『神戸製鋼』やらセラミックスの『京セラ』が『フジガイドの材料は自社製』みたいなこと言ってるとか、CRBBみたいに『ミネベア』の刻印が打ってるとか明らかなソースが存在するワケじゃないもん」
「ふ〜んっ」
「いまいち納得してない?」
「ううん、そういうワケじゃないけど、・・・それじゃぁGamくん、このオイルって結構なお値段だけど、『ダイフロイル』ってオイルもそんなにするのかなっ?」
「値段の話しか・・・、これ、言うてもえーんかなぁ・・・」
「何かあるっ?」
「いや、『IOS-00イコールダイフロイル#1』が前提やけど、『ダイフロイル』の実際の値段聞いたら『IOS-00』を言い値で買った人、悶死するのと違うかなぁ・・・」
「そんなお話しなんだっ・・・」
「それでも値段、聞きたいか?」
「・・・」
「そしたら言うわ、ウチも実のところ『ダイフロイル#1』の購入を検討してたねんけど、ネット通販とかで簡単に仕入れることってできんかったんやね、でも、動粘度の違う『ダイフロイル#10』はネット通販してるお店があった」
「・・・」
「そこの売値は1kgを税込み57750円やったぞ」
「えっ、それじゃぁ『IOS-00』は10mlだからっ100で割って・・・、600円しないくらいっ・・・、ちょっと待ってよっ、お値段、すっごく変じゃないっ?」
「それ、間違えてる、比重計算が抜けてるわ、『ダイフロイル』に限らずフッ素オイルは比重が1.8とか1.9やねんね、だから1kgを1.85で割ったら約540mlやねんな」
「じゃぁ、57750を540で割って10掛けると・・・、それでも1069円だよっ」
「まぁ、何でもそうやけど、小分けしたら値段って高くなるのはわかるよね、あと、フッ素オイルってフツーの潤滑油よりもはるかに高い、ってのもあるけど」
「でもっ・・・」
「さすがに極端すぎると思う、で、これは元々の『IOS-01』自体が高いリールオイルやからそうなるねんけど、ウチは釣り具屋さんでスミス扱いのを1500円くらいで買ったけど、これって3mlしか入ってないねんな」
「それだと、1500を3.3で掛けるとおよそ5000円、10mlじゃぁそんなお値段になるよっ」
「結局そういうこと、『ダイフロイル』の原価云々よりも『IOS-01』よりもハイスペック、ってことで値段、上乗せしたのと違う?」
「そうなんだっ、・・・でもっ、このお値段じゃぁ・・・」
「あかんか?」
「ミキ、全然ダメだと思う、だって、高すぎるもんっ」
「・・・まぁ、そうなるわな、ちなみにフッ素オイルって自転車関連・・・、チェーンの潤滑油で使用例があるねんけど、『デュポン』の『クライトックス』が10mlで730円で売ってた」
「あっ、結局、Gamくんが買ったのって、その『クライトックス』ってオイルだったねっ、それにしてもお値段、全然違うじゃんっ」
Gamくん、このクライトックスを小分けして売ったりしないのっ?
ウチはそこまでしてお金が欲しいと思ったことはないけど・・・
「自転車屋さんってなんのしがらみもない状態で『クライトックス』売ってるからそんな値段になるのと違うかな?」
「そういうことなんだ〜っ、・・・それにしてもやっぱGamくん、数字見ただけで『ダイフロイル』ってわかるんだねっ」
「さっきも言うたやん、仕入れるつもりやったって、だから数字がアタマに入ってた状態で『IOS』のWebサイト見たもんやから例によって発動したんやろね」
「あっ、それっていつもの『野生の勘』だよねっ」
「そう、ウチも『IOS-00』と『ダイフロイル』のスペックを比べた時はなぁ、腹抱えて笑いながらビンゴ!って思った、でもな、ウチの『野生の勘』が発動するのってこんなんばっかりやわ」
「それって?」
「機械技術関連以外は一切発動せーへん、ってこと!」
「はははっ」
「あっ、そうや、ソース提示するのん忘れてた」
「Gamくん、それっ、最近更新してないから、そんなのって忘れてたんじゃないっ?」
「ごめんごめん、そしたらまず、これが『ダイフロイル』のPDFで、次が『ダイフロイル#10』を57750円で売ってるお店、それから『クライトックス』を730円で売ってる自転車のパーツショップやな、これを見たらちゃんとした?いや、なんしか根拠があっての話しなんを理解してもらえると思う」
「そうそう、やっぱソースって大事だもんねっ」
「そしたら今月号は終わりにしよ」
「じゃぁ最後、今月の結論って?」
「やっぱこれかな、『IOS-00はダイフロイル???』ってことで悶死するなよ!」
「ぷぷっ」
「あとは『ダイフロイル』1kg仕入れて小分けしてヤフオクで転売?」
「それっ、さっきはそんなコトやんない、って言ってたじゃんっ・・・」
「ははは、言うてみただけ、ウチがそんなんするワケないって」
「うんっ、そうだねっ」
(2011/7/24発行)